第84号 年金制度
年金は大きく 3つに区分できます。個人年金、企業年金、公的年金です。
個人年金は、各個人が生命保険会社と契約して、老後に年金として受取るものです。保険料は、生命保険料控除の対象となります。
企業年金は、企業や役所から退職金の一部を、老後に年金として受取るものです。老後にあらかじめ決まった金額を受取る確定給付年金と企業から在職中に決まった金額を支給され、各自が投資運用して、老後に年金として受取る確定拠出年金があります。
さらに、確定拠出年金には、個人型と企業型があります。確定給付年金は退職金のことなので個人型はありません。確定拠出年金の個人型は、退職金として個人で貯蓄するということです。
個人型は、確定給付年金のない自営業者(1号被保険者、以下「1号」といいます。)や主婦(3号被保険者、以下「3号」といいます。)、または、確定給付年金があってもさらに個人的に年金を増やしたい人サラリーマン(2号被保険者、以下「2号」といいます。)が加入するもので、確定拠出年金の個人型を通称 iDeCoといい、掛金は全額小規模企業共済等掛金控除の対象となります。
公的年金は、厚生年金と国民年金があります。(共済年金は厚生年金と合体しました)昭和61年の年金大改正までは、業界ごとに縦割りとなっていたので、個人事業の人は国民年金だけで、2号(サラリーマン)は厚生年金だけでした。完全分離の状態でした。(1号の妻も1号です)
そして、この厚生年金として受取っていた年金は、報酬比例部分と定額部分に区分され、一括して受取っていました。改正後は、国民年金と厚生年金の定額部分はほとんど同額であったので、これを合体し、全国民が国民年金をもらうこととなり、これを基礎年金と呼んでいます。
ですから、事業者の人は、支払うときは国民年金という呼称で支払って、受取るときは基礎年金という呼称で受取ります。
厚生年金の人は、厚生年金保険料として給与に比例したー定額を支払い、以前の定額部分に対応する部分を国民年金部分として会社や役所が国に拠出します。
このとき、サラリーマンの配偶者で専業主婦(3号)は、国民年金保険料を支払うことなく、サラリーマン(2号)でもないので天引きもできません。
そのため、各企業が従業員(2号)の厚生年金の掛金を天引きする際に、この3号全員の保険料相当額をサラリーマン全員で分割して天引きすることとし、厚生年金保険料の金額の中に含めて天引きしています。
つまり、保険料がその分高額となったのです。
そうすると、配偶者のいる人もいない人も、給与の額に比例した金額を天引きされるので、配偶者がいないか、いても共稼ぎで配偶者が働いている人は自らも2号被保険者として厚生年金を支払っているので、結果的に、他人の配偶者の国民年金の一部を支払っていることになります。
これが3号問題です。
この結果、事業者もサラリーマンもその配偶者もみんな自分の年金をもらうことができるようになりました。これが基礎年金です。これが、国民皆年金制度です。
したがって、旧厚生年金の報酬比例部分を新厚生年金(2階部分)といい、旧定額部分を基礎年金(1階部分)と呼ぶことになります。
めでたしめでたし、あと残った問題は、生活保護者と障害者と学生と未納者です。
しかしながら、ほんの数十年前までは、共稼ぎどころか、サラリーマンの人さえ少なかったのです(職人だった)。そして、サラリーマンの妻の国民年金への加入は任意だったのです。そのため、サラリーマンの妻もサラリーマン以外の人の妻も、女性は国民年金を支払っていなかったのです。
そのため、現在、年金をもらっている専業主婦の人(今60歳台後半以上の人)の年金は非常に少ないのです。そのために、これを救済するために、いろいろと多様な附則ができ、年金が難しいという原因となっています。
最後に、すでになくなったのですが、企業年金(3階部分)に厚生年金基金というものがありました。(まだ一部残っていますが。)これは、バブル以前の高金利時代に、各企業の厚生年金組合が、国の年金想定金利である5. 5%を上回る金利で運用できるとして、ほんの一部を残して、各企業が作った各厚生年金基金は、従業員から預かった厚生年金保険料を国に拠出せず、各社の退職金の一部である企業年金と公的年金である厚生年金を一緒にし、自ら運用して、自ら従業員の厚生年金を支払う制度を作りました。これを代行制度と呼んでいます。
当初は7%以上で運用できたため、差額の1.5%部分を年金として追加支給をしていましたが、低金利時代に突入して、各厚生年金基金が破綻しました。
そのため、各従業員の厚生年金は、国が責任を肩代わりすることとなり、結果的に、以前から5.5%で運用していたとして年金をもらうので、追加支給をもらった人は貰い得になりました。これが代行返上問題です。
また、これ以外にも、国税庁所管の適格企業年金というものもありました。これは、税法の要件に適合した年金拠出金は拠出時に損金算入できるというものです。こういう背景が年金制度にはありますので、次回以降説明します。
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