第229号 証券アナリスト デリバティブと投資戦略
(株式オプション)
C=P+S-K/(1+r)T
Cはコール・オプション価格
Pはプット・オプション価格
Sは原資産価格、Kは行使価格
rは金利、Tは時間
そうすると、アット・ザ・マネーの場合、S=Kとなり、C>Pとなる。
アット・ザ・マネーの場合、ヨーロピアン型の場合、タイムバリューは、満期日以前では、常に正である。つまり、コール・オプションのプレミアムは、満期日以前では常に本源的価値を上回っていることになる。権利行使せずにオプションのまま転売した方が有利である。
アメリカン型の場合でも、コール・オプションの理論価格は、本源的価値を上回るため、権利行使されることはない。したがって、権利行使が可能なアメリカン型オプションは、その分ヨーロピアン型オプションより価値が高いと考えるが、コール・オプションでは、権利行使をおこなわない方が有利という結果から、アメリカン型コール・オプションとヨーロピアン型コール・オプションの価値は等しくなる。
権利行使期間中に配当の支払いがある場合、アメリカンの場合であっても配当落ちによってコール・オプションの理論価格は、配当分だけ本源的価値を下回ることがあるため、配当支払前に権利行使するほうが有利である。
配当落ちがある場合、原資産価格が下がる分、コール・オプションの価値には不利に働く。つまり、ヨーロピアンの場合には、本源的価値を下回る可能性がある。
上記の式から、プット・コール・パリティは、C-P=S-Ke-rtとなる。
(先物とオプションによる株式ポートフォリオのヘッジ)
A社は、時価総額10億円の株式ポートフォリオを運用している。日経平均に対するベータ値は、1.5であり、十分に分散投資されている。現在の日経平均が15,000円で、1年物の安全資産の利子率は2%である。
ここで、株式ポートフォリオを日経平均先物でヘッジするとき、何枚の先物を売却すればよいか。日経平均の先物の売買単位は、先物価格×1000円である。
10億円×ベータ1.5/(15000×1.02×1000)=98枚の先物を売却してヘッジすることとなる。つまり、金利相当分の売却枚数が少なくなっていることになる。
プットでヘッジする場合は、Vp=V×(1+rp)
rp=rf+βp(rm-rf) rm=(S-15000)/15000 Sは、1年後の日経平均 代入すると
Vp=10億円×(1+0.02+1.5×((S-15000)/15000-0.02))
Vp=100,000×S-510,000,000
Vh=Vp+x×m×(K-St)
代入すると Vh=100,000St-510,000,000+x×1,000×(K-St)
Kは行使価格
Vh=(100,000-x×1,000)St-510,000,000+x×1,000×K
そうすると、100,000-x×1,000=0 だから xは100枚
x×1,000×K-510,000,000=10億円 だから K=15,100円
したがって、権利行使価格15,100円のプットを100枚購入することによりヘッジする。そうすると、権利行使価格15,100円のプレミアムが1,200円であるとすると、ヘッジコストは、1,200×100×1,000=120,000,000円となる。
実際には残存1年のプット・オプションは十分な流動性がなく、プロテクティブ・プットによるヘッジは現実的ではないため、先物を使って同様の効果を狙うこととした。
プットでヘッジした場合 Vh=Vp+Np×P Npはプットの枚数(100枚)
先物でヘッジした場合 Vh=Vp+Nf×F Nfは先物の枚数(算出する)
プットでヘッジしたヘッジ・ポートフォリオの日経平均の変動に対する反応度は、これらをSで微分して、
ΔVh/ΔS=ΔVp/ΔS+Np×ΔP/ΔS
同様に先物でヘッジすれば、
ΔVh/ΔS=ΔVp/ΔS+Nf×ΔF/ΔS
そうすると、Np×ΔP/ΔS=Nf×ΔF/ΔS となり、
Nf=(Np×ΔP/ΔS)/(ΔF/ΔS)
権利行使価格15,100円のオプションのデルタは-0.46とすると
数字を代入すると、
Nf=100枚×(-0.46)/1.02=45
先物は45枚を売り建てることとなる。
ここで、先物を使ったヘッジをかけた直後に、日経平均が15,100円に上昇した場合、次にどのような対応をすればよいか。
なお、権利行使価格15,100円のΔは-0.408となった。
