第230号 証券アナリスト 債券ポートフォリオ戦略
債券ポートフォリオ戦略(金利の期間構造)
純粋期待仮説
(1+2年スポットレート)2=(1+1年スポットレート)×(1+1年後の1年ものフォワードレート
3年ものゼロクーポン債の現在の価格P0は、100/(1+3年物スポットレート)3
1年後の価格P1は、100/(1+1年後の3年物レート)2
(1+1年後の3年物レート)2=(1+3年物スポットレート)3/(1+1年物スポットレート)
したがって、
P1=100×(1+1年物スポットレート)/(1+3年物スポットレート)3
そうすると
期待収益率=(P1-P0)/P0は、(100×(1+1年物スポットレート)/(1+3年物スポットレート)3-100/(1+3年物スポットレート)3)/100/(1+3年物スポットレート)3
=(100×(1+1年物スポットレート)-100)/100となり、
結局1年物スポットレートに等しくなる。
そうすると、クーポン・レート2%の3年物利付債の今後1年間の収益率は、P0をクーポン2%と3年後の元本の現在価値を現在の各スポットレートから求め、P1をクーポン2%を1年後の1年物レート、クーポンと元本を1年後の2年物レートから現在価値を求め、1年分のクーポン2%とP1とP0の差を合計したものをP0で割ったものとなる。
そうすると、1年間の期待収益率は、1年物スポットレートに等しくなる。
3年物ゼロクーポン債の今後1年間の期待収益率は、
P0=100/(1+3年物スポットレート)3
P1=100/(1+2年物スポットレート)2
(P1-P0)/P0=
(1+3年物スポットレート)3/(1+2年物スポットレート)2-1
となり、結局これは、2年後から3年後までのフォワードレートとなる。
利付債の利回りが金利スワップレートに等しいと仮定するときの年1回の金利交換が行われる3年物スワップの変動金利はいくらか。
今固定金利が3%、スポットレートは、1年5%、2年3.98%、3年2.96%
そうすると、スポットレートで割り引いた固定金利側のキャッシュフローと変動金利側のキャッシュフローの現在価値が等しくなるので(つまり、変動金利とは、フォワードレートのことなので)、1年目の変動金利はスポットレートの5%、2年目の変動金利は1年後の1年物フォワードレート2.97%、3年目の変動金利は2年後の1年物フォワードレート0.95%となる。
(キャッシュフロー・マッチング戦略)
B投資顧問での運用、資金総額200億円、運用期間5年、投資対象は国債もしくは短期金融商品。
今後、1年後、2年後、3年後に各々42.5億円、42.7億円、42.8億円の確定したキャッシュアウトフローがあるので、この支出に備えることを最優先とする。この条件で最大のリターンをあげるアクティブ運用すること、なおデュレーションは5年程度で行うこと。
ここで運用担当者は、確定支出に備える部分とアクティブ運用する部分を2つに区分した。いくらを確定支出に備える部分とするべきか。
今、スポットレート1年物が、0.9%、2年物が1.0%、3年物が1.2%とすると、
42.5/(1+0.009)+42.7/(1+0.01)2乗+42.8/(1+0.012)3乗=125.28
したがって、確定支出に備える部分は125.28億円でアクティブ運用の部分は200-125.18 =74.72億円となる。
ここで運用担当者は、確定支出に備える部分の債券ポートフォリオ戦略の第1案として、キャッシュフローマッチング戦略を立てた。
1年債のクーポンが5%、現在の価格が104.06円
2年債のクーポンが5%、現在の価格が107.88円
3年債のクーポンが7%、現在の価格が117.06円とすると、
1年後のキャッシュフローは、107/100×x=42.8
2年後のキャッシュフローは、105/100×y+7/100×x=42.7
3年後のキャッシュフローは、105/100×w+5/100×y+7/100×x=42.5
額面で、x=40、y=38、w=36となる。
したがって、投資金額は
1年債は、36×1.0406=37.46億円
2年債は、38×1.0788=40.99億円
3年債は、40×1.1706=46.82億円を投資することとなる。
次に、確定支出に備える部分の債券ポートフォリオ戦略の第2案として、イミュニゼーション戦略を考えた。1年債と3年債でバーベル型で行う場合に、それぞれいくら投資するべきか。なお、確定支出部分の修正デュレーションは、1.85年
1年債の修正デュレーションは、0.99年 コンベクシティ1.96
3年債の修正デュレーションは、2.79年 コンベクシティ10.80とする。
