第121号 非課税となる学校授業料
【争点】
構造改革特別区域法(以下、「特区法」といい、当該特別区域を「特区」という。)による株式会社立の通信制高等学校である納税者が、特区以外のキャンパス(以下「学習センター」という。)で行う教育は、消費税法別表第一第11号イにおける「教育として行う役務の提供」に当たるか否か。
(納税者の主張)
(概要)
消費税法別表第一第11号に掲げる非課税の要件は、学校教育法等に規定する学校を設置する者が当該学校における教育として行う役務の提供であるところ、納税者は、特区法第12条(学校教育法の特例)により設立された株式会社立の高等学校であることから、学校教育法第1条に規定する学校を設置する者に当たる。
また、当該学校は、〇〇市から認定を受けている。そして、当該学校における教育を行うにあたり、各学習センターにおいて、〇〇市から認定を受けた教育内容を実施するために当該認定を受けた教育と一体となって教育を行っているものであるから、後段の当該学校における教育として行う役務の提供にあたるものと考える。
ところで、納税者の学習センターにおける教育の内容は、教員資格を有する教員による学則に規定する生徒指導、進路指導及び学習支援であり、明らかに認定を受けている教育内容を達成するために必要な内容であることから、教育として行う役務の提供である。
さらに、生徒指導要録(表簿)は、各学習センターにおいて、教員資格を有する教員によって生徒を指導し、その指導の記録を行っており、通信教育の補習としての授業や面談・相談を行っていることから、当該学習センターにおける教育は、通信制教育の一環であり、通信制教育と併せて全体として「当該学校における教育として行う役務の提供」を行っているものに該当すると考える。
なお、各学習センターで行う教育は、学校案内において認定を受けた教育内容と一体となったものであり、学生本人及び父兄も別物であると見間違える可能性はない。本校は、通信制教育学校であるが、従来の通信制による教育の一環である面接指導に注力するために、学習センターを併設している。
これは、通信制教育を主とし、学習センターでの教育を従とするものであるが、不登校の生徒など従来の高等学校教育になじめない生徒が自由に教育を受けることができ、自ら登校しようとする自覚を目覚めさせるための教育方針であり、あくまで、通信制教育と一体のものである。
なお、高等学校の通信制の課程とは、高等学校通信教育規定第2条により、高等学校の通信制の課程で行う教育は、添削指導、面接指導及び試験の方法により行うものとする旨規定されている。
(学則への記載)
本校の学則に、学習センターにおいて教育の一部を実施することができる旨の規定があるところ、当該学則は、納税者が〇〇市において通信制の高等学校を設立する際の認可申請書に添付したものであり、特区における学校教育として〇〇市においても承認されたものと考える。
そうすると、仮に、特区法により特区以外で通信制教育の一部を行うことが認められていないとしても、納税者の学則に特区以外の学習センターにおいて教育の一部を行うことができる旨の規定があり、当該学則が特区である〇〇市に提出され認可されていること、及び、実際に学習センターにおいて通信制教育の一部が行われている事実から、当該学習センターで行われる教育(授業)には本来の通信制教育の一部含まれていることとなり、〇〇市で行われる教育と学習センターで行われる教育は一体・一環したものであると認めることができる。
(当局の主張)
納税者は、特区法により設置された株式会社立の高等学校であるところ、特構造改革特別区域法逐条解説によると、特区法による特例措置の内容は、地域の産業との連携を図り人材育成や研究の促進を目指すことや、不登校児童生徒などを対象とした既存の取り組みを活用することなど、地域の特別の教育ニーズに対応し、学校教育の活性化を図るために、特区において株式会社が学校を設置することを認めるものである旨説明しており、同解説によると、設置者要件緩和のための学校教育法第2条第1項の読み替えとして、特区においては、学校教育法のうち第2条第1項の規定を読み替えて適用し、一定の要件を満たす株式会社も学校を設置することができるものとする旨説明している。
そうすると、当該学校は特区内に設立されることが明らかであり、当該学校において行う教育とは、特区内において行う教育に限るものと考える。納税者は、学習センターにおいて通信制課程の教育を行っているわけではなく、あくまで通信制課程の教育と一体として教育をしているのである。