日経平均の上昇によるヘッジの必要枚数は、
x=100枚×(-0.408)/1.02=-40なので
先物を5枚買い戻すこととなる。
(株価指数先物とオプションによるアービトラージ)
日経平均株価指数が、15,000円、満期まで2月の日経平均先物は、15,100円 満期まで2月のアット・ザ・マネーの日経平均コール・オプションの価格が525円 プット・オプションの価格が560円、2月もの金利は、0.6%であるとする。
日経平均先物と現物の間でどのような裁定取引を行って利益をだすことができるか。
今、日経平均先物が金利から見て高くなっているようなので、日経平均先物を売って、同時に借入を行って現物を買う。そうすると、2月後の満期日に先物を決済し、現物は、時価で売却し、同時に借入金を返済する。
具体的に、理論上の日経平均先物価格=S×(1+r×2/12)
代入すると、15,000×(1.006×2/12)=15,015円となる。
裁定利益は=先物決済損益+現物利益-キャリング・コスト(利息)=(15,100-St)+(St-15,000)-15,000×0.006×2/12=100-15=85円
つまり、2月後の日経平均現物価格であるStが上昇しても下落しても影響されないことがわかる。結局、裁定利益は、現実の日経平均先物価格15,100円と理論値15.015円との差額である。
日経平均オプションと現物の間はどうか
プット・コール・パリティからみて、コール・オプションの価格が安い、又は、プット・オプションの価格が高いように見えるので、プット・オプションを売り、コール・オプションを買う。日経平均現物を売って、その売却代金を資金運用する。
具体的に、理論上のコール・オプションの価格は、C=S+P-K/(1+r×2/12)なので、代入するとC=15,000+560-15,000/(1+0.006×2/12)=575円
行使価格と現在の価格が同じであれば、つまり、アット・ザ・マネーであれば行使価格の金利相当分だけコール・オプションの方がプット・オプションよりも高くなるはずである。したがって、プット・オプションが高いともいえる。
P=C-S+K/(1+r×2/12) 代入すると、P=525円―15,000+15,000/(1+0.006×2/12) =510円
どちらにしても、プット・オプションを売り、コール・オプションを買い、日経平均現物を売って、その売却代金を資金運用することとなる。
その結果、15,000+560-525-15,000/1.001=50円
ここでも、プット・オプションを売って、コール・オプションを買っているのは、現物を買っているのと同じことなので、同時に現物を売っているから、2月後の日経平均現物価格であるStが上昇しても下落しても影響されないことがわかる。
したがって、プット・オプション価格には運用益が含まれているから、実際のプット・コール・パリティと理論値のプット・コール・パリティの差額と運用益が裁定利益となる。
実際には、日経平均現物を売買することは難しい。したがって、先物とオプションだけで裁定取引することが得策だと判断される。そのためには、今どのような取引を行えばいいか。
結局は、日経平均先物を売却し、コール・オプションを買い、プット・オプションを売ることである。
具体的に、この取引に日経平均現物を介したと考える。
(先物売り+現物買い)+(コール買い+現物売り+プット売り)
上記のとおり、コールの買いとプットの売りは、現物の買いと同じことなので、
先物を売り、現物を買っているのと同じこととなる。
そして、ここで、先物と現物との実際と理論値との差とプット・コール・パリティの差額が裁定利益となる。裁定利益=(P-C)+(F-K)
ここで、代入すると、=(プット売り560円-コール買い525円)+(先物売り15,100円-現物15,000円)=135円となる。=これは上記の85円と50円の合計である。
(株式ポートフォリオのダイナミック・ヘッジング)
日経平均株価12,000円、短期金利1.2% 日経平均オプション行使価格11,500円プット価格115円と12,500円プット価格616円のプット・オプションを売った。このポジションをヘッジするため、アット・ザ・マネーのプット・オプション(12,000円プット価格303円)を2枚購入した。(ロング・ストラドル戦)満期日におけるポジションの損失はいくらか。
