第201号 租税回避行為シリーズ4(10年定年制)
10年定年制
退職金規程を改定し、10年ごとに定年として支払った金員は退職金となるか。
事件の概要
原告は、労使双方の合意により、勤続満10年定年制を実施することとした。10年ごとに退職し、健康状態等により勘案して、あらたに採用するというシステムである。被告税務署は、本件金員は給与所得に当たるとして源泉徴収納付に係る納税告知処分をしたものである。
第1審被告(税務署)の主張
退職所得であるためには、社会通念上の退職事実が存在することが必要である。10年定年制は名目的なものにすぎず、その後の勤務条件は何ら変化していない。退職の事実がない場合は、これに準ずる事実があった場合に認めているものである。制度として、中小企業退職金共済制度などが存在するにもかかわらず、原告は10年定年制度に固執しているだけである。さらに、原告の就業規則、退職金規程、給与規定等は内容や実施時期等に矛盾があり、退職所得性を認める根拠として合理性を欠く。
第1審原告(納税者)の主張
本件金員は、就業規則に基づき退職金として支払ったものである。また、所得税法上の退職所得は、退職時に支払われる給付のみが退職金ではなく、退職し、その後再雇用されたもの認めるべきである。就業規則では、10年で退職し、再雇用については個人の諾否の自由が認められている。
第1審判決
(大阪地裁昭和52年2月25日判決)
退職所得を給与所得と区分して特に優遇する措置が認められているのは、退職手当が、通常退職時に一時に支給されるものであり、その支給内容も通常在職年数に比例し、かつこれが失業手当ないし退職後の生活資金および在職期間の勤務に対する謝礼金的性質とともにその間の労働力提供の対価としての給与の一部後払い的性格を有するものであることである。
したがって、使用者から被用者に対して支給された金員が所得税法上の退職手当に該当するためには、原則として、それが被用者の退職、すなわち雇用契約の終了に伴い、退職者に支払われるものであることを要する。
しかしながら、被用者がいったん退職金名義の金員の支給を受けた後引き続き雇用関係を継続している場合であっても、退職金が支給されるに至った経緯など特段の事情があるときは、税法上の退職所得と認めるべき場合がある。
本件の10年定年制は、従業員の大半が再雇用されているが、再雇用に関しては、原告にその選択権がある。また、租税回避の目的で設定されたものではない。したがって、勤続満10年定年制に基づく退職は、その後の再雇用のいかんにかかわらず社会一般通年上も退職の性格を有するものと認めるのが相当である。
最高裁判決
(昭和58年12月6日第三小法廷判決)
第1審第2審判決では、退職の事実がなくても、再雇用になったとして考えることができるとしている。役職や給与の額についても、特に問題としていない。租税回避の目的ではないと判断しているが、詳細な理由は不明である。
特に、本件は、原告法人が会社更生法の手続開始の決定を受け、従業員の退職金を確保する必要があって労使で合意したという背景があり、10年定年制そのものが認められたとみることはできないと考えられていた。
原審の確定した事実関係からは、直ちに、本件係争の退職金名義の金員の支給を受けた従業員らが勤続満10年に達した時点で退職しその勤務関係が終了したものとみることはできないといわなければならない。
そうすると、本件金員は、名称はともかく、その実質は、勤務の継続中に受ける金員の性質を有するものというほかないのであって、所得税法第30条第1項にいう「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」にあたるための3つの要件のうち「退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること」という要件を欠くものといわなければならない。
「退職により一時に受ける給与」とみるためには、当該金員が定年延長又は退職年金制度の採用等の合理的な理由による退職金支給制度の実質的改変により清算の必要があって支給されるものであるとか、あるいは、当該勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別な事実関係があることを要すると解すべきである。
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