x+y=125.28
x×0.99+y×2.79=1.85×125.28
したがって、投資金額 x=65.42、y=59.86となり、
1年債への投資金額は、額面で、65.42×100/104.06=62.87億円分
3年債への投資金額は、額面で、59.86×100/117.06=51.14億円分となる。
(債券ポートフォリオと変動利付債)
国債を運用しているファンドAは、残存期間1年から10年までの債券を等金額で保有するラダー運用をしている。
現在、最長期の債券が満期となり、1年債から9年債で構成されるポートフォリオ(修正デュレーション4.4、コンベクシティ30.3)となっている。1年分はキャッシュとなっており、新たに10年利付債(修正デュレーション8.5、コンベクシティ87.1)を購入する予定である。なお、現在の1年物スポット・レート、つまり割引債の最終利回りは1%である。
ここで、10年債購入直後のファンド(修正デュレーション4.8、コンベクシティ36.0)について、利回り曲線全体が0.5%下落した場合、このファンドの価値はいくらとなるか。
ΔV/V=-Dp×Δr+1/2×CVp×Δr2
代入すると、-4.8×(-0.5%)+1/2×36.0×(-0.5%)2=0.02445=2.45% 2.45%価値が上昇する。
このファンドでは修正デュレーションにあるレンジを許容している。今回のリバランスで修正デュレーションを4.5まで小さくすることとした。そのために、新たに組み込む資産時価の1/10の修正デュレーションを5.4にする必要がある。そうすると、1年満期の割引債(修正デュレーション0.99、コンベクシティ1.96)と10年債を合わせて修正デュレーションを5.4にするには、現在保有のいくらを10年債に投資すればよいか。
x×8.5+(1-x)×0.99=5.4 x=58.7% となる。
ファンド運用担当者は、変動利付債についても検討している。
変動利付債Xは、満期10年、額面100円、クーポンは1年物スポット・レート
変動利付債Yは、満期10年、額面100円、クーポンは10年物利付債のクーポン・レートから1%を引いた値となる。(現在10年物利付債のクーポン・レートは3%)変動利付債Xの価格は利払い日には、100円となるのはなぜか。
9年後の価値をP9、9年後から満期までの利回りをr9,10、満期時(10年後)の価値P10は、償還金100円と1年間のクーポン収入であり、このクーポン収入はプレミアムがないため、スポット・レートとなるので、9年後の価値は100円となる。8年後も同様に、100円なる。
したがって、毎年のクーポン・レートは1年物スポット・レートと同一となることから、各年において、1年物割引債と同等で、1年後のキャッシュ・フローは確定する。ただし、各年の1年物スポット・レートは、1年目期初からするとフォワード・レートであるため、不確実であるが、結果的にデュレーションは1年となり、10年物金利と比べると債券の価格変動リスクは小さいといえる。
そうすると、利付変動債Yの利回りは、現在の10年物利付債の利回りが3%マイナス1%の2%であるから、現在の1年物スポット・レートが1%と比較して利付変動債Yの利回りのほうが有利である。
そうすると、仮に10年物利付債の発行利回りと1年物スポット・レートの差がこれからも今の2%のままだとすると、債券Xと債券Yのクーポン・レートの差は1%となる。そうすると、Yの価格は、いくらになるか。
参考債券
1 額面100円、残存年数10年の割引債、価格74.05円
2 額面100円、クーポン・レート1%、残存年数10の利付債、価格83.12円
そうすると、上記債券1と債券2の価格差は、毎年のクーポン・レートの差の現在価値となる。
そうすると、債券Yの価格は、債券Xの価格+クーポン・レートの差1%の現在価値となるので、100円+(83.12円-74.05円)=109.07円となる。
この利付変動債XとYの発行価格が100円で等しいとした場合、投資家は将来の利回り曲線については、長短金利が逆転する逆イールド又はフラット化すると予想していると思われる。
(債券ポートフォリオと債券先物)
運用会社Aと運用会社Bは、ブレット・ポートフォリオ(中期債だけに集中のポート)を上回る運用収益をあげる運用手法を検討している。運用期間は1年で、すべて7年の国債で構成されている。
A社の戦略は、現在の長期国債先物が理論価格に比べて割安となっているとして、ブレッド・ポートフォリオを売却して、マネー・マーケットでの短期運用と国債先物の買い持ちポジションを組み合わせる。なお、先物を割安と考えた根拠は、現時点における最割安銘柄(残存期間7年)で計算した理論先物価格が低いことである。
