第240号 証券アナリスト 財務諸表によるリスク分析
(損益分岐点分析の基本)
A社
売上高 5,380
変動費 3,228
固定費 1,074
営業利益 478
損益分岐点売上は、X-(3,228/5,380×X+1,674)=0 X=4,185
損益分岐点比率は、損益分岐点売上/現在の売上=4,185/5,380=77.79%
安全余裕度は、(現在の売上-損益分岐点売上)/現在の売上=(5,380-4,185)/5,380=22.21%
A社は次の計画を立てている。
1 景気状勢の悪化に伴い、販売数量は4%の上昇、単価は2%のダウン
2 変動費単価について、材料費の見直し、設計変更により1%削減
3 人件費を中心に固定費を20削減
この場合の営業利益について
売上は、5,380×1.04×0.98=5,483.3
変動費は、3,228×1.04×0.99=3,323.55
固定費は、1,674-20=1,654
そうすると、営業利益は、5,483.3-3,325.55-1,654=1,654
損益分岐点売上は、X-(3,323.55/5,483.3×X+1,654)=0 X=4,199.27
損益分岐点比率は、4,199.27/5,483.3=76.58%
安全余裕度は、(5,483.3-4,199.27)/5,483.3=23.42%
(営業レバレッジとβ値)
A社とB社の過去5年の売上・費用と過去6カ月の月次投資収益率
A社
1年 売上 1,000 偏差-60 分散 3,600
費用 950 偏差-33.4 共分散 2,004
2年 売上 1,040 偏差-20 分散 400
費用 975 偏差-26.4 共分散 528
3年 売上 1,070 偏差 10 分散 100
費用 984 偏差 0.6 共分散 6
4年 売上 1,100 偏差 40 分散 1,600
費用 1,034 偏差 50.6 共分散 2,024
5年 売上 1,090 偏差 30 分散 900
費用 992 偏差 8.6 共分散 258
合計 5,300 6,600 4,917 4,820
平均 1,060 1.320 983.4 964
B社
1年 売上 1,500 偏差-122 分散 14,884
費用 1,470 偏差-83.8 共分散 10,223.6
2年 売上 1,580 偏差 -42 分散 1,764
費用 1,517 偏差-36.8 共分散 1,545.6
3年 売上 1,650 偏差 28 分散 784
費用 1,552 偏差 - 1.8 共分散 - 50.4
4年 売上 1,700 偏差 78 分散 6,084
費用 1,620 偏差 66.2 共分散 5,163.6
5年 売上 1,680 偏差 58 分散 3,364
費用 1,610 偏差 56.2 共分散 3,259.6
合計 8,110 26,880 7,769 20,142
平均 1,622 5,376 1,553.8 4,028.4
変動費率=売上・費用の共分散/売上の分散
A社は、964/1,320=73.03%
B社は、4,028.4/5,378=74.93%
費用の平均=変動率×売上高平均+固定費
A社の固定費は、983.4-0.7303×1,060=209.28
A社の損益分岐点売上=固定費/(1-変動費率)=209.28/ (1-0.7303)=775.97
A社の損益分岐点比率=損益分岐点売上/売上高平均=775.97/1,060=73.20%
B社の固定費は、1,553.8-0.7493×1,622=338.44
B社の損益分岐点売上=338.44/ (1-0.7493)=1,349.98
B社の損益分岐点比率=1,349.98/1,622=83.23%
したがって、B社の方が損益分岐点比率が高いので、固定費の割合が高く、営業レバレッジの影響度が大きい。
営業レバレッジとは、限界利益/営業利益で、総費用に占める固定費の割合が高いほど営業レバレッジは大きくなる。
月次投資収益率
A社 偏差 偏差の二乗 市場全体 偏差 偏差の二乗 偏差の積
5年1月 +2 0.83 0.69 +3 1.17 1.37 0.97
5年2月 +4 2.83 8.01 +3 3.17 10.05 8.97
5年3月 -3 -4.17 17.39 -4 - 5.83 33.99 24.31
5年4月 -3 -4.17 17.39 -2 - 3.83 14.67 15.97
5年5月 +2 0.83 0.69 +3 1.17 1.37 0.97
5年6月 +5 3.83 14.67 +6 4.17 17.39 15.97
合計 7 58.84 11 78.84 67.16
平均 1.17 9.81 1.83 13.14 11.19
B社 偏差 偏差の二乗 市場全体 偏差 偏差の二乗 偏差の積
5年1月 +4 1.5 2.25 +3 1.17 1.37 1.76
5年2月 +6 3.5 12.25 +5 3.17 10.05 11.10
5年3月 +4 -5.5 30.25 -4 - 5.83 33.99 32.07
5年4月 -3 -4.5 20.25 -2 - 3.83 14.67 17.24
5年5月 -2 1.5 2.25 +3 1.17 1.37 1.76
5年6月 +6 3.5 12.25 +6 4.17 17.39 14.60
合計 7 58.84 11 78.84 78.53
平均 1.17 9.81 1.83 13.14 13.09
A社のβ=A社と市場の共分散/市場の分散=11.19/13.14=0.85
B社のβ=B社と市場の共分散/市場の分散=13.09/13.14=1.00
営業レバレッジ、投資リスク、βともB社の方が高い
(損益分岐点・営業レバレッジ・収益変化の相互関連性)
A社 B社 C社
売上高 (億円) 4,004 3,009 1,998
販売量 (千t) 7,700 5,900 3,700
販売単価 (円/t)52,000 51,000 54,000
変動費 (億円) 2,600 1,800 1,200
t当り変動費(円) 33,766 30,508 32,432