行使価格11,500円のプットの売りと12,500円のプットの売りに対して1枚ずつ12,000のプットの買いを対応させると、11,500円より安いときは、プットの売りと買いで相殺され、12,500円より高いときは、誰も行使しないこととなる。
そうすると、これらの場合はオプション料の支払いが、303円×2枚で606円、受取が115円と616円の731円で差し引き125円も利益となる。
しかしながら、11,500円より高くなると、売りオプションが1枚のみ行使されることとなる、当方の行使利益が縮小していき、12,000円のとき当方の行使利益がなくなり、行使されると最大500円の損失となり、オプション料との差し引き375円の損失となる。
そして、12,000円より高くなると、相手の行使利益も縮小していき、12,500円になると誰も行使しなくなり、オプション料の差額が利益となる。
次に、上記の方法にかえて、日経平均先物を使ったポジションをデルタ・ニュートラルにする。これは、先物でヘッジしたポートフォリオの価値Vh=-P1-P2+x×Fとなる。
原資産である日経平均株価の変化によるヘッジ・ポートフォリオの変化は、
ΔVh/ΔS=-(-ΔP11,500/ΔS)+(-ΔP12,500/ΔS)+(X×ΔF/ΔS)
行使価格11,500円のコールのデルタ値が0.7574で、行使価格12,500円のコールのデルタ値が0.2790とすると、代入して、
ΔVh/ΔS=(1-0.7574)+ (1-0.2790)+X ΔF/ΔS=1
ΔVh/ΔSはデルタ・ニュートラルで0となる。
したがって、x=-0.96
日経平均先物を0.96枚売却することとなる。
なお、プット・コール・パリティからΔC/ΔS=1-ΔP/ΔS
次に、デルタ・ヘッジを行った直後に、日経平均が11,500円まで下落した。原資産価格の下落は、行使価格の上昇と同じ影響であるので、コール・オプションの価格は下落する。したがって、原資産の価格が下落したことにより、行使価格11,500円のコールの価格は下がり、デルタ値が0.5032と下がった。また、行使価格12,500円のコールの価格も下がり、デルタ値が0.1078と下がった。したがって、プットの価格は上昇し、プットのデルタ(絶対値)も上昇した。(プットのデルタはつねにマイナスなので)
ΔC/ΔS=1+ΔP/ΔS
つまり、コール・デルタ=1+プット・デルタ
日経平均先物についてどのような取引をすべきか。
デルタ・ニュートラル・ポジションを維持するためには、プット・オプションのデルタ上昇したことから、先物も増やすこととなる。
具体的に、数値を代入すると、
(1-0.5032)+(1-0.1078)+x=0となり、
x=-1.39となるため、0.96枚売っているので、さらに、日経平均先物を0.43枚売り増すこととなる。
ここで、その後1月にわたり、先物を使ったダイナミック・デルタ・ヘッジを続けたところ、日経平均株価は下降トレンドをたどりながら、激しき乱高下した。ボラティリティは想定された水準を大きく上回った。さらに、満期日の日経平均株価は12,000円を大きく下回った。このような場合、売買手数料等の取引コストを考慮すると先物を使ったヘッジは、オプションを使った場合と比較してどのような結果となるか。
下降相場であるため、先物を使ったヘッジでは、先物を継続的に売り増ししなければならないため、その都度取引コストがかかり、オプションによるヘッジより非効率である。なお、プット・オプションの買いによるヘッジでは、下降相場、上昇相場ともに1回の取引コストだけで済み、しかも取引時にプレミアム収入がある。つまり、ロング・ストラドル戦略を行ったことにより、変動が大きかった場合は、(115円+616円-2×303)×1,000円のプレミアム収入となる。なお、変動がなかった場合は、375,000円の損失となっている。
(日経平均リンク債)
X社は、クーポンレート1%、残存期間1年の国債で資金運用している。ここで、高利回りを狙って、日経平均株価連動債利回り2%の運用を考えている。この債券の元本償還額は、1年後の日経平均が15,000円以上であれば額面当たり100円である。日経平均が15,000円を割り込むと償還額は日経平均に比例して減少し、日経平均が12,000円で80円、ゼロになると、償還額もゼロになる。