B社の戦略は、3年債と10年債の組み合わせによりバーベル・ポートフォリオを作り、ブレット・ポートフォリオと同じデュレーションを維持しながら、コンベクシティを上昇させる。これにより、大きな金利変動があった場合には、ブレット・ポートフォリオよりも高いパフォーマンスをあげる。
ここで、最割安銘柄の債券価格が110円、クーポン・レートが4%(年2回払)、この債券の先渡価格はいくらか。なお、満期までの期間は3月、3月物短期金利は2%、債券価格は利込み価格である。
先物価格=(債券価格+経過利息)×(1+運用利息)-クーポン×(前回利払からの経過期間+最終日までの期間)
ここで、110円は経過利息(4/2×3月/6月)を含んでいる。
この110円を最終日まで運用した利息を加えたものから、現物を持てば得られるであろうクーポンの額を控除する。そうすると、110円×(1+0.02×3/12)-4×1/2=108.55円
国債先物価格が、最割安銘柄が基準となる理由は、先物の売り手にとっては、受渡適格銘柄のうち最も割安な銘柄を受渡しに使うのが有利であるため、この最割安銘柄を使って、「先物売り・現物買い」の裁定取引を行ったとした場合が基準となって先物価格が決まる。
A社は、最割安銘柄で計算した理論先物価格がコンバージョン・ファクターで割ったものよりも、先物の市場価格が低いことを理由に、現在の長期国債先物が理論価格に比べて割安としているが、A社の戦略では、デリバリー・オプションがあることを考慮していない。すなわち、デリバリー・オプションを考慮した先物の理論価格は、現在の最割安銘柄の先渡価格をコンバージョン・ファクターで割った先物理論価格よりもデリバリー・オプションの分だけ低くなるため、先物が割安であるかどうかは不明である。
B社のコンベクシティを利用する戦略について、バーベルとブレットのリターンをそれぞれRa,Rbとし、コンベクシティをそれぞれ、CaとCbとすると、
Ra-Rb=1/2×(Ca-Cb)×(Δr)2となる。
したがって、バーベルのコンベクシティの方が大きいため、金利変化の影響は常にバーベルにとって有利に働く。
しかしながら、B社の戦略についても、右上がりのイールド・カーブの場合、一般にブレットの利回りはバーベルを上回るので、金利変動が小さい場合には、ブレットのほうがパフォーマンスが高い。さらに、イールド・カーブが並行移動以外の形状変化を示す場合には、パフォーマンスは不明であり、ポートフォリオの入替えに伴う取引コストを考慮していない。
(債券ポートフォリオ運用と仕組債)
A基金は、国内株式・外国株式・国内債券を運用対象としている。国債債券は、パッシブ運用だけなので、国内債券市場が超低金利であることから、新たに相対的に金利の高い米国債券を資産クラスに組み入れることとした。
米国債券については、アクティブ運用することとした理由について、日本と比べて債券市場の規模が大きく、社債セクターやモーゲージ債セクターなど財務省証券以外の債券も発達していることから、アクティブ運用により超過収益を得る機会が多いと考えた。
債券のパッシブ運用は株式と比較して難しいといわれる理由は、一般に債券インデックスに含まれる銘柄数が多く、流動性が低いものがある。また、銘柄入れ替えが頻繁に発生するため、ベンチマークをトラックするのが難しく、取引コストもかかるからである。
金利の低下が予想される場合、コーラブル債はコールされる確率が高くなり、コーラブル債の価格上昇は限定的となる(ネガティブ・コンベクシティ)ので、実際にコールされれば再投資リスクが生じ、コーラブル債のトータル・リターンはノンコーラブル債を下回る。
また、金利ボラタリティの上昇もコーラブル債の価格上昇を抑える要因となる。一方、市場利回りが変化しないか上昇するときは、コーラブル債に内在するコール・オプションの売りポジションの価値が低下することにより、コーラブル債の価値が上昇し、そのパフォーマンスは、ノンコーラブル債を上回る。
モーゲージ債について、モーゲージ債の利回りは一般債に比べて高く、他の債券との相関の低さから、ポートフォリオの分散効果が期待できるものの、金利低下時及びその他の理由で期限前償還が発生する可能性がある。
金利が低下するとモーゲージ・ローンの期限前償還(プリペイメント・リスク)が増加するため、MBSの価格上昇は限定的となる。また、金利ボラタリティの上昇も価格低下要因となるので、金利低下時にはMBSの組み入れ比率は低下させるべきである。また、金利低下時の期限前返済率は、高クーポン債のほうが低クーポン債よりも高くなるので、高クーポン債の比重を低下させるべきである。
