第40号 原価差額
法人税法第29条(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価方法)第1項は、内国法人の棚卸資産につき第22条第3項の規定により各事業年度の所得の計算の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となる当該事業年度終了の時において有する棚卸資産(期末棚卸資産)の価額は、棚卸資産の取得価額の平均額をもって事業年度終了の時において有する棚卸資産の評価額とする方法等とする旨規定しています。
これは、簿記でいうところの3分割法を前提とした表現です。
期首棚卸資産の評価は、前期の期末棚卸資産と同じであるので、特に法人税法上は規定せず、期中の仕入れ等の評価は時価であるため、これも税務上特に規定していません。
そのため、税務調査で最終の期末棚卸資産の金額に変更があった場合、期首も変更するのかと思いますが、期首棚卸資産の評価は、前事業年度の期末評価を変更した場合に翌期の期首棚卸資産の評価を変更するのであり、
前事業年度の期末棚卸資産の評価を再評価していない場合は、期首棚卸資産の評価を変更できません。
期中の仕入金額を合計した金額から期末棚卸資産の評価額を控除した金額が売上原価として損金の額となるので、期末棚卸資産の評価は非常に大事であることから法人税法は詳細に規定しています。
したがって、簿記でいうところの売上原価法を採用している場合(売上の都度原価を計上する方法)は、期中で仕入れたものをすべて損金の額に算入していないので、税務調査で期末棚卸資産の計上漏れを把握してもB/S取引であり否認はできません。
次に、法人税法施行令第32条(棚卸資産の取得価額)第1項第2号は、製造等に係る棚卸資産は、当該資産の製造等のために要した原材料費、労務費及び経費の額と当該資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定しています。
つまり、実際原価によるものとされています。
そうすると、法人が製造の段階で標準価額や予定価額を採用している場合、この実際原価の額と差額が生じることとなります。これを原価差額といいます。
実際は、工場つまり製造工程の部署で作成した予定価格や予定単価、予定量等を入力し、 実際にかかった時間や量について差異を分析しています。
そして、実際にかかった材料費や労務費、経費は経理部で経理しています。
そこで、発生した原価差額(通常は実際のほうが大きくて差損が発生することとなる。)は、少額(1%以内)な場合を除き、標準原価計算で計算した原価と棚卸資産の価額に配賦することになります。
このとき、標準原価計算で算出した原価を棚卸資産に計上してしまうなど、配賦誤りが生じることがあるので留意することとなります。(少額でなければ否認されます。)
さらに、材料費の取得価額に算入しなければならない引取運賃等の費用を経費処理している場合もあるので留意します。(有価証券の取得価額に手数料を加算せず直接損金に計上していることが多いが、同様です。)
また、内部振替(製品を部品にしたり、サンプルに使用したり通常の工程から振り替えられる)があった場合には、非常にややこしくなります。
ここで、生じた原価差額は、差益の場合と差損の場合ありますが、差益が生じた場合、つまり、実際原価よりも標準原価のほうが大きい場合棚卸資産の評価が実際の評価よりも大きくなっているので、実際に発生した原価から、計算上高くなっている評価額を控除すると製造原価として算出した額が小さくなっていることとなります。
つまり、売上高は一定なので、売上総利益の金額が実際よりも大きくなっていることとなります。通常これを貸方原価差額と呼んでいます。
法人税法施行令第32条第2項は、内国法人が第1項第2号に掲げる製造等の棚卸資産につき算定した製造等の原価の額が同号イ(原材料費等)及び口(経費の額)に掲げる金額の合計額と異なる場合において、その原価の額が適正な原価計算に基づいて算定しているときは、その原価の額に相当する金額をもって当該資産の同号の規定による取得価額とみなす旨規定しています。
そのため、一般に貸方原価差額は申告調整できないので、決算調整することとなります。(更正の請求になじまないってこと)
しかしながら、決算調整しなかった場合でも、当該算出した原価の額の中に、交際費等の損金不算入とした金額が含まれている場合には、加算のみが生じることとなるので、この金額については、申告調整することが可能となります。(更正の請求になじむってこと)
法人税基本通達5―3―9(申告調整できる貸方原価差額)は、法人が棚卸資産につき算定した取得価額が法人税法施行令第32条第1項に規定する取得価額を超える場合のその超える差額(原価差益のこと)のうち、法又は措置法の規定により損金の額に算入されないため確定申告に際して自己否認した金額から成る部分の金額については、当該申告に係る申告書においてその調整を行うことができるものとすると定めています。
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