第29号 帳簿不提示で仕入れ税額控除できないの
納税者が帳簿書類を提示せず、調査に協力しなかった場合、帳簿書類を保存していない場合に該当するとして消費税の税額控除を行わないで消費税額を算出して課税処分をすることができるか。
(法令)
消費税法第30条(仕入れに係る消費税額の控除)第7項は、第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れの税額については、適用しない旨、
ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存することができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない旨規定しています。
国税通則法第127条第3号は、第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)の規定による物件の提示又は提出に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨規定しています。
(最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決)
判決では、「事業者が、消費税法施行令50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務署員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、法30条7項にいう『事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存していない場合』に当たり、事業者が、災害その他やむを得ない事情に当該保存をすることができなかったことを証明しない限り、
同条第1項の規定は、当該保存がない課税仕入れに係る課税仕入れ等の税額については、適用されないというべきである。」としています。
(問題)
本判決は、適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、「保存しない場合」に当たると解釈していますが、税務調査の際に、納税者が仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を提示しなかった場合、法30条7項にいう「保存しない」 場合に該当するとまでいっているのかという問題があります。
(他の意見)
第1意見
帳簿等の提示を拒否したことをもって「保存しない場合」に該当するとみることはできない(否定説:大阪地裁平成10年8月10日判決)
この見解では、法30条7項の「保存」という文言の通常の意味を重視し、保存の中に提示までの意味を含まないとしています。
そうすると、税務調査における帳簿等の不提示は一種の調査拒否であり、法30条7項を問題にすることではないと考えています。
第2意見
納税者が、正当な理由なく帳簿等の提示に応じなかった場合には、「保存しない場合」に該当するという見解(肯定説:津地裁平成10年9月10日判決)
この見解では、課税処分取消訴訟において帳簿等を示すことはできないと考えています。
第3意見(判決と同じ)
法30条7項にいう「保存」とは、税務職員による適法な提示要請があれば提示することができる状態での帳簿等の保存を意味するという見解。
この見解は、帳簿等の不提示を「保存しない場合」に該当するか否かを判断するための事情と考え、納税者が、やむを得ない事情を証明しなければ、仕入税額控除は認められないと考えています。
つまり、判決では、第2意見のように、不提示を積極的に保存しない場合に当たるとしているのではなく、あくまで不提示であった事実を認め、やむを得ない事情を証明する責任を与え、証明できなければ課税はやむを得ないとしているので、個別の事案によって、調査の違法性やその状況(一応提示したなど)によっては、逆に、課税庁がその点を説明できなければ、課税が違法であるとされることも考えなければならないとしています。
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