資産担保証券ABSは、構成される債券よりも高い格付けとなっている。これは、原債権のキャッシュフローとABSの元利金の支払いを担保するため、銀行や証券会社等のアレンジャーが、信用補完または流動性補完措置をしているため、企業や銀行の信用力を裏付けとした通常の社債とは異なる格付けとなる。
たとえば、SPCやトラスト等を利用して債権のオリジネーターの倒産時に第三者対抗要件を持つ法的構成が整っている場合、ABSの格付けは債権オリジネーターの信用力と切り離して行われる。
そうすると、ABSの格付けは消費者信用債権の資産プールの質や保証保険や優劣構造等の信用補完等の評価に基づくこととなる。そのため、資産プールからの予想損失が信用補完を上回る確率が非常に低ければ、そのABSには高い格付けが与えられる。
(主成分分析とファクター・モデル)
欧州債券市場における利回り曲線の形状について主成分分析を行った。分析対象は2年から10年の欧州債券の年限別最終利回りの変化である。
主成分は、主に3つ、1水準変化(シフト)、2傾き変化(ツイスト)、3曲率変化(バタフライ)がある。特徴として、シフトは、すべての年限のレートが同水準となっている。これは金利の期間構造の水準の変化を表している。寄与率は高い。
ツイストの特徴は、年限の増加に伴いウエイトが次第に大きくなっている。これは、利回り曲線の傾きの変化を表している。
バタフライの特徴は、中間ゾーンとそれ以外の年限でウエイトの符号が逆になっている。これは、利回り曲線の曲率(たわみ具合)の変化を表している。固有値とは、各主成分の分散のことであるから、その合計に占める割合が寄与率となる。
したがって、この寄与率がほとんどシフトによって説明される場合には、債権のパフォーマンスは、当該ポートの平均デュレーションによって説明できるといえる。バタフライ・トレードとは、イールドカーブの曲がり具合を用いた取引である。
イールドカーブの曲がり具合(つまり短期・長期の符号がマイナス、中期がプラスなる場合)が強くなると考える場合には、中期債の利回りが上昇するため、価格が低下するので、中期債を売却し、短期・長期債を購入することにより、高い収益を目指し、損失を小さくとどめることができる。等金額投資を行っている場合は、デュレーションもコンベクシティも平均となる。
(信用リスク分析)
債券の信用リスクモデルは、大きく構造モデルと誘導モデルに分けられる。このうち、構造モデルは、企業のバランスシートをモデル化したものである。
企業のバランスシートは、資産=負債+資本という関係が成立しており、資産額が目減りして負債額を下回れば債務を履行することができなくなる。構造モデルでは、負債の満期日企業価値(=負債時価総額+株式時価総額)が、負債元本額を下回った状態をデフォルトと定義する。
つまり、A社の社債は、デフォルトのない割引債と原資産は企業価値であり、負債が上回ると返済金がゼロとなることから、プット・オプションの売りが合成されていると考えられる。
ここで、A社には負債がなく、自己資本100%で、現在の株価900円、発行済み株式数2億株、今後3年間は配当しない。市場において、A社の株式に対する行使価格300円のコール・オプションの価格650円、プット・オプション8円である。今3年満期の割引債額面総額600億円を発行し、調達した資金で自社株買いを行う場合、この社債の価格は100円当たりいくらか。
C=P+S-Ke-rtからe-rt(3年間の割引係数)を求める。650円=8+900-300×e-rt e-rt=0.86
また、デフォルト・リスクのある割引債の価値=デフォルト・リスクのない割引債の価値-プット・オプションの価値(行使価格600億円)
=600億円×3年間の割引係数0.86-8円×2億株=500億円
したがって、額面100円当たり=500/600×100円83.33=円となる。
つまり、プット・オプションのプレミアム相当額の減額である。
なお、デフォルト・リスクのある割引債の価値は、現在の株価900円-プット・オプションの価値650円に総株式数2億株を乗じた金額500億円となる。
または、デフォルト・リスクのある割引債の価値は、企業価値-自社株買い実施後の株式価値となる。または、企業価値-企業価値を原資産とする行使価格600円のコール・オプションの価値である。
国債の利回り変化に対する回帰係数は、リスク・フリーの上昇によって、企業価値は高まるから、デフォルト率が低下し、信用スプレッドが縮小する。したがって、回帰係数の符号は負である。つまり、リスクフリーレートの上昇によって、将来価値が上昇すると考える。
