第138号 白熱講義マイケル・サンデル第11章
白熱講義マイケル・サンデル第11章
第11回 愛国心と正義のどちらが大切か
今回は、アリストテレスに対するカントの反論
にコミュニタリアンの参加です。
権利が保証される公正な枠組みを整えて、
その枠組みの中で、
人々がそれぞれに思いを描く「善き生」を
追求できるようにすることは大事だが、
ある特定の「善き生」の概念に基づいて、
法律や正義の原理を定めることは、
強制の危険を冒すものであり、
認めることはできないとして、
カントは、アリストテレスの考えは間違っている
と主張しました。
これは、市民がそれぞれに思い描く役割の概念を
自由に追求することが必要であるからです。
そうすると、自由な人間であるとは
どういうことかという問題がでてきました。
アリストテレスでは、
人間は、自分の潜在能力を発揮する能力がある限り
自由であるとしました。つまり、役割分担です。
カントは、自律的に行動する能力という、
自由についてよく知られた厳しい考え方です。
しかし、カントの考えに従えば、
一般の人々に広く認められ称賛される、
道徳的・政治的な責務を説明できなくなって
しまうとの反論があります。
さらに、コミュニタリアンからカントへの反論として、
自己というものは、
ある程度までその人が属するコミュニティや
伝統や歴史によって規定され、
負荷をかけられている存在であり、
単なる個人として善を求め、
美徳を実践することはできないと主張します。
リベラルの観念では、道徳的・政治的な義務は、
二つあり、
一つは、「人として人を尊重する」といった
私たちが人間に対して負う義務であり、
普遍的なものである。
もう一つは、 自発的な責務で、
約束など自分が同意したことによって
発生する特定の誰かに対して負う義務です。
コミュニタリアンからすると、
このようにすべての義務を、
自然の義務か自発的な義務のどちらかにしてしまうと、
構成員としての責務や連帯の義務という
第3のカテゴリーを捉え損なうと
考えているのではないかと反論しています。
例えば、自分の子供と他人の子供が
溺れていたらどちらを助けるか。
逆に年老いた自分の親と
他人の親の面倒をみるとするのは、
自分の親の面倒が優先するとする考え方の方が
道徳的に筋が通っているとは思わないだろうか。
これは契約や同意から生じたものではありません。
また、第二次世界大戦中に
レジスタンスのパイロットが、
ドイツ軍が占領している村を空爆することになった。
その中に自分の生まれた村があったので、
その村の空爆を拒否しました。
これは、フランスの解放のために必要なことであるが、
許されることでしょうか。
さらに、日本政府が、
日本人を優先的に健康や教育や福祉について
より大きな責任を負っているのでしょうか。
ロールズによると、普通の市民には政治的義務はない。
しかし、特定の市民が自ら望んで同意したうえで、
政治的義務を選択し、
引き受ける場合は別であるとしています。
つまり、愛国心はコミュニティから生じる
義務ではありません。
そうすると、コミュニテイの構成員で
あることから生じる義務は、
集合的な利己心ではないのかということです。
コミュニタリアンは、人間には、
自分のアイデンティティを形成する
コミュニティの人々に対する共同的な責任があり、
そこから来る根本的な道徳的義務があると考えます。
しかし、コミュニティで育つ過程で、
互恵性に基づいて、ある種の義務を負う様になるのは
道理にかなっているが、
最初から道徳的な義務を負っているというには、
もっと強い理由が必要ではないか。
でないと、道徳の白紙委任状になってしまう
とする反論もあります。
そうすると、普遍的な道徳的観念や人として
人に対する敬意よりも、
コミュニティへの忠誠心が勝るべきと
考えることはあるのでしょうか。
たとえば、自分の家族が罪を犯し
逃走しているとき、
警察への情報提供を拒否していいのでしょうか。
つまり、私たちは複数のコミュニティに
属している場合、
何を根拠に優先するコミュニティを
選択するのでしょうか。
コミュニタリアンは、特定のコミュニティに存在する
「善き生」という観念から切り離して
正義の原理を見つけることはできないと主張します。
そうすると、そのような考え方によると、
「権利」が常に「善」よりも優先される
ということがないとすれば、
正義とはただ単に、
その時代の、そのコミュニティにおいて、
たまたま是とされた価値観や習わしから
作られたものにすぎないことにならないか
という反論があります。
これに対して、コミュニタリアンのウォルツァーは、
正義は社会的な意味に相関しており、
ある社会が正しいのは、
その社会の実質的な生が、
その社会の構成員の共通の理解に忠実な方法で
営まれている場合であると主張しています。
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