第236号 証券アナリスト マーケット
(国債市場と金利)
国債は、唯一のリスク・フリーの金融商品であって、これを頂点として、各金融商品がもつリスク度合いに応じて、金利体系が決まる。なお、ここで対象としているリスクとは、信用リスクであり、この信用リスクの度合いに応じて金利に差ができる。これをイールド・スプレッドという。
個人の金融資産の一部が国債の購入に向かった場合、マクロの資金循環はどのような影響が生じるか。その結果、国債以外の金利はどのように変化するか。
マクロの資金循環上、個人金融資産の過半は、預金として預けられており、その資金の一部が、国債の購入に向けられると、預金からの資金流出に伴って、預金金利が上昇する可能性がある。また、預金金利の上昇がその他の金融商品の金利水準に影響を与え、わが国の金利水準を全般的に引き上げる可能性がある。
個人投資家に国債を購入して欲しい理由はなにか。
1 年々、国債発行が拡大する中で、発行される国債を滞りなく消化できるようにするため
2 国債の保有主体に偏りがあると、同種の保有主体が同じ投資行動をとることにより、国債価格が不安定になる恐れがある。こうしたことを回避するためには、保有主体が多様化する必要がある。
個人が国債を保有する場合は、満期まで運用することを前提にすると、国債の価格変動リスクがなく、当然に信用リスクは存在しないのであるから、個人は国債投資に関してリスクを負わないことについて金融が緩和された状況のもとで、インフレが生じた場合には、実質的な国債金利及び元本償還額は目減りするので、完全にリスクがないとはいえない。
インフレの影響
インフレが生じた場合、すべての資産の実質価格は下落する。その結果、これらの資産を保有する投資家は損失を被るものの、負債の実質価値は下落するため、債務を有する者は利益を受ける。すなわち、インフレは資産保有者から債務を有する者への所得の移転を発生させる。
(国債価格と長期金利)
銀行については、金融緩和のもと、日銀当座預金として多額の余剰資金を有しており、その一方で融資の拡大をさせておらず、余剰資金の運用先として、信用リスクがなく確実に利ザヤを稼げる国債への投資を増加させている。
生命保険については、その運用資産の何がしかは投資時点の価値を割り込んでおり、また、それらの資産の収益性が低いことなどから、運用に当たってこれ以上のリスクをとることに慎重になっており、銀行同様に信用リスクがなく確実に利ザヤを稼げる国債への投資を増加させている。
更なる国債の発行により、国債価格が下落すると国債の金利が上昇するが、残存期間の長めのものから生ずる理由
国債への投資家は、国債価格の下落の可能性を意識し始めると、国債投資に関するデュレーションを短くする。その結果、長めの国債金利から上昇する。つまり、長期金利がインフレ期待を織り込んで上昇するものと考えられる。
国債金利の上昇は企業の設備投資を冷え込ませるが、その対応について
金利の上昇を阻止するため、日銀は対応しようとするものの、インフレ懸念を含んだ金利上昇に対して、金融緩和によってこれを抑え込もうとしても、緩和にもとづくマネーサプライの増大が、貨幣価値の一層の下落期待、すなわち、インフレ懸念を一層高めることとなり、長期金利はさらに上昇してしまう。したがって、インフレ懸念を織り込んで上昇した長期金利を中央銀行はコントロールすることができない。
国債の長期金利の上昇は、国債の買いオペ多用の結果からも考えられる。金利以外にどのような経済変数の動向に影響を与えるか。
日銀は通貨供給に際して国債の買いオペを実施している。そのため、国債の価格が下落すると日銀が多額の損失を発生させることにより、日銀の信認問題が生じ、円が下落し、その結果インフレとなり、為替レートも下落することとなる。
(イールド・カーブ)
指標銘柄と呼ばれる特定の国債に取引が集中する傾向があったため、各年限の金利水準を把握できなかったため、従来国債に関するイールド・カーブを描くのが難しいと言われてきた。国債のイールド・カーブに代わって各年限のごとの金利スワップ・レートが使用されてきた。なお、金利スワップ・レートの水準は、民間金融機関の信用リスク部分を含んでいるため、国債レートの水準とは異なっている。
