第392号 相続債務控除
相続債務控除
父(被相続人)が、長男(相続人:請求人)から
建物を売買により取得し、
その売買代金につき
準消費貸借契約を締結した後に死亡した場合、
当該借入金債務は、
債務控除の対象となる「確実と認められるもの」
に該当するか
この建物の時価10億円、売買契約金額12億円、
財産評価基本通達89の定めによる
評価額8億円の場合、
債務控除額はいくらか。
建物は、既に長男が住んでいる建物であり、
長男は、今回の相続による遺産分割により
当該建物を相続した。
そして、同時に父の長男に対する
準消費貸借契約による債務も相続した。
そうすると、長男の父に対する当該債権と
相続した当該債務は混同により消滅した。
なお、長男の当該建物に対する取得価額は
相続よる引継ぎのため、12億円となっている。
(原処分庁主張)
請求人(長男)は、
本件代金と本件通達評価額との差額を利用して
相続税の負担軽減を図るために、
本件各契約を行ったものであり、
請求人が返済の催促等を行っていないことから、
本件債務は、
本件相続開始日において請求人が履行することを
予定していなかったものと認められるから、
相続税法14条第1項に規定する
「確実と認められるもの」に該当せず、
債務控除できない。
(請求人主張)
本件各契約は、
将来的に兄弟間に紛争が生じることを心配し、
長男が所有していた本件建物を
相当の対価で購入することを希望して、
各契約を締結したもので
合理的な必要性や目的があった。
また、処分証書が存在し、真正に成立したことから、
本件債務は「確実と認められるもの」に該当し
債務控除できる。
審判所裁決:令和3年6月17日
本件契約で
長男所有の建物を被相続人の所有と
しなければならない事情は見当たらない。
本件共同相続人間において、
いずれ相続の過程で混同により消滅させるべきもの
として成立された債務と認められる
本件代金は、
評価通達評価額に大きな上積みされたもの
であることから、
当該上積みした部分は、
消極的経済価値を示すものとはいえない。
また、本件相続により本件建物の経済的価値が
増加したと認めることは困難である。
したがって、本件債務は、
通達評価額とするのが相当である。
結果的に、父の相続財産は、
本件契約による当該建物分が
資産として追加されるものの
売買代金の返済はされていないから
評価通達額だけ増加していることとなる。
そして、未返済の売買代金の全額を
債務として認めるのではなく、
評価通達額までの金額を
債務控除の対象としているため、
実質的に当該契約はなかったものとして
相続の計算を行っていることとなる。
しかしながら、債務控除を認める金額について、
経済的価値とするのであれば、
時価10億円であり、
評価通達額8億円とする根拠が合理的でない。
したがって、12億円全額を債務控除と認めない
とするか、時価10億円まで認めるとすることが
合理的であると考えるがいかがか。
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