TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

78号 納税者に不利益な遡及立法か

納税者に不利益な遡及立法か

 

 

 

(事実の概要)

原告は、平成5年4月から所有する土地を譲渡し

平成16年1月に引き渡しました。

 

平成17年9月に、平成16年分の確定申告をし、

その後、上記の土地譲渡に伴う損失を損益通算を

していなかったので、更正の請求をしました。

 

これに対して、課税庁は、

更正をすべき理由がない旨の通知処分をしました。

 

 

理由は、平成16年3月26日に成立し、

4月1日から改正法として施行された法律で、

 

この改正法は附則において、

 

それまで租税特別措置法第31条第5項第2号により

認められてきた長期譲渡所得にかかる損益通算を、

 

平成16年1月1日に遡って廃止する

というものであったことによります。

 

 

原告は、これは、納税者に不利益な遡及立法であり、

憲法第84条に違反するとして提訴しました。

 

 

(判決:最高裁平成23年9月22日第一小法廷)

「所得税の納税義務は、

暦年の終了時に成立するものであり、

 

•••改正法が施行された

平成16年4月1日の時点においては

同年分の所得税の納税義務は

いまだ成立していないから、

 

本件損益通算廃止に係る

上記改正後の同条の規定を

同年1月1日から同年3月31日までの間に

された長期譲渡に適用しても、

 

所得税の納税義務自体が

事後的に変更されることにならない。

 

 

「•••当該変更の憲法適合性については、

 

当該財産権の性質、

その内容を変更する程度及び

これを変更することによって

 

保護される公益の性質などの

諸条件を総合的に勘案し

 

その変更が、当該財産権に対する

合理的な制約として容認されるべきもの

であるかどうかによって判断すべきものである。」

 

 

「納税者においては、

これによって損益通算による

租税負担の軽減に係る期待に沿った結果を

得ることができなくなるものの、

 

それ以上に一旦成立した

納税義務を加重されるなどの

不利益を受けるものではない。」

 

「これらの諸条件を総合的に勘案すると、

••本件損益通算廃止に係る改正後措置法の規定を

 

平成16年1月1日以後にされた

長期譲渡に適用するものとしたことには、

 

上記のような納税者の

租税法規上の地位に対する

合理的な制約として容認されるべきもの

解するのが相当である。

 

したがって、本件改正附則が、

憲法第84条の趣旨に反するもの

ということはできない」

 

旨判示しました。

 

 

なお、最高裁は、

改正が、長期譲渡所得課税と

損益通算で不均衡が生じることを

解消することが

立法目的であることを示している。

 

また、改正法は、

適用を遅らせた場合の

駆け込み売却を防止する目的である

ことも示している。

 

さらに、実際、

平成16年度税制改正大綱が報道された直後から、

平成15年中の不動産売却が

税理士事務所等から奨励されていた

ことも示している。      

 

 

結局は、本件事案の問題は、

事前に、遡及立法情報を得て十分な対応をした納税者と、

その対応をしなかった納税者との不公平を

いかに評価するかということであった。

 

 

なお、最高裁平成23年9月30日判決の事件では、

 

平成15年中に売買契約があり、

16年2月に引渡した事件であるが、

このケースは、遡及適用から除くべきであると

補足意見で指摘しています。

 

 

遡及立法二元説では、

法規範がすでに行われた過去に属する事態を

事後変更的に侵害する場合の遡及立法を

真性遡及立法と呼び、

憲法上禁止されるものであるが、

 

現在まだ終わっていない事態について

将来的に影響を与え、

 

それによって法的地位が影響を受ける場合の

遡及立法を不真性遡及立法と呼び、

憲法上許容されるものとしています。

(ドイツ連邦憲法裁判所)

 

 

そうすると、相続開始後に税負担を増加させる相続税法改正は真性遡及立法となるのか。

 

 

また、本件においては、1月に譲渡して死亡した場合の準確定申告は真性遡及立法となるのか否か。

どのように考えるか頭の体操です。

お気軽にお電話でご連絡ください
06-6131-5335 06-6131-5335
受付時間:10:00~19:00
Access

地下鉄東梅田駅から徒歩3分という便利なロケーションで税務のご相談を承っております

概要

会社名 TK税務&法務事務所
【一般社団法人租税高度困難事案研究所】
住所 大阪府大阪市北区梅田1丁目1番3-600号
大阪駅前第3ビル6階6-2号
電話番号 06-6131-5335
営業時間 9:00~17:00
定休日 土曜日 日曜日 祝日
最寄り 東梅田駅より徒歩3分

アクセス

主に法人の経営を税務と財務の視点から力強くアシストする幅広いサービスをご提供しております。
地下鉄東梅田駅から徒歩で3分という便利な立地に事務所を構えておりますので、ご相談はお電話やお問い合わせフォームから気軽にお申し込みください。
Contact

お問い合わせ

RELATED

関連記事