第71号 無権代理人が本人を相続したらどうなるの
無権代理人が本人を相続したらどうなるの
民法第113条(無権代理)第1項は、
代理権を有しない者が
他人の代理人とした契約は、
本人がその追認をしなければ、
本人に対してその効力を生じない旨、
第2項は、
追認又はその拒絶は、
相手方に対してしなければ、
その相手方に対抗することができない。
ただし、相手方がその事実を知ったときは
この限りでないない旨規定しています。
民法第117条(無権代理人の責任)第1項は、
他人の代理人として契約した者は、
自己の代理権を証明したとき、又は
本人の追認を得たときを除き、
相手方の選択に従い、
相手方に対して履行又は
損害賠償の責任を負う旨規定しています。
つまり、無権代理人が
相手方と土地の売却などの契約した場合、
相手方は契約の無効(法第115条取消権)を
本人又は無権代理人に対して主張できます。
または、本人に対して
追認をするかどうかを催告できます
(法第114条催告権)。
この場合、相手方は、
無権代理人であることを知らなかったことについて
善意無過失であることが要求されます。
(法第117条第2項)
(だから、契約の相手が
真実の代理人かよく聞けってこと)
なので、無権代理人が、
自分が無権代理人であることを
知らなかったことに
善意無過失を問われているのではないのです。
無権代理人は、無過失責任です。
なお、相手方が取り消した場合は、
遡って無効となるので、
損害賠償責任は生じません。
(どっちかにしてよってこと)
では、無権代理人(放蕩息子)が
本人(親父)を相続した場合は、
どうなるのか。
つまり、本人(親父を相続した息子)として、
相続する前の放蕩息子であった
自分が行った契約が
無権代理であることを理由に
無効を主張できるかという問題です。
これは、無効を主張できません。
無権が有効なものとなってしまうので、
無権代理人でなくなります。
つまり、無権代理行為は、
本人を相続することにより、
当然に有効なものとなります。
(最高裁昭和40年6月18日判決)
なお、本人(親父)が死亡前に
契約の追認を拒否していた場合の
無権代理人(放蕩息子) の相続であれば、
当該被相続人(親父)が行った
追認の拒絶を理由に
当該契約の無効を主張できるのです。
これは、本人の生前に行った追認の拒絶で、
無権代理行為の効果が
本人に帰属しないことが確定するので、
その後に無権代理人が相続しても
無権代理行為が
有効なものとなることはないのです。
(最高裁平成10年7月17日判決)
次に、本人(親父)が
無権代理人(放蕩息子)を相続した場合は、
当該契約は放蕩息子が行った契約であり、
無権代理行為であることを理由に
当該契約が無効であることを
主張できるかという問題です。
この場合は、本人の無権代理行為の
追認を拒絶できますが、
無権代理人としての責任を免れることはできません。
(最高裁昭和48年7月3日判決)
そらそうやねー
さらに、無権代理人(放蕩息子)が
兄(共同相続人で契約の当事者でない)とともに
本人(親父)を相続した場合に、
無権代理人(放蕩息子である弟)は
無効を主張できるかという問題です。
この場合は、共同相続人全員が
共同で追認しない限り、
無権代理行為は有効となりません。
(最高裁平成5年1月21日判決)
兄には、関係ありませんからね。
さらに、当該無権代理人(弟)が死亡し、
兄(契約の当事者でない)が
当該無権代理人(弟) の
相続をした後(無権代理人を相続した)に、
本人(親)を相続した場合、
無効を主張できるかという問題です。
兄が、無権代理人(弟)を相続した後に
本人(親)を相続した場合と、
本人(親)を相続した後に
無権代理人(弟)を相続した場合がありますが、
兄が、先に無権代理人(弟)を相続した後に
本人(親)を相続した場合は、
本人として、無権代理行為の追認を拒絶できません。
つまり、無権代理人が、本人を相続したのと同じで、
本人自ら法律行為をしたのと
同様の効果となります。
(最高裁昭和63年3月1日判決)
逆に、兄が先に本人(親)を相続した後に、
弟の無権代理行為を相続した場合は、
本人(親) が無権代理人を
相続したのと同じ効果となります。
つまり、本人の無権代理行為の
追認を拒絶できるが、
無権代理人としての責任を免れることはできません。
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