第194号 独立企業間価格の意義(マナウス事件)
残余利益分割法
(東京高裁平成27年5月13日判決)
内国法人が、ブラジル国のアマゾン奥地辺境のマナウスという都市で子会社を設立し、オートバイの製造を行い、ブラジル国内サンパウロ等で販売していたところ、当局が、マナウス子会社が利益を生んでいるのは、内国法人の技術援助等によるものであるとして、移転価格税制によって課税したものである。
ブラジル国では消費税や関税、法人税等の形式上の税率が高いものの、マナウスで製造した場合には、低率になるなどの優遇措置があった。結果的にこの優遇措置相当額がマナウス子会社の利益の根源となっているのであるが、親会社からの技術役務の提供が確実にある場合、この利益はどちらの会社に属するものであるかが争われた事件である。
判決要旨
原処分庁が、適正な調整を行わずに独立企業間価格を算定したことは違法であるとして敗訴
争点1 残余利益分割法自体の適法性
残余利益分割法自体は、平成23年政令第199号による改正前から租税特別措置法施行令第39条の12第8項に規定されていたものと解されることから憲法84条租税法律主義に違反しないとされた。
争点2 独立企業間価格の算定単位
取引単位のことであるが、複数の取引が、その目的、取引内容、取引数量等からみて一体として行われている場合はーの単位とみて独立企業間価格を算定することに合理性があると示された。
争点3 基本的利益の算定の適法性(比較対象法人の選定の適切性)
基本的利益の算定をする場合、比較対象法人が事業活動を行う市場と検証対象法人が事業活動を行う市場とが類似するものである必要がある。したがって、政府の規制のある市場とない市場では比較可能性を有しない。つまり、原処分庁は、マナウスにおけるオートバイ製造業における同業他社がないことから、サンパウロにおける同業他社の利益と比較し、算定していた。
判決では、マナウス優遇措置は、それを享受する法人の営業利益に影響を及ぼす性質を有しているので、マナウスで事業活動を行っている法人とマナウス以外で事業活動を行っている法人では比較可能性がないとした。
原処分庁の考え方
恩典などは、マナウスのみにあるのではなく、どこにでも存在する。また、マナウスの優遇措置も逆にマナウスのデメリットがあることから、これをカバーするために設定されているものであり、優遇のみであれば、考えることなく、すべての企業がマナウスに移転することとなる。
たとえば、マナウスは、アマゾン奥地であることから、製品の発送に費用がかかること。治安が悪く、製品を盗まれてしまうことなどである。したがって、これらを総合勘案した結果、マナウスに子会社を設立したものであり、親会社からの技術役務の移転が生じているのは事実であり、かつ、高利益率となっているのも事実である。
そうすると、マナウスの優遇措置は、利益を構成する1要素に過ぎないこと、また、結果的に優遇措置相当額が超過利益となっていることとは無関係であり、優遇措置による利益を先取する理由はないこと、さらに、サンパウロのみから対象法人を選定したのではなく、ブラジル全土を対象としたところ、結果的にサンパウロの法人が選定されたのであることから、比較可能性は十分にあると考えた。
しかしながら、上記の反論は意見相当であり、合理性が認められないと判断されたものである。その結果、反論するための証拠を調査中に十分に収集する必要があることが教訓となった事件である。
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