第2号 偽りその他不正な行為と仮装隠蔽による行為
法人税法第159条第1項は、偽りその他不正の行為により、法人税を免れ、又は法人税の還付を受けた場合には、法人の代表者でその違反行為をした者は10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨規定している。
また、国税通則法第68条(重加算税)第1項は、過少申告加算税の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提 出していたときは、当該納税者に対し、政令(国税通則法施行令第27条の3《加重された過少申告加算税等が課される場合における重加算税に代えられるべき過少申告加算税等》)で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告 加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当 する重加算税を課する旨規定している。
偽りその他不正の行為と仮装隠蔽が別物であるとすると、不正でなければ仮装隠蔽があっても7年更正することができず、逆に仮装隠蔽がなければ7年遡っても重加算税を課することができないこととなる。したがって、まず、不正であることを理由に7年遡って更正 決定等を行い、さらに仮装隠蔽の事実により、重加算税を課することとなる。
(偽り不正な行為)
偽り不正な行為は、あくまで行為であるので、何をするのかその目的である故意が必要であることとなる。しかし、故意はどの程度まで必要かとの議論があるところ、その行為をすれば税額が少なくなることを認識していた程度の故意であると考えられる。つまり、正確に 減少される税額までを認識している必要はないという意味である。(理由書で、「悪いこととはわかっていました」のレベル)その意味では、行為無価値的であり、納税者が行った行為 を問題としていると考えられる。しかし、その不正の行為によって、税額を免れている場合となっている(第3項は損失が過大となっている場合であるが、同様に考えられる。)ので、結果的に税額に影響がない場合は、不正な行為があっても、更正することができないことと なると考えられる。いわゆる結果無価値的な考え方となっている。そのため、この故意は、後で述べる仮装隠蔽に対する故意よりも強く、過失があったことやその行為により税額が 減少するとは思っていなかったと外形的に認識できる場合(本人の主張のみではなく、第三 者からみても税額を減少させようとする行為ではない。いわゆる正当な行為)には、不正な 行為とならないと想定していると考えられる。つまり、結構強い意思を持って税額を減少させようとする行為である。
※やむを得ない行為は、天災など非常に範囲が狭くそれ以外にないどうしょうもない行為であり、正当な行為は、不正ではなく合理的な行為であり、やむを得ない行為よりも範囲は広いと考えられる。
例えば、不正な行為により100万円の所得を免れ、同時に200万の過大所得の計上となっていた場合には、結果的に税額を免れていないので、更正できないこととなる。いわゆる総額主義である。つまり、不正な行為による更正期間の制限については、その事業年度の総額の税額から判断することとなる。
(仮装隠蔽による行為)
次に、仮装隠蔽による行為であるが、これは、積極的に仮装する行為であり、又は隠蔽する行為であるから、故意が必要となる。(誤って仮装隠蔽する行為はない。)しかしながら、 ここでの故意は、それぞれ単に仮装する故意であり、隠蔽する故意であるから、仮装隠蔽の行為に対する故意は、その行為により結果的に税額を免れることとなるのであるが、その行為の結果であるところの税額を免れようとする故意までを要求しているものではないと考えられる。
したがって、他の法律を免れるために契約書等を仮装隠蔽していたところ、誤ってそのままその契約書に基づいて納税申告書を作成し、結果的に税額を過少にして納税申告書を提 出した場合には、重加算税が課税させることとなる。
そうすると、不正な行為とは、その行為をすれば、税額が過少となる認識で行う行為であるから、売上除外や架空経費の計上などがこれに当たることとなる。そして、仮装隠蔽とは、 二重帳簿の作成や領収証の改ざんなどにより、故意に売上げを計上しないことや、架空の経 費を計上することであることから、ほとんどの場合は、不正な行為と仮装隠蔽とは重なることとなる。つまり、仮装隠蔽とは、不正な行為の具体的な方法であり、仮装隠蔽がなく不正な行為としては、そもそも記帳もなにもしない行為が考えられ、不正な行為はないが仮装隠蔽となる行為は、前記の誤って偽りの契約書で納税申告書を作成した場合が考えられる。
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