第200号 租税回避行為シリーズ3(馴れ合い和解による更正の請求)
馴れ合い和解による更正の請求
借地権の贈与があったとして更正処分を受けた後、裁判所において借地権の設定はない旨を確認する和解をした。
そして、この和解に基づいた借地権の贈与がなかった旨の更正の請求は、認められるか。
事件の概要
原告法人は、代表者が株主である同族会社である。土地は代表者個人が所有していたところ、当該土地に原告法人が建物を建設し、第三者に賃貸していた。
当局は、原告法人が当該ビルを実質的に使用していることから、代表者から原告法人に対して借地権の贈与があったものとして更正処分を行った。
これに対して、原告法人と代表者は、簡易裁判所において起訴前に、当該ビルの所有権者は代表者個人であるとする馴れ合いの和解をした。(即決和解)
そしてこの和解によって、借地権問題は消滅したとして更正の請求を行ったところ、当局は、更正すべき理由がない旨の処分をしたことから、当該通知処分の取消しを求めて訴えたものである。
第1審被告(税務署)の主張
当該ビルの所有権を代表者であるという和解が成立したことによりその所得金額の計算基礎が和解成立前と異なることを理由としているが、当該ビルの所有権は経済的にも実質的にも建築当初から原告法人であり当該和解は実態を反映した客観的合理性がない。
第1審原告(納税者)の主張
原告法人はビル建設の能力がないため、当該土地を担保に実質的に借り入れているのは、代表者個人である。
ビル建築資金を代表者個人が捻出していることから、当該ビルは実質的に代表者個人のものである。
税法上の無知から原告法人の所有であるとする登記をしたものである。
したがって、和解によって、実質的な所有者である代表者個人の所有に改めるのは合理性がある。
第1審判決
(仙台地裁昭和51年10月18日判決)
国税通則法第23条に規定する「判決と同一の効力を有する和解」とは、即決和解(起訴前和解)も含まれると解されるべきである。
ただし、「和解」とは、その立法趣旨から当事者間に権利関係についての争いがあり、確定申告当時その権利関係の帰属が明確となっていなかった場合に、その後当事者間の互譲の結果、権利関係が明確となり、確定申告当時の権利関係と異なった権利関係が生じたような場合になされた和解を指すと解すべきである。
したがって、専ら当事者間で税金を免れる目的のもとに馴れ合いでなされた和解など、客観的、合理的根拠を欠くものは、国税通則法第23条に規定する「和解」には含まれないものと解すべきである。
なお、原告法人の確定申告書や登記簿、第三者との賃貸契約書等の事実から、当該ビルの所有権は原告法人のものと認めるのが相当である。
また、代表者個人が所有不動産に担保を設定したり、建築資金の一部を出資するのは同族会社であれば当然の成り行きである。
原告法人と代表者個人との間でなされた本件和解は、専ら原告法人に課された多額の法人税を免れるため原告法人らによって故意になされたものであることが認められ、そこには客観的、合理的理由を見出すことはできないから、原稿法人らの主張も理由がないこととなる。
なお、判決では、通謀虚偽表示による無効な和解か、和解は有効に成立しているが、国税通則法第23条に規定する和解ではないとしているのかは不明である。
また、上記の判断は、起訴前和解にかかわらず、証拠や主張をコントロールすることにより判決にさえも生ずることであり、さらに公正証書によるものでも生じることとなる。
したがって、このように、納税者が和解、判決、公正証書等における当事者となり、そこに表示された内容から生じる法律効果を利用して課税要件事実の変動により課税を免れようとすることがあるが、結局は形式をもって課税するのではないから、事実に基づかない書面や当事者の陳述、その表示された場所、機関、日時等に言い渡しがなされたというにすぎず、実質の課税関係に何ら影響を及ぼすものではない。
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