TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

203号 租税回避行為シリーズパラッイーナ映画フィルム事件(最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決)

租税回避行為シリーズ

 

パラッイーナ映画フィルム事件

(最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決)

 

(事件の概要)

これは、耐用年数が2年の映画フィルムに投資し、

早期に減価償却費を計上することによる

租税回避を行った事件です。

 

原告は、不動産業を営んでいましたが、

メリルリンチの勧誘により、

民法上の組合に参加しました。

 

本件組合は、組合員からの資金と

銀行借入によりコロンビア映画社から映画を購入し、

オ ランダの会社に映画の配給権を付与し、

オランダの会社は

再度このコロンビア映画社に

この配給権を譲渡しました。

つまり、実質は金融となっていたのです。

 

原告は、出資の割合に応じて、

この民法上の組合が取得した映画

減価償却費を計上しました。

 

これに対して、原処分庁は、

本件映画の実質的な所有者は民法上の組合ではなく、

オランダの会社であるとして、

原告の減価償却費の損金算入を否認する

課税を行いました。

 

 

第1審では、

契約を否定したのではなく、

契約上、真実の所有権を取得していない。

 

つまり、契約書の文言上、

所有権を取得するという文言が

単に用いられたにすぎないとし ました。

判示は次のとおりです。

 

本件取引は、その実質において

原告が民法上の組合を通じ、

 

コロンビア映画社による

本件映画の興行に対する融資を行ったものであって、

 

民法上の組合ないしその組合員である原告は、

本件取引により本件映画に関する所有権

その他の権利を真実取得したものではなく、

 

本件各契約書上、単に原告ら組合員の

租税負担を回避する目的のもと、

 

民法上の組合が本件所有権を取得するという形式、

文言が用いられたにすぎないものと

解するのが相当である」と述べ、

本件課税処分を是認しました。

 

 

第2審では、

原処分庁は、「私法上の法律構成による否認」

による主張を行ったところ、

原処分庁側が新たに主張する

事実認定・私法上の法律構成による否認論を採用し、

 

真に意図した私法上の法律構成による合意内容に

基づいて課税が行われるべきであるとしました。

 

判示は、

「仮に法文中に明文の規定が

存在しない場合であっても、

租税回避を目的としてされた行為に対しては、

当事者が真に意図した私法上の構成による合意内容

に基づいて課税が行われるべきである」と延べ、

基本的に原処分庁の主張を是認しました。

 

 

最高裁は、

次のように判示しました。

本件組合は、本件売買契約により

本件映画に関する所有権その他の権利を

取得したとしても、

 

本件映画に関する権利のほとんどは、

本件売買契約と同じ日付で締結された

本件配給契約によるオランダの会社に

移転しているのであり、

 

実質的には、本件映画についての使用収益権限及び

処分権限を失っているというべきである。

 

このことに、本件組合は、

本件映画の購入資金の約4分の3を占める

本件借入金の返済について

 

実質的な危険を負担しない地位にあり、

本件組合に出資した組合員は

 

本件映画の配給事業自体がもたらす収益については

出資額に相応する関心を抱いていたとは

うかがわれないことをも併せて考慮すれば、

 

本件映画は、本件組合の事業において

収益を生む源泉であるとみることはできず、

 

本件組合の事業の用に供しているものと

いうことはできないから、

法人税法31条1項にいう

減価償却資産に当たるとは認められない。」

として棄却しました。

 

 

本件最高裁判決の意義は、

第1に、

原処分庁側が主張する

「私法上の法律構成による否認論」

を採用していないこと、

 

第2に、

納税義務者への課税物件の帰属の基準は、

必ずしも所有権を基準とするものではない

ことが明らかになったことです。

 

この事件では結果的に

原処分庁の勝訴となっていますが、

原処分庁の主張である

「私法上の法律構成による否認論」

は採用されませんでした。

 

これは、私法上の法律構成による否認論は、

最後の最後の方法であり、

最高裁もそう易々とは認めてくれないのです。

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