第268号 証券アナリスト2次試験シリーズ 債券ポートフォリオ戦略8
証券アナリスト2次試験シリーズ
債券ポートフォリオ戦略8
(信用リスク分析)
(経済法令出版社の過去問より)
債券の信用リスクモデルは、
大きく構造モデルと誘導モデルに分けられる。
このうち、構造モデルは、
企業のバランスシートをモデル化したものである。
企業のバランスシートは、
資産=負債+資本という関係が成立しており、
資産額が目減りして負債額を下回れば
債務を履行することができなくなる。
構造モデルでは、負債の満期日の企業価値
(=負債時価総額+株式時価総額)が、
負債元本額を下回った状態をデフォルトと定義する。
つまり、A社の社債は、
デフォルトのない割引債と原資産は企業価値であり、
負債が上回ると返済金がゼロとなることから、
プット・オプションの売りが
合成されていると考えられる。
ここで、A社には負債がなく、自己資本100%で、
現在の株価900円、発行済み株式数2億株、
今後3年間は配当しない。
市場において、A社の株式に対する行使価格300円の
コール・オプションの価格650円、
プット・オプション8円である。
今3年満期の割引債額面総額600億円を発行し、
調達した資金で自社株買いを行う場合、
この社債の価格は100円当たりいくらか。
C=P+S-Ke-rtから
e-rt(3年間の割引係数)を求める。
650円=8+900-300×e-rt e-rt=0.86
また、デフォルト・リスクのある割引債の価値
=デフォルト・リスクのない割引債の価値
-プット・オプションの価値(行使価格600億円)
=600億円×3年間の割引係数0.86-8円×2億株
=500億円
したがって、額面100円当たり
=500/600×100円=83.33円となる。
つまり、プット・オプションの
プレミアム相当額の減額である。
なお、デフォルト・リスクのある割引債の価値は、
現在の株価900円-プット・オプションの価値650円に
総株式数2億株を乗じた金額500億円となる。
または、デフォルト・リスクのある割引債の価値は、
企業価値-自社株買い実施後の株式価値となる。
または、企業価値
-企業価値を原資産とする行使価格600円の
コール・オプションの価値である。
国債の利回り変化に対する回帰係数は、
リスク・フリーの上昇によって、
企業価値は高まるから、
デフォルト率が低下し、信用スプレッドが縮小する。
したがって、回帰係数の符号は負である。
つまり、リスクフリーレートの上昇によって、
将来価値が上昇すると考える。
株式ボラタリティの変化に対する回帰係数は、
企業の資産価値の変動と
株式価値の変動が高い相関をもっていると考えると、
株式ボラタリティの上昇によって、
デフォルト・リスクのある社債の価値
(つまり負債の価値)は低下し、
信用スプレッドは拡大する。
したがって、回帰係数の符号は正である。
個別銘柄の信用力に影響を与える要因について、
将来の変化を予測することで、
ある種のアービトラージ戦略が有効であると
考えられる。
それは、信用力が上昇すると予想される社債を買い、
同時に同じ残存期間の国債を売ることである。
信用力が上昇すると予想される債券は、
現在割安状態にあり、
予想どおり信用力が上昇
(価格の上昇、利回りの低下)すれば
信用スプレッドは縮小し、差益を得ることができる。
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