X社の担当者は、現在の日経平均の水準(20,000円)から考えて、1年後に15,000円を割り込む可能性は小さいと考えたが、この商品を1年物国債の買いポジションとある種のオプションの特定のポジションの組み合わせであると考えた。
したがって、この債券は、1年物国債と日経平均プット・オプションを売っていることになるので、これに対するヘッジを行うには、期間1年行使価格15,000円の日経平均プット・オプションを買えばいい。1年物国債の額面が100円であるとすると、オプションは1/150となる。
そうすると、国債のクーポン収入1%、プット・オプションの売りのプレミアムが434.03円であるとすると、この債券の理論上の利回りは、国債の利回り+1年後のプット・オプションのプレミアムとなり、1%+1/150×434.03×1.01=3.92%となるので、2%の利回りでは低すぎることとなる。
ダイナミック・ヘッジングを用いてこの商品のペイオフを複製することができる。現時点で日経平均インデックスに対して、どのような取引を行えばいいか。
合成ポートフォリオの価値をVとすると、日経平均の変化に対して、ポートフォリの価値の変化は、V=1年もの国債B-日経平均プット・オプションP/150となり、原資産価格の変化で微分すると、ΔV/ΔS=-1/150×ΔP/ΔSで、ブラック・ショールズ式を利用して、=N(-d1)/150 分子はプットのデルタ×-1 したがって、日経平均現物(インデックス・ファンド)を20,000×N(-d1)/150だけ買えば、プットオプションを売るのと同様の効果を得ることができる。
ただし、1 日経平均現物バスケットの取引が容易でないこと、2 日経平均現物あるいは日経平均先物の取引単位を一致させることは難しいこと、3 日経平均現物あるいは日経平均先物の取引には取引コストや税金が発生すること 4 日経平均の変動により、プット・オプションのデルタも変化するため、ガンマ・リスクを考慮しなければならないことがある。
(株式デリバティブの合成戦略)
行使価格10,000円のプット・オプションが160円を購入し、行使価格10,500円のプット・オプションが330円を売却したとき、損益がゼロとなる日経平均はいくらか。
合成戦略の損益=Max(10,000-S、0)-Max(10,500-S、0)+(-160+330)
Max(10,000-S、0)-Max(10,500-S、0)=-170
Max(10,000-S、0)はプラスなので、ここではゼロとなる。
そうすると、Max(10,500-S、0)=170
S=10,330 のときに、合成戦略の損益はゼロとなる。
次に、日経平均先物が10,740円を購入し、行使価格12,000円のコール・オプション85円を売却した場合(カバード・コール・ライト)の最大の利益はいくらか。
これは、12,000円以上になった場合の先物利益とコール・オプションの売りによる損失が相殺され、12,000円以下となった場合の損失がオプション・プレミアムだけ控除されることとなり、結局、プット・オプションを売ったのと同様になっている。
合成戦略の損益=(S-10,740)-Max(S-12,000、0)+85=12,000-10,740+85=1,345円が利益の上限となる。
ロング・ストラドル戦略またはロング・ストラングル戦略を採用する場合、これらは、日経平均のボラティリティの上昇によって利益が得られると期待される戦略である。この場合の合成戦略の損益は、Max(日経平均株価-コールの行使価格、0)+Max(プットの行使価格-日経平均株価、0)+(コールのプレミアム+プットのプレミアム)となる。
そうすると、最大の損失は、Max(日経平均株価-コールの行使価格、0)がゼロとなり、Max(プットの行使価格-日経平均株価、0)もゼロとなる場合で、コールとプットのプレミアムの合計が最大の損失となる。
この場合、ストラングルは、ストラドルに比べてボラタリティの変動を大きくとっているので、少し程度の変動では、利益が出ないこととなっている。つまり、ストラドル戦略は少しでもボラタリティが変動すれば利益が出る戦略なので、オプションを行使せずに満期を迎える場合は、ストラドル戦略の方が支払うオプション・プレミアムは高くなる。
(債券先物取引)
現在、長期国債先物の受渡決済日の3月前であり、受渡適格銘柄Aは、受渡日の残存年数が8年、クーポン4%、価格101.00円、交換係数は、0.87439である。債券の利払いは、先物の清算直後に行われ、利払い回数は年2回である。短期金利は2%である。銘柄Aの先渡価格はいくらか。
