TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

208号 租税回避行為シリーズ11 逆合併

逆合併

事件の概要

原告は、A社とB社が合併してできた法人である。欠損としての法人税確定申告書を提出したところ、被告税務当局は、原告が計上した清算人仮受金を債務免除益であるとして更正した。

A社とB社の合併の経緯は、A社は経営不振で営業と資産•負債を代表者個人の営業へ移したため、A社には帳簿上の欠損金額のみが残った。これを代表者個人のA社に対する債権として処理した。

その後、代表者は債務を個人として返済し、A社に対する債権は、A社の消滅とともに消滅するのものとして請求の意思はなかった。

B社は、A社とは関係のない第三者が自らの個人的経営を法人化する目的で設立された。

そこで、当該第三者は、清算中のA社を利用してB社の節税を行おうと考えた。

B社の代表者がA社の全株式及びA社の代表者が有しているA社に対する債権を買い取り、A社を継続法人として、B社を吸収合併し、A社は、有していた繰越欠損金とB社の営業利益を相殺して確定申告を行ったものである。

 

第1審判決(名古屋地裁昭和52年11月14日判決)

清算人仮受金として計上した債権は、A社の消滅とともにA社の代表者の債権放棄により消滅したものとみるべきであり、その消滅の日は、遅くともA社と全く関係のないB社に変更されたときであるとみることができる。(A社の消滅前であれば、債務免除益の発生で繰越欠損金が消滅することとなる。)

そうすれば、原告(新A社)の第一事業年度分に清算人仮受金を計上したことは不当であり、同事業年度に債務免除益として益金に加算した更正処分に違法はない。

 

検討

本件は、被告が本件合併は逆合併であり、合併法人の繰越欠損金を損金に算入することは租税回避行為であって税法上認容されない旨主張していたが、維持されなかった。

 

最高裁(昭和43年5月2日判決)合併法人は被合併法人の繰越欠損金を当然に承される権利義務に含まれるものではないと判示した。

 

つまり、欠損金額の繰越控除は、それら事業年度の間に経理方法に一貫した同一性が継続維持されることを前提としてはじめて認められるのを妥当とされる性質のものであって、合併法人に被合併法人の経理関係全体がそのまま継続するものとは考えられない合併について、所論の特典である承継は否定せざるを得ないとした。

 

そうすると、繰越欠損法人が黒字会社を合併する逆合併の場合は、控除を認められることとなり、これを当該最高裁の判決から見て否認するには、租税回避行為として否認することとなる。

 

逆合併をする合理的な理由がある場合とは、額面500円の株式を発行する法人が当該株式を50円株式に切り替えるために、欠損法人に吸収合併される場合が典型的である。

 

つまり、そうするほかに道がない場合といえる。

本件の場合、B社は合資会社であったので、合併を機に株式会社に組織変更したが、これは、合資会社が直接に株式会社に組織変更できないことから行ったものであるとして、繰越欠損法人を合併法人とする合理的理由があるとしたものである。

 

ということは、B社の代表者がA社の代表者から買い取ったA社に対する債権が、消滅せずに、合併後にも債権として存在すると認定されれば、債務免除益の計上はなく、繰越欠損金の使用はできたということができるか。

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