TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

205号 租税回避行為シリーズ8  ゴルフ会員権(右山事件)

事実の概要

請求人は、父親からゴルフ会員権の贈与を受け、その名義書換料を支払い、ゴルフクラブの正会員になった。請求人は、本件ゴルフ会員権を譲渡し、譲渡所得の計算にあたり、父の取得価額と本件名義書換料を加算した金額取得費として申告したところ、本件名義書換料は、長期譲渡所得の総収入金額から控除できないとして更正処分を受けた。つまり、名義変更料が取得価額に算入されるか否かが争われているのであり、取得価額の引継ぎを争っているのではない。

 

 

第1審判決(藤山判決)(東京地裁平成12年12月21日判決)

所得税法が、贈与による資産の所有権移転の場合における譲渡所得課税を繰り延べ、その後、当該資産が受増者の支配を離れて他に移転する機会をとらえて、贈与者の贈与者の取得の時以来清算されることなく蓄積されてきた資産の増加益の課税の対象としているのであるから、右増加益の算出上、譲渡による収入金額から控除すべき資産の取得に要した金額は、贈与者の取得の時において当該資産の客観的価格を構成すべき当該取得代金の額及び当該資産を取得するための付随費用でなければならない、

 

 

すなわち、所得税法60条により、贈与の前後を通じて贈与者が引き続き当該資産を所有していたものとみなされる以上、譲渡所得の算出にあたっては、贈与の事実はなかったものと考えるべきであり、そうである以上、受贈者が自己への所有権移転のために支払った費用も一切無視するほかないのである。

 

とし、本件名義書換料は、贈与者である父による本件会員権の取得の時期において、本件会員権の客観的価格を構成するものではなく、父が本件会員権を取得するための付随費用でもないから、本件会員権との関係で、所得税法38条1項にいう資産の取得に要した費用ということはできないと判示した。

 

 

控訴審も同様

最高裁判決(平成17年2月1日判決)

法60条1項の規定の本旨は、増加益に対する課税の繰延べにあるから、この規定は、受贈者の譲渡所得の金額の計算において、受贈者の資産保有期間に係る増加益に合わせたものを超えて所得と把握することを予定していないというべきである。そして、受贈者が贈与者から資産を取得するための付随費用の額は、受贈者の資産の保有期間係る増加益の計算において、資産の取得に要した金額として総収入金額から控除されるべき性質のものである。

 

 

そうすると、上記付随費用の額は、法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額において、資産の取得に要した金額に当たると解すべきである。 つまり、贈与の前後の増加損益を通算するのか、なかったものとするのかの違いか。

 

 

法令 所得税法60条第1項

居住者が次に掲げる事由により取得した前条第1項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。

 

ー 贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)

二 前条第2項の規定に該当する譲渡

 

第2項

居住者が前条第1項第1号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

 

検討

所得税60条が、贈与がなかったものとみなす規定であることを厳格に理解する。なお、ゴルフ会員権がバブル崩壊後の急速な値下がり傾向の中にあり、贈与時の時価が仮に贈与税の基礎控除額の110万円であると仮定すると、受贈者は贈与税をまったく負担することなく、贈与者から1090万円の損失を引き継ぎ、これに名義書換料の80万円までも取得費として加算され、後に時価がさらに下落した段階で自らの所得の多寡に応じて第三者に適正時価で譲渡すれば、受贈者の租税を減少させるために適法に贈与者の損失の引継ぎが完了することになる。資産取得のための出費とその取得との間に相当因果関係基準を採用している。

 

 

当該取得のための支出の必要性の度合いと、当該出費額を取得金額から控除するこのとの租税負担の合理性・衡平性が必要である。

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