先渡価格=(現在の価格+受渡日までのクーポンの利息)×(1+受渡日までの短期金利の利息)-利払日までのクーポンの利息 そうすると、(101.00+4×3/12)×(1+0.02×3/12)-4×6/12となり、100.51円となる。
最割安銘柄は、売り手の利益を最大にする銘柄である。あるいは売り手の買入れコストを最小にとする銘柄といえる。いまFを取引最終日の標準物の先物価格(最終清算値段) Cfを銘柄の変換係数、Bを銘柄の先渡価格とするとき、先物を売却して、現物債券を購入するとき、利益πはCf×F-Bで表せる。
ここで、Cf×Fは先物の受渡決済額であり、Bは受渡に使用する現物債の購入コストである。これが最大の値を取り銘柄が最割安銘柄となる。Cf×F-Bは、Cf×(F-B/Cf)となり、先物理論価格は、F=B/Cfとなる。
ここで、代入すると、先物理論価格=100.51/0.87439=114.95円となる。
多数の銘柄があるとき、変換係数は利回りが6%のき、それぞれの銘柄の現在価値が標準物に一致するように決められるため、利回りが6%より低いときはデュレーションが小さい(残存期間が短くてクーポンレートが高い)銘柄が割安になり、利回りが6%より高いときは、デュレーションが長い(残存期間が長く、クーポンレートが低い)銘柄が割安になる。
実際の先物価格が最割安銘柄を基準にして求めた理論価格から乖離する度合いが大きくなるのはどういう場合か。
先物価格が理論価格を下回る度合いが大きいのは、最割安銘柄が変化する可能性が大きいい場合であり、それは金利が6%近辺にあって、かつ金利のボラティリティが大きい時である。
(外貨建て資産のヘッジ)
現在1ドル=100円、いま1億円を米国債に3年間投資し、ドルベースで年率4%の利回りが確定しているとする。為替は今後円安に向かうと予想される。予想に反して円高になった場合には、円ベースで元本を確保するために、通貨オプションで為替をヘッジしようと考えている。ヘッジポートフォリオの価値Vh=ドル資産の3年後の円ベースの価値V+取引額(ドル)x×取引単位m×ドル・プットP となる。
V=1億円/100円×1.043×3年後のドル・円レートSt
PはMax(K―St、0)Kは行使価格である。
ここで、スポットレートが行使価格を下回ったとき(予想に反して円高になった場合)に円ベースの資産額が1億円を下回らないようにするためには、
1億円=V+x×m×(K-St)となる。
これを変形すると、億円=1億円/100円×1.043×St+x×m×(K-St) =(1億円/100円×1.043-x×m)×St+x×m×K
スポットレートStにかかわらず、資産価値が影響を受けないようにするための取引額は、1億円/100円×1.043-x×m=0で、m=1とすると、x=1,124,864ドルとなる。一億円に対して1.12%の取引コスト 行使価格は、1億円=x×m×Kで、代入すると、m=1なので、K=1億円/(1億円/100円×1.043)=100/1.043=88.90円/ドルとなる。
オプションの代わりに、通貨先物(ドル)でダイナミック・ヘッジを行う場合、ドル先物をどれだけ取引すればいいか。
行使価格88.90円のプット・オプションのデルタ値が-0.12とすると、オプション取引額1,124,864×デルタ値-0.12=-134,983.68ドル分の先物を売却する必要がある。
ダイナミック・ヘッジ後、予想に反してやはり円高が進行した場合、ドル先物のポジションをどのように調整すればよいか。
つまり、円高となったので、そして、プットのデルタは、絶対値が大きくなる。(マイナスが大きくなる)したがって、先物の売却を増やす必要がある。
つまり、円高が進行すると、満期時の回収金額が低下する。そして、1ドル100円の時に120円で売る権利は、1ドル80円の時に120円で売る権利の方より利益がでるので、オプション料は高くなる。そのため、原資産の価格が下落したので、デルタ(変化率)は大きくなる。
次に、A社では、米債の投資社債として、額面100ドル、クーポン5.5%、残存年数10年、価格100.00ドル、格付AA格のコーラブル債を1億ドルの購入を選んだ。その金利変動リスクをヘッジするために10年物の米国国債先物を利用することとした。この先物は現在、123.35ドル(額面100ドル、利回り5.0%、取引単位10万ドル)である。
