第232号 証券アナリスト 投資パフォーマンスの測定と評価
投資パフォーマンスの測定と評価(時間加重収益率と金額加重収益率)
資金流出がある場合の金額加重収益率は、キャッシュフローで考える。
期首はファンドへの資金流出であり勘定からの流出、期中の資金流出はファンドからの流出なので配当と同じで、結局は儲けであり資金流入扱い、最後に期末は回収するのでファンドからの資金流出であり勘定への流入と同じ。
時間加重収益率の場合は、期首残高が期間運用されたと考えて(1+r)の乗数倍とし、これが、期首残高に各期間の運用状況である各期末残高を分子に各期首残高を分母とし、それぞれを乗じたものとが一致するとして計算する。
資金流入(追加購入)があった場合の金額加重収益率も同様に、キャッシュフローで考える。
たとえば、期首に割引債を購入し、期中に追加購入した場合の金額加重収益率は、期首は、ファンドへの資金流出であるから期首時価で勘定からの流出扱いとし、追加購入分は、購入時の時価による勘定からの資金流出であるから、期首残高に加算する。ファンドには流入となる。
最後に期末の資金回収は、ファンドからの資金流入である。
次に、期首に割引債を購入し、期中に追加購入した場合の時間加重収益率も同様に、期首は購入価額に、期首残高が期間運用されたと考えて(1+r)の乗数倍とし、これに追加購入分に期末までの期間収益を算出するので、(1+r)の期末までの乗数倍を加えたものが、期末回収金額に時価に一致する。視点は現在である。
運用期間において、運用収益が悪いのが時間的に早くに生じると時間加重収益率は悪くなる。
幾何平均値は、ファンド価値の中央値を示し、算術平均は、運用期間の平均値であり、次の1年あるいは任意の1年間の収益率の推定値になる。
また、一般に、算術平均値は幾何平均値よりも大きな値をとる。
(ポートフォリオの計量分析)
基金担当のAは、日本株式のアクティブ運用に関して、現在の運用機関全体の構成を見直そうとしている。この基金の日本株式のベンチマークはTOPIXであり、80%をアクティブ運用している。アクティブ運用は40本のファンドである。アクティブファンド全体及び個別ファンドもTOPIXに対するベータは1である。そのため、アクティブファンド全体の平均収益率がTOPIXを上回れば運用は成功である。
上位5本、中位10本、下位25本に区分した。
中位10本のアクティブリスクを求める。これは、中位のアクティブリターンをアクティブリスクで除したものが情報比となる。
次に、上位5本と中位10本をまとめた場合のアクティブリターンは、上位5本の平均リターン×本数+中位10本の平均リターン×本数の合計を累積本数15で除したものとなる。
また、アクティブリスクは、本数が15本なので、アクティブリスクを15で除したものの二乗に15本を乗じたものの平方根となる。
各ファンドの相関をすべて0であるとして計算したが、仮に高い正の相関があるファンドが含まれているとき、ポートフォリオのアクティブリスクと情報比は、無相関の場合よりも大きくなることから、情報比はマイナスの影響を受けることとなる。
正の相関を持つファンドがある場合、アクティブマネージャーは、構成に関して、ファンドの超過収益の大きさだけでなく、相関の高いファンドや運用スタイルの似ているファンドを同時に採用しないようにする。
ファンドの相関が高くなるのは、利用する情報が似ている、運用スタイルが同じ、組み入れる銘柄が重複していることがあげられる。
(年金運用のスタイル分析)
A基金の理事B氏は、これまで投資顧問C社だけに株式特化型運用を委託してきた。今回は新たに、C社、D社、E社に対して過去5年間の株式運用パフォーマンス実績データをもとに、それぞれの投資スタイルや運用能力を評価することとした。
その方法は、スタイル・インデックスと各社の株式ファンドの時系列データを使った重回帰分析である。具体的には、各社の株式ポートフォリオの対TOPIX月次超過収益率を乗続変数とし、4つのスタイル・インデックスの対TOPIX月次超過収益率を独立変数とする分析モデルである。
4つとは、大型成長株、大型割安株、小型成長株、小型割安株である。
