第218号 租税判例シリーズ(所得税2)
租税判例シリーズ(所得税2)
利子所得の意義(デット・アサンプション)
(東京高裁平成18年8月17日判決)
事実の概要
銀行業を営むXは、社債を発行している法人との間で、元利金償還債務の履行引受を内容とする契約(デット・アサンプション)を締結した。
デット・アサンプション契約は、支払期限未到来の社債の元利金償還債務を有する法人が、当該元利金の現在価値に相当する金額を銀行に預託する代わりに、銀行が債務を肩代わりする取引である。
これは、社債を発行している法人にとって、実質的に繰上償還したのと同じ経済効果が得られることとなる。
社債発行法人は、一定の金員を預託し、銀行は所定の支払日に所定の金員を支払うこととしていることから、課税庁は、銀行が支払った金員と法人が預託した金員との差額が、所得税法23条1項の「預貯金の利子」に当たるとして、源泉所得税の徴収義務があるとして納税告知処分をした。Xは、これに対して不服として提訴した.
第1審 請求棄却
控訴審 控訴棄却
判旨
所得税法2条1項10号が、銀行に対する預金である旨規定しているものの、銀行法上の定義がないことから、預金の一般的な意義を解釈することとした。
所得税法上の預金とは、広く運用資金を預金者から受け入れ、銀行において当該金銭を費消することを許容され、預金者との約定に従って、同額の金銭を返還することが約されたものと解する。預金の利息とは、このような預金に係る元本の使用の対価の金銭と解することができる。
つまり、法的には金銭消費寄託契約の性質を有しているといえ、Xは、預金者の指定する相手方に対して金員を交付することにより、預金の払戻しを行ったものとみることができる。
したがって、本件デット・アサンプション契約は、支払日を返還期限として、預託金の金員の寄託を受け、預託金に寄託を受けた期間に係る利子に相当する金員を加算した額を社債の元利金償還金として返還するという預金契約と、預託された金員を原資として社債発行法人に代わって、社債の元利金償還金を支払うという委任契約とが複合した契約であって、これらの金員は社債発行法人が銀行Xに消費寄託した預金に対する利子に当たる旨判示した。
なお、消費貸借契約により貸し付けた金銭の利子は、これに含まれないと解されている。
デット・アサンプションは、一方当事者が、他方当事者の負う債務の弁済を引き受け、運用を前提に、債務を一定の利率で現在価値に割り引いた一定額の金銭の預託を受ける取引であるとした。
本判決は、消費寄託契約該当性を検討するに当たって、契約書等から当事者の意思を合理的に解釈するとし、両当事者に預金契約であるとの認識があったことや預託した金員が社債返還金の総額を下回っていることから預託金の運用が予定されていたこと等を認定してこれを肯定した。
さらに、当該契約は、預金契約とXが社債発行法人に代わって金員を支払う内容の委任契約との複合契約だとの性質決定することで、デット・アサンプション取引には、債務者に代わって支払債務の履行をするという委任的性質の債務が含まれているがゆえに消費寄託とは性質決定されないとの論理を退け、多様化する金融取引に対応したものとみる旨学習院大学の長戸准教授が説明している。
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