この社債の修正デュレーションは7年、米国国債先物の修正デュレーションは9.5年である。残存期間が同じであるにも関わらず、社債のデュレーションが短いのは、コーラブル債であり、今後、金利低下局面では繰上げ償還される可能性があるから、平均回収期間としてのデュレーションは普通債や先物よりも小さくなる。
この社債を、米国国債先物を使ってヘッジしようと考えている。先物をどのように取引すればよいか。
これは、先物を利用したデュレーション・ヘッジであり、現物に対するヘッジは、先物を売ることであるから、この取引では、ヘッジ比率だけ先物を売ることとなる。
ヘッジ比率は、債券先物価格Fに先物の満期時の修正デュレーションDfを乗じたものに対する、債券ポートフォリオの価値Vに先物の満期時における修正デュレーションDpを乗じたものの割合である。
ヘッジ比率=(V×Dp)/(F×Df)
デュレーション・ヘッジ
債券ポートフォリオの価値をV、先物の満期時における修正デュレーションをDpとすると、利回りの変化Δrに対するポートフォリオの変化は、ΔV/Δr=-Dp×V となる。
同様に、債券先物価格をFとし、先物の満期時における修正デュレーションをDfとすると、債券先物の価格変化は ΔF/Δr=-Df×Fとなる。そうすると
ΔV/ΔF=(Dp×V)/(Df×F)となる。
ΔV-ヘッジ比率×ΔF=0
代入すると、(1億ドル×(100ドル/100ドル)×7年)/(123.35ドル/100ドル)×10万ドル×9.5年=597枚の先物を売ることである。
さらに、この社債に1億ドル、3年間投資して、今後金利が変動しても、3年後のドルベースの金額をほぼ確定するようにしたいために、米国国債先物を何単位取引すればよいか。
投資期間3年のイミュニゼーション戦略を行う。つまり、ポートフォリオの金額デュレーションを3×100万ドルになるように先物を売ることとなる。
7年×1億ドル+9.5年×(123.35/100ドル×10,000ドル)×n=3×1億ドル n=-341 つまり、米国国債先物を341単位売却することとなる。
米国の金利が低下したとき、米国国債先物のポジションをどのように変えればよいか。
金利が低下すると社債がコールされ償還される可能性が高くなり、デュレーションが小さくなるため、全体のデュレーションを3年に保つには、先物を一部買い戻す必要がある。
現物に対しては先物を売ることであるから、償還され現物がなくなると、先物の売りは不要であるから買い戻して、ショート・ポジションを少しロング側に変更することとなる。
しかしながら、上記のような社債と米国国債先物修正デュレーションに基づいたヘッジは必ずしも有効とはいえない。それは、他にどのようなリスクがあるか。
社債の信用リスクの評価が変わって米国国債とのスプレッドが拡大するリスクや金利の変動(ボラティリティ)が大きくなった場合、コールの価値が増加し、社債価格が下落するリスクがある。
(金利スワップ)
A銀行は、残存20年、クーポンレート5.5%のノン・コーラブル債を額面10億円保有する一方で、預金者に対して、3年満期の変動金利支払い債務がある。なお、預金金利は1年物LIBOR-1%で支払われる。一方、S商事は、1年物LIBORで支払われる変動利付債を保有しているが、変動金利による受取を年5.5%に固定化することを望んでいる。
今、A銀行とS商事は、想定元本10億円、期間3年のプレーン・バニラ・タイプの金利スワップ契約を決めた。現在、LIBORが3%である。S商事は、金利環境は今後低下すると予測している。A銀行は、ノン・コーラブル債から固定5.5%受取、預金者へ変動LIBOR-1%支払、スワップで、変動LIBOR%受取、固定5.5%支払 差し引き1%の受取となる。(金利スプレッド)
S商事は、変動LIBOR%の受取、スワップで固定5.5%の受取
次に、スポットレートとフォワード・レートと割引係数の数値が与えられた場合の期間2年の金利スワップの変動金利部分(6月レート)の現在価値の求め方は、まず0.5年分を求める スポット・レート6月分×割引係数
次に1.0年分を求める フォワード・レート(6月分)×割引係数
同様に1.5年分2.0年分を求めて合計することとなる。