運用能力は、投資スタイル以外の要因(例えば銘柄選択能力)でどれだけパフォーマンスに貢献できるかという点も重要である。能力か偶然かを完全に見極めるのは困難であるが、定数項(いわゆるアルファ)が正の値で、かつ有意にゼロでない水準かどうかがスタイル要因以外の能力の判断材料となる。
定数項の大きさが大きくとも、t値が有意でない場合は偶然と考える。t値が有意である場合は、運用能力が高いと考えられる。
なお、α値や各回帰係数のt値は、信頼度を表しており、一般にその絶対値が2よりも大きいときは統計的に有意と判断される。t値は回帰係数/標準偏差であるから、α値のt値は、情報値を表しているといえる。
このような方法で運用会社を選択する場合、定量的な分析はあくまで過去のデータに基づくものであり、必ずしも将来を約束するものではない。したがって、運用会社の投資方針と実際の運用の比較、相場動向の予測や分析手法など定性的な要素を加味しなければならない。
投資パフォーマンスが目標収益率を下回ることをリスクと考える新たなリスク概念をダウンサイド・リスクと呼ばれる。ダウンサド・リスクをリスクの単位としたリスク調整後収益率は、ベンチマークに対する超過収益率をダウンサイド・リスクで割ったものである。これは、目標収益率を下回るリスクのみを対象として計測を行うため、このリスクが小さいほどパフォーマンスがよいとされる。
(年金運用の評価)
企業年金コンサルタントのAは、基金のアセット・ミックス構築のプロセスを要約した資料を作成した。総収入原価とは、年金基金が受け取る将来のすべての収入額を予定利率で現在価値に割り引いたものの合計である。総給付原価とは、年金基金が支払う将来のすべての給付額を予定利率で現在価値に割り引いたものの合計額である。
予定利率とは、資産運用の予定収益率であり、責任準備金とは、総収入原価から総給付原価を控除した残高であり、基金が将来の給付を行うために、現時点で保有していなければならない資産時価額である。
厚生年金基金の資産運用に当たって母体企業のリスク許容度を決定する要因は、企業の成熟度、産業の成熟度、従業員の平均年齢、企業収益の変動である。
つまり、設立から間もない基金ほどリスク許容度が大きく、退職者が多い基金ほどリスク許容度が小さい。
各ファンドの評価を行う場合は、シャープレシオで比較する。
基金全体の運用成果を評価する場合、長期アセット・ミックスどおりに運用していたならば得られたであろう収益率との差を、アセット・アロケーション要因、銘柄選択要因及びその他要因に区分する。
まず、①基金全体の実際の投資収益率を計算し、
②シャープ・レシオの最も良いポートフォリオを最適長期アセット・ミックスとして、このように運用していたならば得られたであろうリターンを算出する。
③実際の組み入れ比率と最適長期アセット・ミックスの比率にベンチマーク・リターンを乗じて算出する。
④最適長期アセット・ミックスの比率に実際のリターンとベンチマーク・リターンとの差を乗じて銘柄選択要因を算出する。
⑤最後に、組み入れ比率の差にリターンの差を乗じてその他の要因を算出する。
(年金ポートフォリオのスタイル分析)
株式リターンの銘柄間格差の大部分は各銘柄の時価総額と株価純資産倍率の2つのファクターで説明できる。
株価純資産比率の低い銘柄をバリュー株、高い銘柄をグロース株と呼ぶ。
それぞれ時価総額が高い銘柄を大型株、低い銘柄を小型株と呼ぶ。
これら4つのグループに区分して、それぞれのグループについて計算した時価総額加重平均指数をスタイル指数と呼ぶ。
A基金では、TOPIXを国内株式のベンチマークとしている。投資対象の数を増やすほどポートフォリオのリスクは減少する。これを利用した手法がインデックス運用である。市場の指数と連動させる運用手法である。
なお、銘柄固有のリスク(非システマティック・リスク)はゼロに近づけることができるが、市場リスク(システマティック・リスク)は分散効果によっては消えない。
なお、投資マネージャーの数を増やすと、同じ銘柄を持つこととなる不整合が発生する可能性がある。ある銘柄を1人のマネージャーが売り、他のマネジャーが買うという取引が生じる可能性がある。さらに、委託手数料が高額となり、委託資金が小口化する。
