第204号 租税回避行為シリーズ7
オーブンシャホールディング事件
(最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決)
(事件の概要)
これは、資本取引により他社に経済的利益を与えた場合、それを意図していた場合であれば課税できるかどうかという事件です。オーブンシャホールディング株式会社が、オランダにオーブンシャの株式等を現物出資して子会社A社を設立することにより、日本の資産であるオーブンシャの株式を海外に移し、オランダ子会社A社の株式を得ました。
そして、このオランダ子会社A社の株主総会で、新たに発行する新株の全部をもう一つの外国関連会社B社に著しく有利な価額で割り当てる決議をしました。なお、この外国関連会社B社は、オーブンシャホールディング株式会社の筆頭株主である公益財団法人センチュリー文化財団がオランダに設立した会社であり、当該財団は創業者一族が役員をしています。
上記の取引により、オランダの子会社A社の株式の資産価値、ほとんどがオーブンシャの株式ですが、これを対価なく、B社に移転することができました。つまり、オーブンシャの株式をオーブンシャホールディング株式会社から創業者一族に移転したものです。
原処分庁は、これは、オーブンシャホールディング株式会社がA社株式の資産価値をオランダのB社に移転させた寄附金(法人税法22条2項の無償による資産の譲渡取引)であるとして課税しました。
これに対してオーブンシャホールディング株式会社は、第三者に対する新株の有利発行により旧株主の株式含み益が減少しても、益金の額に算入する別段の定めはないこと、つまり、取引ではないと主張しました。なお、オランダと日本国の租税条約で、B社には受贈益は課税されません。
第1審(藤山判決)では、オランダ子会社A社の資産価値の減少は、オーブンシャホールディング株式会社の行為によるものではないとして課税を取り消しました。つまり、オランダ子会社A社の行為による単なる結果であるという考えです。
第2審では、本件取引は、両者の合意に基づくものであり、これらの行為は、法人税法22条2項の取引に当たるとして現判決を破棄差し戻しました。つまり、課税することとなりました。
最高裁では、この資産価値の移転は、上告人つまりオーブンシャホールディング株式会社の支配の及ばない外的要因によって生じたのではなく、上告人において意図し、かつB社において了解したところが実現したものということができるから、法人税法22条2項にいう取引に当たるというべきであるとしました。
判示は次のとおりです。
「オーブンシャホールディング株式会社は、オランダ子会社A社の唯一の株主であったというのであるから、第三者割当によりA社の新株の発行を行うかどうか、誰に対してどのような条件で新株発行を行うか自由に決定できる立場にあり、著しく有利な価額による第三者割当増資をA社に行わせることによって、その保有するA社株式に表章されたA社の資産価値を、A社から切り離して、対価を得ることなく第三者に移転させることができたものということができる。
そして、オーブンシャホールディング株式会社が、A社の唯一の株主の立場において、A社に発行済株主総額の15倍の新株を著しく有利な価額で発行させたのは、オーブンシャホールディング社のA社に対する株主割合を100%から6.25%に減少させ、B社の持株割合を93.75%とすることによって、A社株式200株に表章されていたA社の資産価値の相当部分を対価を得ることなくB社に移転させることを意図したものということができる。
また、前記事実関係等によれば、上記の新株発行は、オーブンシャホールディング社、A 社、B社及び公益財団法人センチュリー文化財団の各役員が意思を相通じて行ったというのであるから、B社においても、上記の事情を十分に了解した上で、上記の資産価値の移転を受けたものということができる。
以上によれば、オーブンシャホールディング社の保有するA社株式に表章されたA社の資産価値については、オーブンシャホールディング社が支配し、処分することができる利益として明確に認めることができるところ、オーブンシャホールディング社は、このような利益を、B社との合意に基づいてB社に移転したというべきである。
したがって、この資産価値の移転は、オーブンシャホールディング社の支配の及ばない外的要因によって生じたのではなく、オーブンシャホールディング社において意図し、かつ、 B社において了解したところが実現したものということができるから、法人税法22条2項にいう取引に当たるというべきである。」と判示しました。
本件は、本来取引でないものを実質的にその意図があったとして取引であるとしたものである。つまり、取引の創造です。しかも、本件は、オランダの会社がオランダの法律に基づいて合法的に行った行為を日本の法律で、否認したことになります。
なお、第1審の藤山裁判長は、日本国内でも、同様なこと、つまり、旧株主が損をして新株主が得をしている場合が起こっているのに課税していないではないかを判示している。つまり、第三者割当には、新株主が有利になるのは当たり前ってこと。それに課税するのかってことです。
そうすると、どのような条件がそろえば、単なる第三者割当てによる有利発行が寄附金課税となるのか。つまり、程度の問題なのかということになります。
「旧株主にとってみれば自らの経済的利益の損失を甘受してもなお新株主に特に有利な第三者割当てをする合理性、たとえば外国資本の導入や金融機関からの資金援助など、合理的な資金調達目的がある場合にのみこれが認められるべきであり、オランダ国内法により形式的に第三者割当てが認められる場合であっても、そこに旧株主から新株主に対し明らかな経済的利益の贈与があれば、これは我が国法人税法で当該経済的利益の贈与につき課税関係を実質的に判断することも可能になる。」というのが東京高裁の考え方です。
まだまだ租税回避行為について、どうなれば課税され、どうであれば課税されないのか不安定なところがあります。今回は説明していませんが、タックスヘイブン来料加工の事件も同じようなことがいえるところがあると思います。
法人税基本通達2-3-7(通常要する価額に比して有利な金額)
法人税基本通達2-3-7は、法人税法施行令119条1項4号(有利発行により取得した有価証券の取得価額)に規定する「払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時における有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額」とは、当該株式の払込み又は給付の金額(払込金額等)を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額を言うものとする旨定めている。
また、ただし書きで、社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかは、当該株式の価額と払込金額等の差額が当該株式の価額のおおむね10%相当以上であるかどうかにより判定する旨、さらに、払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額とは、決定日の価額のみをいうのではなく、決定日前1月間の平均株価等、払込金額を決定するための基礎として相当と認められる価額をいう旨定めています。
つまり、原則は有利発行の場合であっても、有価証券の取得価額は取得のために通常要する価額としてそのままの金額を取得価額として認められている。差額があれば、受贈益課税がされることとなります。
さらに、この経済的な側面からのみ判断されるもので、会社法における有利発行の特別決議の有無は影響しません。会社法199条2項(募集事項の決定)
結局、第三者割当てによる新株の発行には、原則有利性があるのが前提となります。しかもこれ自体は資本取引で損益に関係がありません。しかしながら、両者の合意があれば、通常の有利性を超えた有利を与えることもできます。その部分については、税務上の損益取引があったものとみなすということになります。
そうすると、これは、私見ですが、やっぱり程度の問題なのかということです。程度が悪いと、税務上、取引があったものとみなされる課税されるってことでしょうか。そういう意味でも租税回避行為に対する課税は考えさせられるところです。
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