第235号 証券アナリスト 国際経済
(国際収支と経済の発展段階)
国際収支は、未成熟債務国から成熟債務国、債務返済国、未成熟債権国、成熟債権国、債権取崩国と移行する。わが国の経常収支は黒字で、資金の動きは資本収支の赤字となり、その結果、対外債権を取得する。そして、累積された対外債権の果実として所得収支の黒字幅を拡大させる。
今後経常収支が減少していくことは、純輸出の減少を意味し、現在の経済規模を維持するためには、政府支出を拡大するか、民間需要を拡大させる必要がある。さらに、今後経常収支が減少していく場合、累積経常収支黒字が減少すると、円安となる。また、累積経常収支の減少は対外純資産を減少させる。その結果、リスクプレミアムが低下する。
わが国のメーカーの海外への移転に伴い、純輸出がしだいに減少していく。さらに、経常収支の黒字の減少から赤字となるに及び、国内資金が不足するため、資本収支が黒字化することとなる。そして、外資を国内に呼び込むために会計制度の国際化やさまざまな国内投資基盤の整備が不可欠となる。
経常収支の黒字は、マクロの資金循環上海外部門の資金不足を意味し、経常収支の赤字は、国内部門の資金不足を意味する。資本収支の動向によって、国内の金利は上昇し、株価は下落することとなる。
(国際通貨・金融システム)
為替相場決定のファンダメンタルズが悪化しているのに固定相場性を維持した場合、通貨危機を招くことになる。これを購買力平価によるマネタリー・アプローチから説明すると、財政悪化の拡大に伴って、貨幣供給量の拡大となる場合、自国通貨の減価を生じさせる。そして、このまま固定相場制を維持すると、自国通貨が高値となっていることから投機家が自国通貨を売りにかける。そうすると、自国通貨の価値を引下げ、資本の逃避を招き、通貨危機となる。
ある国の短期の対外債務の返済能力を考える場合に、対外短期債務残高/外貨準備の比率に注目するが、対外債務の支払能力は、対外債務の支払原資となる経常収支の黒字を今後将来にわたってどれだけ稼得できるかにかかっていることから、長短合わせた対外債務の残高の見込額とかけ離れたものでないのであれば、為替の水準には影響を及ぼさない。
しかしながら、この比率の値が1を超えると、短期債務の返済が困難になるのではないかという想定のもとで、投資家の群衆行動を引き起こし、債務の回収が始まると通貨危機に発展する。
内外金利差は、両国間の為替の変動率及び為替のリスクプレミアムに基づいて生じる。固定相場制の場合は、為替相場が固定されていることから、両国間の為替変動率及びリスクプレミアムはゼロとなり、内外金利差は生じない。しかしながら、固定相場制が維持できないと予測される場合は、ゼロでなくなり、内外金利差が生じることとになる。
通貨危機の解決に当たり、民間の投資等の際に引き受けたはずのリスクを実際に引受させ、IMF等の公的資金を利用する際に生ずるモラル・ハザードを防止できる。そのために民間の債権者や投資家に対して、債務返済の据え置きや、債務返済のリスケジュールなどを合意させることとなる。
(単一通貨ユーロの導入)
統一通貨導入のための収斂条件として、消費者物価上昇率が最も低い3か国の平均値に接近していることが必要となる理由は、各国間の通貨を一定の比率でユーロの一定量として定める必要があるが、各国間で物価上昇率に大きなバラツキがあると各国間の通貨の相対価格に影響を与えるためである。為替相場の購買力平価論によれば、各国間のインフレ率格差は各国間の通貨の相対価格に影響を与える。
さらに、インフレ率が最も低い3か国の長期金利に長期金利が接近していることがあげられるが、これは、金利平価説によれば、各国間の金利差が予測為替相場変動率に等しいが、各国間で物価上昇率に大きなバラツキがあると各国間の通貨の相対価格に影響を与えるため、統一通貨導入の支障となるためである。
さらに、GDPに対して財政赤字が3%以内であり、GDPに対する政務債務残高が60%以内であることがあげられるが、これは、財政赤字あるいは債務残高の大きな国の通貨は弱くなることが予想される。したがって、これらの値が各国間で大きなバラツキが生じると、各国間の通貨の相対価格に影響を与えることになり、統一通貨導入の支障となるためである。
(オープンマクロモデルと経済政策)
マンデル・フレミング・モデルによる財政政策の効果について
財政政策によって政府支出を拡大するとIS曲線は右にシフトする。IS曲線のシフトに伴って、均衡点は、移動し、移動後の均衡点はBP曲線の上側に位置する点であるため、自国内に資本流入圧力が生じて自国通貨高となる。その結果、輸出が減少する。そして輸出の減少は、IS曲線を左にシフトさせ、資本流入圧力がなくなるまで続く。結果的にIS曲線は元の位置まで戻ってしまい、結果的に財政政策は無効となる。
わが国において、金融政策は緩和方針が貫かれていることから、金融市場の資金逼迫とその結果としての利子率の上昇は生じていない。したがって、マンデル・フレミング・モデルが指摘する円高とそれによる純輸出の減少は生じていない。
金融緩和政策とマンデル・フレミング・モデルについて
金融緩和政策の実施は、わが国の利子率を他国と比べて相対的に下落させることから、円安を招き、その結果として純輸出の拡大をもたらして、経済は拡大する。金融緩和によって、LM曲線は右にシフトし、均衡点は移動する。移動後の均衡点はBP曲線の下側となり、国際収支が均衡点より利子率水準が低い状況にあり、自国からの資本流出超となる。この結果、自国通貨は安くなる。そのため、輸出が増え、IS曲線は右にシフトする。したがって、国民所得は当初より拡大し、金融政策は有効となる。
ポリシー・ミックスによるも景気が拡大しない理由
現実は、一方的な円安や純輸出の拡大も生じていない。円相場の動向は、単にわが国と他国の金利水準のみに依存するのではなく、わが国への投資資金の流れなどによっても影響を受ける。さらに、純輸出が拡大するか否かも、単に為替レートの水準のみならず、欧州やアジアなどの貿易相手国の経済状況からも影響を受けるためである。
(各国の不均衡是正と国際収支・為替レート)
アメリカの過剰消費と経常赤字、中国の経常黒字、わが国の財政赤字の拡大。この世界経済の不均衡を是正する。アメリカと中国の経常収支の不均衡是正のためには、人民元の切上げが予測される。その結果、中国の輸出が減少して、GDP成長率が低下する。一方、アメリカの輸入は減少し、国内景気の回復に寄与することとなると考えられる。
アメリカと中国の経常収支のバランスを回復するには、どのような政策対応がとられると予測するか。その結果、両国経済にはどのような影響が生ずるか。
中国では通貨高になることから、世界から投資資金を集めやすくなるため、国内金利が低下する。一方、アメリカは、投資資金が逃げ、金利は上昇すると考えられる。
アメリカと中国の経済収支不均衡是正のプロセスで、両国の金利水準はどのように変化すると予測されるか。
わが国の状況に変化がないとすれば、元が高くなり、ドルが安くれば、中国からの輸入が減少し、アメリカへの輸出も減少すると考えられる。
アメリカと中国の経済収支不均衡是正のプロセスで、わが国はどのような影響があると考えられるか。
財政赤字を減少させることは、わが国の景気を失速させることにつながるので、今後も減少しないと考えられる。その結果、わが国の為替レートの水準は、一般的にどの通貨に対しても安くなると考えられる。
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