金利スワップにおける変動金利側のキャッシュ・フローは、FRAの集合体と考えることができる。そのため、変動金利側の現在価値を求めるには、想定元本100円当たりの半年ごとに受け取る金利に、各期間の割引係数を掛ければいい
たとえば、半年後のフォワード・レートは、現在の半年物スポット・レートと1年物スポット・レートから計算される。
(1+1年物スポット・レート)2=(1+0.5年ものスポット・レート)×(1+半年後のフォワード・レート)である。
そうすると、これらの金利の現在価値を求める場合は、これらのフォワード・レートに割引係数(ディスカウント・ファクター)を乗じたものの合計となる。
そこで、この金利スワップ・レートは固定金利に変換するといくらの利率となるのかを計算すると、固定金利の現在価値と変動金利の現在価値が等しいことから、この固定金利をFとすると F/2年×(割引係数の合計)=変動金利の現在価値となる。
そうすると、今後2年間、現時点で求められたフォワード・レートが確実に実現するとした場合、約定した2年もの金利スワップの現在価値(固定金利側-変動金利側)は、どのように変化するか。
金利環境が想定したとおりであれば、すでに受け払いを行った金利及びその再投資金利を加えた両サイドの現在価値は等価であり、金利スワップの価値はゼロとなる。これは、現在価値を求める際に用いる再投資利回りが等しいためである。
(コーラブル債の複製)
A社では、米国企業が発行した米ドル建てのコーラブル債を保有している。この米国企業では、コーラブル債と同じ発行条件のノン・コーラブル債を発行している。コーラブル債は、残存期間10年、クーポンレート8%、額面100ドル、市場価格100ドル、コール条件、5年後100ドルである。ノン・コーラブル債は、残存期間10年、クーポンレート8%、額面100ドル、市場価格100.5ドルである。ノン・コーラブル債と同社債を原資産とする債券オプションの組み合わせで、コーラブル債を合成するには、5年後に満期5年、行使価格100ドルの債券を買う権利を行使できるヨーロピアン型コール・オプションを売ることになる。
つまり、オプション料だけ、ノン・コーラブル債よりも市場価格は低くなっている。コーラブル債の買い手は、5年後に権利行使をできる債券オプション(5年満期、行使価格100ドルのコール・オプション)を発行者に売ったこととなる。
次に、ノン・コーラブル債とスワップションあるいは金利オプション(キャップ、フロアー)を組み合わせてコーラブル債を合成するには、5年後スタート・期間5年・レート8%のヨーロピアン型レーシーバーズ・スワップションを売ることである。想定元本はコーラブル債の額面である。
5年後スタート、期間5年のヨーロピアン型レシーバーズ・スワップションは、5年後に5年間にわたって、8%の固定金利の受け取りと変動金利LIBORを受け取る金利スワップを行使する権利である。
このオプションの買い手は、5年後にLIBORが8%を下回った場合に権利行使し、残り5年間は、売り手はノン・コーラブル債のクーポンを買い手に渡し、代わりにLIBORを受け取ることとなる。これは、5年後にコールされるのと同じ状態である。なお、売り手は、スワップ終了時にノン・コーラブル債の償還金(額面100円)を受け取る。
キャップとは、期間中の各期日においてLIBORが、一定のレベルよりも高い場合に、買い手は両者の金利差を売り手から受け取ることができるものである。したがって、買い手はコール・オプションのパッケージを買ったことになる。
一方フロアは、期間中の各期日においてLIBORが、一定のレベルよりも低い場合に、買い手は両者の金利差を売り手から受け取ることができる。これは、金利低下時に変動利付債の受取金利の目減り分を防ぐために利用されている。フロアはキャップとは逆に、プット・オプションのパッケージを買ったこととなる。
そうすると、上記デリバティブの取引が、コーラブル債と同等のリスクがあるとすると、金利デリバティブがコーラブル債よりも魅力的な投資対象となるためには、この金利デリバティブのプレミアムはいくらか。
コーラブル債の価格が100ドルである。
合成コーラブル債の価格は、ノン・コーラブル債価格-売却するスワップションの価格であるから、101.5ドル-100ドル=1.5ドル以上のプレミアムを受け取るものでなければならない。
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