第241号 グレゴリー判決
(租税回避行為:なにが悪いねん・なんで悪いねん・どこが悪いねん)(「海外重要租税判例」pl04)
(事件の概要)
グレゴリー夫人が、相続財産である非公開会社A社の株式を100%有していました。A社は、上場会社B社の株式を有しており、多額の含み益が生じていました。夫人は、この含み益を実現して収益とすることを考えました。
本来は、A社が、保有しているB社株式を売却し、A社から夫人が配当を受けることである。しかし、それでは、A社で法人税が、配当で所得税が課税されることとなる。
そこで、夫人は、考えた。
第1に、A社は、保有しているB社株式を現物出資でC社を設立する。
第2に、A社は、C社株式を夫人に現物配当する。
第3に、C社を解散する。
C社が淸算され、夫人にB社株式を現物分配する。
第4に、夫人は、B社株式を売却し、譲渡所得を申告する。
これら一連の取引により、法人税は課税されず、配当所得ではなく、税率の低い譲渡所得が課税されることとなった。
課税庁は租税回避行為であるとして課税した。
(夫人の主張)
租税回避目的であったとしても、税務上否認されるものではない。
(IRSの主張)
C社の設立は租税回避目的でのみ設立され、設立後すぐに清算されており、それ以外の目的は存在しない。
(最高裁の判決)
納税者が法の許容する範囲及び方法で自己の租税負担を軽減又は回避するという権利については認めつつも、本件におけるC社の設立は、全体としてみれば事業目的も法人自体の目的もなく、租税回避という真の目的を隠蔽するために行われたものにすぎないので、税制適格組織再編として認めることはできないと判示した上で、「したがって、本件取引を見せかけの取引にすぎないとした控訴審の判断は正当である。」として納税者の請求を排除した。
(説明)
本件判決にいう「見せかけの取引」であるためには、次の2つの要件のいずれかを必要としている。
1 事実関係であるとしているそのものが、見せかけにすぎないものであること。
つまり、法形式上採用されている取引は架空のものであり、実際上生じ得ないものであること。
2 実際に法形式どおりの事実関係が生じている場合であったとしても、その実質が欠如していること。
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