TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

199号 租税回避行為シリーズ2(非課税法人への支払利息)

非課税法人への支払利息

非課税法人の関連会社が、当該非課税法人に対して支払った利息は、たとえ私法上問題なく契約によって支払ったものであっても、経済的合理性が低い場合は、否認されるか。

 

 

事件の概要

原告は、非課税法人の同族会社で、非課税法人の不動産を管理している法人である。原告は、非課税法人から不動産を借り受け、第三者に貸し付けていた。当該不動産を賃借するに際し、多額の保証金を差し入れている。その後、当該賃借していたビルを原告が非課税法人から買い受けた際に、多額の保証金を差し入れているにもかかわらず、売買代金を支払わず、多額の遅延損害金を支払っていた。

 

さらに、別件賃貸ビルを非課税法人から買受け、引渡しを受けており、同時に売買代金を支払うこととなっているにもかかわらず、売買代金を支払わないでいたものである。契約によると、原告は非課税法人に対して、売買に際し多額の証拠金を差し入れているにもかかわらず、売買代金の支払いが遅れることに対する多額の遅延損害金の発生する旨記載されていた。さらに、証拠金・預託金は売買代金の額から控除しない旨記載されていた。

 

 

第1審被告(税務署)の主張

本件預託金等は、法律上売買契約の手付金と解されるべきものであって、契約の履行に着手した後においては、売買代金に充当されるべきものである。ところが、本件売買契約では、その履行がなされた後も、預託金等は売買代金に充当されることなく、しかも、売買代金については、その支払期前でも、未払金について遅延損害金を支払うものである。

 

 

本件売買契約は、原告にとって極めて不利なものであって、合理的経済人の観点から極めて異常である。したがって、預託金等は、売買代金に充当されたものとして、利息を再計算し、超過部分については、寄附金と解される。

 

 

第1審原告(納税者)の主張

本件契約について、非課税法人の財務状況等からみて、遅延利息を請求することになんら問題はないと考える。

 

 

第1審判決(大阪地裁昭和53年11月17日判決)

本件賃貸ビルを売買するに当たり、原告は、証約手附を交付する必要性はなかったと認められること。また、証約手附としては、売買代金からすると極めて高額であることから、証約手附であると認められない。

 

当該取引は、原告にとって極めて不利であり、契約を締結する合理的理由が認められない。問題は、担保を提供することが不合理であるかどうかではなく、担保として交付された金員に対応する額についてまで遅延損害金を支払うことが不合理か否かであるにもかかわらず、原告はその合理的理由を立証していないことである。

 

したがって、預託金等の額に対応する売買代金について、運用利益に相応する性格のある損害賠償金を支払った行為は、原告にとって極めて不利益であって、合理的経済人であれば行うことのない不合理なものである。

 

そして、原告の行った支払行為は、非課税法人に対し無償で経済的な利益の供与をしたことに帰着するから、その利益の額、即ち預託金等に対する遅延損害金は、法人税法第37条第5項の寄附金に該当する旨判示した。

 

 

そうすると、本件は、預託金部分に損害賠償金を課す事が経済的不合理であると判示しているのであり、預託行為そのものの不合理性を指摘しているのではない。さらに、自ら売買代金を支払っていないだけであるにもかかわず、損害賠償金を支払うこと自体も否定していないものと考えられる。つまり、ここまでの部分については、租税回避行為性は認められないってことか。

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