イールド・カーブの形状を決定する際に重要な要素は、マーケットの金利に関する期待である。そうすると、長期金利の水準はその期間の短期金利の平均となる。そのため、イールド・カーブがフラットであるということは、短期金利が今後も先行き上昇しないとマーケットが読んでいることを意味する。
金融緩和のもと、今後、国債価格が下落すると予想される。長期の国債金利から上昇すると考えられる。その実質的な意味合いは、長期金利が先行きインフレ期待を織り込むためである。そのため、国債のイールド・カーブは、右上がりの形状となる。
国債とその他の債券のイールド・カーブについて、その他の債券のイールド・カーブは、国債のそれより上方に位置する。これは、国債はデフォルトリスクがないのに対して、他の債券はデフォルトリスクを含むためである。同じ年限でも、金利が高くなる。
(資金運用とマーケット)
アメリカ国内の景気回復につれてインフレ懸念が生じ、その結果、長期金利からしだいに上昇する。金利に関するフィッシャー方程式。その後、金利の上昇はドル高となり、そして、アメリカと日本の金利差の拡大は、先行き円を増加させることになると考えられる。
これは、経常収支の黒字とその累積額を考慮すべきである。累積経常収支黒字の金額が拡大すれば円高を招くこととなる。また、わが国の景気回復につれて、インフレの芽が生じてきた際には、現在の金融緩和の状況が継続しているとすれば物価上昇率は相対的に大きくなると考えられることから、マネタリーアプローチにもとづく円安をまねくこととなる。
円高を阻止するための為替介入は、ドル買い円売りで円が流出するので、資本収支の赤字の減少あるいは黒字化を生むと同時に外貨準備高を増加させる。我が国は、継続的に経常収支が黒字のため、資本収支が流入する状態を長く継続することはできないので、世界的な資金循環を考慮すれば、こうしたわが国の継続的介入は維持可能ではない。為替レートの水準は、関係国のマクロ経済構造を反映して決定されている部分がある。
不胎化介入とは、為替介入により生じたマネーサプライの増減が金融市場に与える影響を遮断するため、オペレーションを通じて介入と反対の資金の流れを作って、影響を遮断する方法である。非不胎化介入とは、為替介入により生じたマネーサプライの増減をそのまま放置する介入であり、介入効果は大きい。
通常、わが国の為替介入は円高阻止の介入であり、その資金はFBを発行して調達することとなる。FBの発行残高は増加し、需給が緩んで金利は上昇する。そのまま短期金融市場金利にも波及する。
(金融政策とFFレート水準)
かつてアメリカにおいてFFレートを一定水準に保つことを目標にした金融政策を実施していたことから、1970年代にインフレが進んだ。そのため、連邦準備委員会は、1979年に金融政策の目標を準備預金の供給を抑える方法に変更した。その結果、インフレは抑制できたものの景気の減速を招いた。
FFレートを一定水準に保つこととインフレの関係について、景気が良くなるとFFレートは上昇するのに、FFレートの上昇を抑えるために金融を緩和すると、マネーサプライが増加してインフレを招くこととなる。金融政策の目標を準備預金の供給を抑える方法に変更したら、FFレートの変動を許容し、マネーサプライの量を抑えることであるから、市場の資金が逼迫し、金利が上昇し、景気の減速を招いた。
金融政策の目標の変更は、金利の上昇により、国外からの資金が流入し、ドル高をもたらした。これにより、輸出が減少し、景気に悪影響を与えた。これにより、ドルペッグを採用する途上国は、ドルペッグを維持するために、自国通貨買いの為替介入が必要となり、ドルが減少した。さらに、債務はドル建てのため、債務返済負担が大きくなった。また、アメリカの高金利により資金が流出した。
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