ここで、仮に学習センターにおいて通信制課程の一部である例えば面接指導等を行っているとしても、それは、通信制課程の教育の一部を本来の通信制課程を行う特区の教育機関から委託されたものであるとみなすことができる。パンフレットにおける授業料には、通信制課程の面接指導に係る授業料は通信制課程の授業料の中に含まれているのであり、学習センターの授業料の中には含まれておらず、また正規のプログラムとして学習センターにおける面接指導が編成されているものでもない。
さらに、納税者の学習センターでは、納税者の通信制高等学校が不登校児童の対策として設立されたものであり、納税者の主たる事業内容自体が学習塾の経営であることから、補習授業が主体となっているが、納税者と同様の株式会社立の高等学校では、学習センターで行う教育を補習授業ではなく、サッカーなどの運動や芸術などに特化している高等学校も存在する。
つまり、通信制課程と一体となった教育としても補習授業から運動や芸術なども幅広く行われているのであり、納税者が行う補習授業だけが通信制課程と一体となった学校教育であるとみることはできない。納税者が行う補習授業は、いわば塾そのものであるといえる。
また、形式的にも、通信制課程のみの入学金と授業料と学習センターの利用による入学金と授業料を両建てで表示かつ請求しているものであることから、明らかに、学習センターでの授業を正規の通信制課程と区分しており、生徒側においても明らかに区分されたものとして入学金や授業料を支払っているのである。
つまり、授業料や入学金さらに施設利用料が別途請求されるものであり、金額も〇〇市から認可された教育に係る授業料よりも多額となっており、各学習センターの利用も全生徒に対して強制されたものではなく、全生徒は、受講を選択することができる。本件の学習センターにおける教育役務の提供は、学生の高校卒業のための評価の対象とはなっておらず必須授業ではない。
〇〇市から認可された教育内容は当該〇〇市における施設での高校修了資格を得ることができる教育内容であって、各学習センターにおいて行われている教育内容については認定しておらず、納税者が独自に行っているものである。
そのため、各学習センターで行われる教育内容は、決して〇〇市から認定された教育内容と一体となって行っているものではない。
構造改革特別区域法においても、物理的に特別区以外に設置した施設に対して、〇〇市認可した特別区域内の施設と同一の地位を与えるものではない。
結果的に、本件高等学校の入学を希望する生徒は、各学習センターにおける補習授業を経て高校修了の資格を得ようとするものであるから、〇〇市から認可を受けた教育内容の補完として各学習センターを利用するものではない。
また、各学習センターにおける教育内容のうち実施されている進路指導等が、仮に〇〇市から認可された教育内容を補完するものであったとしても、各学習センターにおける教育内容は、実態としては塾としての教育であり、特区法上も特区以外で高等学校の教育を実施することは禁止されている。
仮に納税者が主張するように学習センターで高等学校教育の一部を行っていたとしても、当該教育(授業)は正式な高等学校としての教育ではなく、塾としての補習授業から抜け出るものではない。
当該学則に〇〇市以外の場所で教育の一部が実施できる旨の規定は、その内容までも含めて、〇〇市における高等学校認可時に認可されたものと考えることはできず、〇〇市においては、単に法令上の記載事項が適切に記載されているか否かが検討されているにすぎないものと考えられる。
さらに、特区以外の学習センターで高等教育の一部を行っている事実から学習センターで教育が高等教育の一部行っているとの主張は、仮に納税者の主張する事実があったとしても、形式基準としての消費税法上の規定からすると当該教育が非課税である教育であるとする理由はないものといえる。
また、納税者の授業料体系が、通信制高等学校の授業料と学習センターにおける補習授業である塾としての授業料が明らかに区分されおり、課税取引となる連携先の塾であった当時の実態となんら変わるものでもなく、特区法により通信制教育の認可を得たことにより自動的に塾としての教育が高等学校教育の一環となる教育になるものでもない。
したがって、学習センターにおける教育は消費税法別表第一第11号イにおける「教育として行う役務の提供」に当たらず、当該学習センター利用による入学金及び授業料は非課税とはならない。
(当局の当初の考え方)
〇〇市以外で行っている補修授業は、〇〇市の認定外のものであり、実質的に塾であると認定すべきではないか。その上で、法令解釈を行うと、当該非課税規定について検討すると、法第6条の規定は、法第4条で規定する資産の譲渡等に該当するもののうち、特に政策的に消費税を課さないとする旨を規定しているものであり、別表第1第11号に規定する教育に関する役務の提供については、厳格に解釈する必要がある。
