TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

202号 租税回避行為シリーズ5  りそな外税控除否認事件(最高裁平成17年12月19日第二小法廷判決)

(事件の概要)

これは、外国税額控除の制度を利用した租税回避事件です。ニュージーランドにあるA社が資金を運用するに当たり、税率の低いタックスヘイブン国にB社を設立しました。A社は同時に同タックスヘイブン国にC社も設立し、B社はニュージーランドのA社からの運用資金をC社を通じてC社からの借入金としました。C社を同時にタックスヘイブン国に設立したのは、B社がC社からの借入金を運用するということにして、B社においてタックスヘイブン国における課税を免れるためです。

 

 

しかしながら、タックスヘイブン国における貸金取引では、B社がC社に支払う借入金利息に対して源泉課税が行われることになっています。A社は、この源泉課税をなんとかしたいと考えました。そこで、りそな銀行がこのB社とC社の貸金取引の間に入ってきました。

 

 

当然、りそな銀行はB社からの受取利息に対して源泉課税されることになります。にもかかわらず、りそな銀行が受け入れたC社からの預金には、この源泉課税がされた金額を加算して支払いことにしました。そうすると、りそな銀行としては、この取引で手数料をもらっていましたが、それ以上に加算して支払った源泉課税された金額だけ損失となる取引となります。

 

 

こんな取引は通常考えられません。しかしながら、実は、りそな銀行は、外国税額控除の余裕枠を持っていたのです。B社やC社であれば還付とならないタックスヘイブン国で課税された税額が、りそな銀行からすると外国税額が、この取引にとって、余裕枠を使用することにより、追加的に日本国政府から全額還付となるので、結果的に利益を得ることができることとなりました。

 

 

外国税額控除制度というのは、外国で支払った税額を日本で支払うこととなる税額から控除するというものです。しかし、法人税の確定申告で控除できる金額は、国外所得金額による控除額に限度がありまして、全額を控除することができない場合、つまり、限度超過額がある場合があります。

 

 

逆に、国外所得金額が多い場合には、外国で支払った税額をすべて控除して、さらにまだ余裕がある場合が生じる場合があります。つまり、少々外国税額が増えても、この余裕枠を使って全額還付を受けることができるのです。この限度超過額や余裕枠は3年間繰り越せるのですが、取引構造が変わらない限り、限度超過額が発生する法人は常に毎年限度超過額が発生し、余裕枠が発生する法人は常に毎年余裕枠が発生します。そのため、このりそな銀行が行った取引は、結果的に、この余裕枠を売買したものとなっているのです。

 

 

 

第1審では、原処分庁は、私法上の法律構成による否認または限定解釈を主張をしましたが、裁判所は、 原処分庁の私法上の法律構成による否認論を採用せず、また予備的主張の外国税額控除制度の濫用論も採用せず、各当事者は貸金契約や預金契約を締結する意思を有しており、源泉税を回避することが目的であった。

したがって、当事者の意思に従って課税されるべきとして、判決は、処分取り消しとしました。つまり、なにが悪いねんってことです。

 

 

第2審では、原処分庁は、主張を改め、外国税額控除は、国家による一方的な恩恵的な措置であり、正当な事業目的のない取引における外国税の支払いは「納付」に当たらないとして、外国税額控除制度の濫用であるとしたところ、裁判所は、原処分庁が主張する外国税額控除制度の濫用論を採用せず、金融機関としては業務の一環であるとして、棄却しました。(原処分庁敗訴)つまり、どこが悪いねんってことです。

 

 

最高裁では、原処分庁は、限定解釈を主張、判決は、破棄自判

次のように、租税法規の限定解釈に関するもの、つまり濫用論として、次のように判示し、 原処分庁の勝訴としました。つまり、やっぱり、これはあかんやろってことです。

 

 

本件取引は、我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものというほかない。そうすると、本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは、外国税額控除制度を濫用するものであり、さらには、税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。

 

 

詳しく言いますと、「本件取引は、全体としてみれば本来の外国法人が負担すべき外国法人税について我が国の銀行であるりそな銀行が対価を得て引き受け、その負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税額を減らすことによって免れ、最終的に利益を得ようとするものであるということができる。

 

 

これは、我が国の外国税額控除制度を、その本来の趣旨から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ、我が国において納付されるべき法人税額を減少させた上、この免れた税額を原資とする利益を取引関係者が享受するために、取引自体によっては外国法人税を負担すれば損失が生じるだけであるという本件取引をあえて行うというものであって、我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものというほかない。

 

 

そうすると、本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは、外国税額控除制度の濫用するものであり、さらには、税負担の公平を著しく害するものとして許されないと言うべきである。」司法の判断も、大きく揺れましたが、結果的には、外国税額控除制度の濫用ということで課税となったものです。

 

 

これも、どこまですれば濫用となるのか、という問題があります。これほど判断が揺れた事件ですから、少し条件というか事実が違っていれば判断も変わっていた可能性が十分あります。

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