TOPIXに小型グロースが入らない場合は、ベンチマークにふさわしくないという考えがある。信託合同口の相関係数を求める場合、それぞれのスタイル別のファンドの全組み合わせについて、ファンドの対TOPIX超過リターン間の相関係数の平均値を算出することがある。
マネージャー採用に対する提案としては、年金スポンサーとして各運用スタイルへの資金配分を決め、それに従った投資マネージャーを採用すべきである。したがって、マネージャーの評価は、シャープ・レシオではなく、対スタイル・ベンチマークのアクティブ・リターンに基づいた情報比で行うのが合理的である。
(年金ポートフォリオのパフォーマンス分析)
A厚生年金基金は、複数の運用会社に国内株式ポートフォリオのアクティブ運用を委託している。ベンチマークはTOPIXである。A基金は、スタイル分析を行った。ファクターは、大型グロース、大型バリュー、小型グロース、小型バリューの4つである。
βが1でも、TOPIXと異なった配分をしている場合はアクティブ運用である。
情報比でパフォーマンスを評価する意義は、情報比はアクティブ運用を行うファンドのリスク調整後の収益率を表す指標であり、運用スタイルが異なるアクティブ・ファンドのパフォーマンスを評価する指標として有効である。
ただし、スタイルが異なると、計測期間の問題から、これだけでは運用の優劣を決めるのは困難である。
スタイルが同じ(ファクターの配分が同程度)で、残差項の標準偏差がほぼ等しいと連動性が高いと判断される。回帰分析を用いたスタイル分析では、計測期間内で運用スタイルに変化がないことが前提であり、でないとファンドのパフォーマンスを正しく評価できない。
スタイル分析を行うときは、ポートフォリオ全体としてのスタイル分散を図るとともに、運用スタイルが類似しているファンドが存在する場合に、いわゆる相殺の問題を含め、ファンド全体として非効率な運用が行われている可能性が高いので、このような非効率性を排除すべきである。
(債券アクティブ運用のスタイル分析)
比較するファンドの両方の平均αがプラスであるということは、金利が全般的に低下傾向にあったと思われる。そして、両ファンドのαがかなり大きな負の相関にあれば、長期と中期及び短期金利の変化に反対方向に現れたと考えられる。相関係数がプラスであれば、中期・短期と長期の利回りは同時に低下傾向であったと考えられる。
年金コンサルタントとして
1 債券アクティブ運用の目的に沿ったマネージャーへのガイドラインの与え方
個々のファンドに独自に制約条件を課すのではなく、債券アクティブ・ポートフォリオ全体としてのリスク・コントロールを考慮したガイドラインを設定すべきである。
2 基金にとって望ましいマネージャー構成
債券アクティブ・ポートフォリオ全体として高い情報比を得られるように、マネージャー分散(スタイル分散)を図る。具体的には、運用スタイルが異なり、αの相関が小さいマネージャー構成とする。
3 報酬控除後の平均αがベンチマークを下回る可能性があるマネージャーの処遇
マネージャーAとBのアクティブ・リターンの相関が負であることは、スタイル分散の観点から望ましいといえる。ただし、運用報酬はアクティブ・リターンを基準に設定すべきである。
運用報酬を考慮してマネージャーの評価期間のパフォーマンスについて仮説検定を行い、帰無仮説が30%の有意水準で棄却されるならばマネージャーを継続採用することとした。この時の帰無仮説は、運用報酬控除後のマネージャーの平均リターンはゼロであるする。
30%の有意水準の意味は、帰無仮説が正しいにも関わらず棄却される誤りが生ずる可能性が30%であるということである。有意であると考えやすい。つまり、平均リターンがゼロであるにもかかわらず採用を続けてしまうこと。
また、有意水準を30%から5%にした場合、棄却すべき帰無仮説を受容してしまう誤りが生じる可能性がある。有意であると考えるのが厳しくなる。つまり、平均リターンがゼロであるという仮説を採用し、継続採用をすべきであるにも採用を取りやめることとなる可能性が大きくなる。
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