第11号は、イから八までは法令に従った学校における教育役務の提供であり、ニは、イから八までに掲げる教育に関する役務提供に類するものを規定しているものの政令第16条で定めるものとしており、政令第16条は、施設を設置する者について、限定していることから、類するものとして抽象的に拡大したものではなく、学校と同等と認められる機関を指定しているなど厳格に適用されている。
また、教育に関する役務の提供の範囲についても、教育に関して幅広く認定するのではなく、授業料、入学金及び入園料、施設設備費、入学又は入園のための試験に係る検定料、在学証明、成績証明その他学生、生徒、児童又は幼児の記録に係る証明に係る手数料及びこれに類する手数料に限定しており、類するものや付属するものを含むとする規定は設けられていない。
そうであるとすると、学校教育に規定する学校を設置する者の教育役務提供であったとしても、当該学校における教育の範囲は厳しく限定的であり、その役務の提供は本来的な教育のみが該当するものと考えられることから、これらの教育に関して延長線上にある付属の教育役務の提供については、相当程度に密接なものだけが該当するものと考えられる。
(法令)
消費税法第6条(非課税)は、国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには消費税を課さない旨規定しており、別表一第11号は、次に掲げる教育に関する役務の提供(授業料、入学金、施設設備費その他の政令で定める料金を対価として行われる部分に限る。)を規定している。
次に掲げるものとして、
イ では、学校教育法に規定する学校を設置する者が当該学校における教育として行う役務の提供を、
口 では、学校教育法第124条(専修学校)に規定する専修学校を設置する者が当該専修学校の同法第125条第1項(課程)に規定する高等課程、専門課程又は一般課程における教育として行う役務の提供を、
ハ では、学校教育法第134条第1項(各種学校)に規定する各種学校を設置する者が当該各種学校における教育(修業期間が1年以上であることその他政令で定める要件に該当するものに限る。)として行う役務の提供を、
ニ ではイから八までに教育に関する役務の提供に類するものとして政令で定めるものを規定している。
消費税法施行令第14条の5 (教育に係る役務の提供の範囲)は、法別表第一第11号に規定する政令で定める料金は、次に掲げる料金とするとし、
第1号は、授業料を、
第2号は、入学金及び入園料を、
第3号は、施設設備費を、
第4号は、入学又は入園のための試験に係る検定料を、
第5号は、在学証明、成績証明その他学生、生徒、児童又は幼児の記録に係る証明に係る手数料及びこれに類する手数料を規定している。
消費税法施行令第15条(各種学校における教育に関する要件)は、法別表第一第11号ハに規定する政令で定める要件は、1年の授業時間数(普通科、専攻科その他これらに類する区別された課程がある場合には、それぞれの課程の授業時間数)が680時間以上であることその他財務省令で定める要件とする旨規定している。
消費税法施行令第16条(教育に関する役務の提供に類するものの範囲)は、法別表第一第11号に規定する政令で定めるものは、次に掲げる施設を設置する者が当該施設における教育(職業訓練を含み、修業期間が1年以上であること、普通課程、専門課程その他の課程のそれぞれの1年の授業時間数が680時間以上であることその他財務省令で定める要件に該当するものに限る。)として行う役務の提供とする旨規定している。
次に掲げるものとして、
第1号は、国立研究開発法人水産研究・教育機関法に規定する国立研究開発法人水産研究・教育機構の施設ほかを、
第2号は、職業能力開発促進法に規定する職業能力開発総合大学校ほかを規定している。
消費税法施行規則第4条(各種学校等における教育に関する要件)は、令第15条及び第16条に規定する財務省令で定める要件は、次に掲げる要件とし、
第1号は、施設(教員数を含む。)が同時に授業を受ける生徒数に比し十分であると認められること。
第2号は、授業が年2回(令第16条第1号に掲げる施設にあっては、年4回)を超えない一定の時期に開始され、かつ、その終期が明確に定められていること。
第3号は、生徒について学年又は学期ごとにわれ、その結果が成績考査に関する表簿その他書類に登録されていること。
生徒について所定の技術を修得したかどうかの成績の評価が行われ、その評価に基づいて卒業証書又は修了証書が授与されていることとする旨規定している。
(教育基本法についての考え方)