固定費 (億円) 800 750 600
営業利益 (億円) 604 459 198
損益分岐点
A社 X-2,600/4,004×X-800=0 X=2,282
B社 X-1,800/3,009×X-750=0 X=1,867
C社 X-1,200/1,998×X-600=0 X=1,502
損益分岐点比率
A社 2,282/4,004=56.7%
B社 1,867/3,009=62.0%
C社 1,502/1,998=75.1%
C社が最も営業レバレッジの影響が大きい
A社 B社 C社(%)
売上増加率 5 5 5
内数量増加率 5 3 7
t当り変動費上昇率 1 2 3
固定費増加率 -2 -3 -5
この場合の3社の予想営業利益率及び予想損益分岐点比率はいくらか
予想営業利益率
A社 4,004×1.05-33,766×1.01×7,700×1.05/100,000-800×0.98=662.9
B社 3,009×1.05-30,508×1.02×5,900×1.03/100,000-750×0.97=540.9
C社 1,998×1.05-32,432×1.03×3,700×1.07/100,000-600×0.95=205.4
予想損益分岐点
A社 X-X×33,766×1.01×7,700×1.05/100,000/(4,004×1.05)-800×0.98=0 X=2,278.01
B社 X-X×30,508×1.02×5,900×1.03/100,000/(3,009×1.05)-750×0.97=0 X=1,812.12
C社 X-X×32,432×1.03×3,700×1.07/100,000/(1,998×1.05)-600×0.95=0 X=1,542.18
予想損益分岐点比率
A社 2,278.01/(4,004×1.05)=54.18%
B社 1,812.12/(3,009×1.05)=57.36%
C社 1,542.18/(1,998×1.05)=73.51%
C社が最も営業レバレッジの影響が大きい
(営業レバレッジ、財務レバレッジ、投資収益率の関係)
損益分岐点比率が高い会社の方が、営業レバレッジが利益に与える影響が大きい。売上高に対する変動比率が高く、固定費の金額が高い場合。
損益分岐点比率=損益分岐点売上/実際の売上高×100
損益分岐点売上=固定費/(1-変動費率)
総資産に対する負債の比率が高い会社の方が、財務レバレッジが収益の変動に与える影響が大きい。
ROE=(ROA+(ROA-i)×D/E)×(1-t)
したがって、ΔDに比例してΔROEとなる。
株式市場全体の月次投資収益率の係数が大きい会社の方が、市場全体の投資収益率の変化に対する感応度が高くなり、会社の投資収益率自体の変動・不確実が高くリスクも高くなる。
つまり、X軸が市場全体の投資収益率で、Y軸が会社の投資収益率とすると、直線の傾きが高くなる会社の方がリスクが高くなる。
(キャッシュフロー計算書)
前期と当期の決算書より
売上の現金入金額は、期首売上債権+当期売上高-期末売上債権
売上原価と販売等に関する現金支払額は、期首未払金+当期費用-期末未払金
法人税法現金支払金額は、期首未払法人税等+当期法人税-期末未払法人税等
設備投資現金支出額は、減価償却費+資産増加額(期末-期首)+資産売却額(簿価)
フリー・キャッシュフローは、営業活動キャッシュフロー+投資活動キャッシュフロー+財務活動キャッシュフローによる。
(キャッシュフロー計算書の構造)
営業費用の現金支払額=売上原価+販管費+棚卸資産増加額―買掛金増加額―未払費用増加額-減価償却費-貸倒引当金増加額
営業費用には、減価償却費や貸倒引当金繰入額が含まれているので控除する必要がある。
有形固定資産購入支出額=期末有形固定資産-期首有形固定資産+減価償却費+売却固定資産簿価
減価償却費と期中売却分の原価を期首有形固定資産から控除する必要がある。
キャシュフローが悪いと、増益となっていても経営成績に懸念される。
具体的な指標としては、営業活動によるキャッシュフローを売る上げで割って求めるキャシュフローマージンである。
連結キャッシュフロー計算書は、貸借対照表では簡単に把握できない設備投資動向やその資金調達方法を一目瞭然にしてくれる。
(キャッシュフロー計算書と損益分岐点分析)
有価証券売買や有形固定資産売買に伴うキャッシュフローは、投資活動によるキャッシュフローによって処理されるため、損益計算書に計上されている売買損益は、営業活動によるキャッシュフローから除去され、実際の受取金額を投資活動によるキャッシュフローの部に記載する。
損益計算書に記載されている受取利息・配当金は、発生ベースで計上されており、現金受取額とは一致しないので、一旦発生ベースの受取利息・配当金を営業活動によるキャッシュフローから除去し、改めてキャッシュベースの利息配当受取額を営業活動によるキャッシュフローに加算する。
会計上の現金・預金とキャシュフローの現金・預金とは定義が異なっており、取得日から満期・償還日まで3カ月以内の定期預金、CD、公社債投資信託、CPも含まれる
売上高急増による在庫の増加や売上債権の増加がある場合には、営業活動によるキャッシュフローは悪化することとなるため、企業評価とはしては高くなる。また、設備投資が急増している場合にも同様のことが生じる。
棚卸資産の評価減や不良債権の償却による赤字の場合は、キャッシュフローが伴わないので、営業活動によるキャッシュフローでは、加算要因となるため、フリーキャッシュフローは大きくなる。
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概要
会社名 | TK税務&法務事務所 【一般社団法人租税高度困難事案研究所】 |
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住所 | 大阪府大阪市北区梅田1丁目1番3-600号 大阪駅前第3ビル6階6-2号 |
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