株式ボラタリティの変化に対する回帰係数は、企業の資産価値の変動と株式価値の変動が高い相関をもっていると考えると、株式ボラタリティの上昇によって、デフォルト・リスクのある社債の価値(つまり負債の価値)は低下し、信用スプレッドは拡大する。したがって、回帰係数の符号は正である。
個別銘柄の信用力に影響を与える要因について、将来の変化を予測することで、ある種のアービトラージ戦略が有効であると考えられる。それは、信用力が上昇すると予想される社債を買い、同時に同じ残存期間の国債を売ることである。
信用力が上昇すると予想される債券は、現在割安状態にあり、予想どおり信用力が上昇(価格の上昇、利回りの低下)すれば信用スプレッドは縮小し、差益を得ることができる。国債を運用しているファンドAは、残存期間1年から10年までの債券を等金額で保有するラダー運用をしている。
現在、最長期の債券が満期となり、1年債から9年債で構成されるポートフォリオ(修正デュレーション4.4、コンベクシティ30.3)となっている。
1年分はキャッシュとなっており、新たに10年利付債(修正デュレーション8.5、コンベクシティ87.1)を購入する予定である。
なお、現在の1年物スポット・レート、つまり割引債の最終利回りは1%である。
ここで、10年債購入直後のファンド(修正デュレーション4.8、コンベクシティ36.0)について、利回り曲線全体が0.5%下落した場合、このファンドの価値はいくらとなるか。
ΔV/V=-Dp×Δr+1/2×CVp×Δr2
代入すると、-4.8×(-0.5%)+1/2×36.0×(-0.5%)2=0.02445=2.45%
2.45%価値が上昇する。
このファンドでは修正デュレーションにあるレンジを許容している。今回のリバランスで修正デュレーションを4.5まで小さくすることとした。
そのために、新たに組み込む資産時価の1/10の修正デュレーションを5.4にする必要がある。
そうすると、1年満期の割引債(修正デュレーション0.99、コンベクシティ1.96)と10年債を合わせて修正デュレーションを5.4にするには、現在保有のいくらを10年債に投資すればよいか。
x×8.5+(1-x)×0.99=5.4 x=58.7%となる。
ファンド運用担当者は、変動利付債についても検討している。
変動利付債Xは、満期10年、額面100円、クーポンは1年物スポット・レート
変動利付債Yは、満期10年、額面100円、クーポンは10年物利付債のクーポン・レートから1%を引いた値となる。(現在10年物利付債のクーポン・レートは3%)
変動利付債Xの価格は利払い日には、100円となるのはなぜか。
9年後の価値をP9、9年後から満期までの利回りをr9,10、満期時(10年後)の価値P10は、償還金100円と1年間のクーポン収入であり、このクーポン収入はプレミアムがないため、スポット・レートとなるので、9年後の価値は100円となる。8年後も同様に、100円なる。
したがって、毎年のクーポン・レートは1年物スポット・レートと同一となることから、各年において、1年物割引債と同等で、1年後のキャッシュ・フローは確定する。
ただし、各年の1年物スポット・レートは、1年目期初からするとフォワード・レートであるため、不確実であるが、結果的にデュレーションは1年となり、10年物金利と比べると債券の価格変動リスクは小さいといえる。
そうすると、利付変動債Yの利回りは、現在の10年物利付債の利回りが3%マイナス1%の2%であるから、現在の1年物スポット・レートが1%と比較して利付変動債Yの利回りのほうが有利である。
そうすると、仮に10年物利付債の発行利回りと1年物スポット・レートの差がこれからも今の2%のままだとすると、債券Xと債券Yのクーポン・レートの差は1%となる。そうすると、Yの価格は、いくらになるか。
参考債券
1 額面100円、残存年数10年の割引債、価格74.05円
2 額面100円、クーポン・レート1%、残存年数10の利付債、価格83.12円
そうすると、上記債券1と債券2の価格差は、
毎年のクーポン・レートの差の現在価値となる。
そうすると、債券Yの価格は、債券Xの価格+クーポン・レートの差1%の現在価値となるので、100円+(83.12円-74.05円)=109.07円となる。
この利付変動債XとYの発行価格が100円で等しいとした場合、投資家は将来の利回り曲線については、長短金利が逆転する逆イールド又はフラット化すると予想していると思われる。
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