教育基本法第54条は、高等学校教育通一形態として、定時制教育とともに家庭の事情や経済上の理由などにより、働きながら学ぼうとする青少年に教育を受ける機会を保障するために認められたものであり、通学区域の制限を設けることは必ずしも必要がなく、学校経営上適切な規模に至るまで生徒数を確保するためには、都道府県の区域を越えて通信制教育課程を選択する生徒は、最近は、働きながら学ぶ生徒が減り、不登校や全日制の学校になじめなかった生徒も多くなっている。
通信制の課程で行う教育は、添削指導、面談指導及び試験の方法により行われるものとされており(高等学校通信教育課程2①)、通信制の課程を置く学校(実施校)の設置者は通信教育について協力する学校(協力校)を設けることができるが、実施校の設置者は、当該協力校の設置者が異なる場合には協力校の設置者の同意を得なければならない。(高等学校 通信教育課程3)
また、通信制の課程に関し必要な事項は、文部科学大臣の定めに委ねられているとして、施行規則第64条第1項で、通信制の課程の設備、編成その他に関し必要な事項は、高等学校通信教育課程の定めるところによると規定され、施設、設備及び編成に関する規定を除く運営については、高等学校設置基準によるところとなる。
添削指導は、各教科・科目ごとにおおむね1単位につき3回の標準が高等学校指導要領に定められており、面接指導は、生徒が学校に登校して、直接教師の指導を受けるとともに、集団の中で共同学習をする場を提供するもので、生徒の人間形成の面においても、なお、学校が、その指導計画の中にラジオ放送、テレビ 放送のほか、インターネットなどの多様なメディアを利用して行う学習を取り入れた場合には、生徒がこれらの方法により学習し、それに基づいてレポートを作成して提出し、学校がその成果を満足できるものと認めるときは、面接指導の時間数のうち、各メディアごとにそれぞれ10分の6(複数の場合は10分の8 )の範囲内で面接指導への出席を免除できることとなっている。
したがって、通信制教育課程において面接指導として、直接に学校に登校する必要性が減少しており、メディアの進化により、これと同程度の教育を行うことができるようになってきているため、学習センターへの登校は通信教育課程にとって必須ではない。
教育基本法第55条は、高等学校の定時制の課程又は通信制の課程に在学する生徒が、技能教育のための施設で当該施設の所在地の都道府県の教育委員会の指定するものにおいて教育を受けているときは、校長は、文部科学大臣の定めるところにより、当該施設における学習を当該高等学校における教科の一部の履修とみなすことができる旨規定している。
これは、教育基本法第51条の高校教育の目標の一つである「社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること」に基づき、定時制及び通信制の課程に在学する生徒に対する技能連携制度に関する規定である。
この趣旨は、職業訓練所や各種学校等の技能教育が充実したのを背景に、生徒の二重負担を軽減し、高等教育の機会を広げ、技能教育の能率と科学技術教育の振興にも資する目的がある。
つまり、通信制の教科の履修の特則は、複数の教育課程を受けることを避ける目的であることから、両方とも正規の教育課程である必要があり、単なる補習機関は含まれない。
なお、第58条の専攻及び別科についても同様の趣旨である。(新基本法コンメンタール教育関係法)
(最終的な考え方)
学校教育法に規定する学校を設置する者が、特区以外の施設で実施する特別指導を含む教育についても、学則にその旨が記載されており、当該特区以外の施設で実施する指導が学校教育であるか否かについては、制度所管省庁の判断に依拠するものであり、当該学校は、学則を特区が所在する市に毎年度提出し、審議会から、認定の継続の評価を受けているものである以上、当該学則に記載されている当該特区以外の施設で実施する指導も学校教育に当たると解すべきである。
したがって、当該学習センターで行う指導は消費税法非課税となる教育に当たる。
そうすると、学習センターで行われる指導が、明らかに教育から逸脱するものであっても、当該市が学校教育に当たらないと判断するまでは、学校教育に当たるものと解する。
つまり、教育であるかないかは、国税庁は判断しないということである。
以前、説明した優良宅地の該当性と同様に、該当するか否かは、所管省庁で行うものである。
仮装・隠蔽により、事実が異なっている場合でなければ、特に消費税は形式的に判断することとなる。実質的基準により判断しないのである。
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