TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

第306号 証券アナリスト 経済理論

(財政赤字と債務残高)

今後の財政赤字の維持可能性について、国債残高の名目GDP比が将来において増加し続けて発散しないようにチェックが必要である。借金の伸び率名目GDP比の伸び率よりも低くなければならない。

名目利子率名目GDP成長率が等しくするには、プライマリー・バランスゼロないし黒字化しなければならない。

 

 

国債残高の累積は、財政規律の低下を連想させることによって、将来のインフレ懸念を発生させ、これを織り込むことにより長期金利が上昇する。これは、そこまでの金融緩和のもとにマネーが大量に市場に供給されていることから、長期金利の上昇は急激なものとなる。

 

 

日銀はコールレートの操作により、金利水準が市場を通じて長期金利に波及する。したがって、長期金利がインフレを織り込んで上昇した場合、日銀はこれを直接コントロールすることはできない。

 

 

債務残高のGDP比が発散しないための条件は、プライマリー・バランスを均衡させること名目利子率が名目経済成長率以下の水準であることの2つの要件を満たす必要がある。

 

 

政府の債務は最終的に中央銀行によってファイナンスされることから、財政赤字の累積に伴い、金融は限りなく緩和されており、マネー要因としてインフレが発生する。その結果、財政破綻に至る前にインフレによる実質債務残高の目減りが発生する。

 

マクロ・バランス式を用いると、財政収支が大きな赤字であるということは、貿易・サービス収支が黒字であることから、民間の貯蓄投資差額が貿易・サービス収支の黒字を超えて多額であることがわかる。つまり、わが国の財政赤字が大きいのは民間消費及び民間投資が小さいためである。

つまり、民間活動が振るわないので、公共支出が高水準で維持される必要があるということである。

 

 

財政赤字を削減させるためには、民間の消費と投資を拡大するような政策が必要である。具体的には、将来不安を取り除いて消費を拡大することのほか、金利を低く維持し、期待成長率を高めるなどして、企業が設備投資を増やしやすい環境を整備することである。

 

 

 

(財政赤字の問題)

財政赤字の累積は、

1 雪だるま式に増える国債費を賄うための歳出削減又は増税から世代間の不公平を生む活力ある経済・社会の実現に大きな足かせ

2 高金利からクラウディングアウトへ、景気の低迷そして活力ある経済・社会の実現に大きな足かせ

3 高金利からクラウディングアウト回避のための資金供給量の増加からインフレから国民生活水準の切り下げそして活力ある経済・社会の実現に大きな足かせ  

4 日本の財政政策に対する国際的信用失墜からくる円の下落から輸出は増大するが輸入インフレから国民生活水準の切り下げそして活力ある経済・社会の実現に大きな足かせ

5 財政の硬直化及び無理な下支えによるわが国経済の構造調整の遅れから失業率の上昇等の社会調整そして活力ある経済・社会の実現に大きな足かせ

  

現在上記ルートのうち高金利が生じていないのは、個人金融資産が大きいので金利は低位で安定している。さらに、日銀の金融緩和により、政策としても金利は一層低く抑えられている。

 

日銀の金融緩和においてもインフレは生じていないのは、金融緩和にもとづいて潤沢に供給された資金は、日銀の当座預金に積み上がっており、経済に循環していないためである。

 

円の下落が生じていないのは、基本的に輸出企業の円買い、つまり実需に支えられている部分が大きい。中国等への企業の海外移転が進み、貿易を通じた実需面における為替取引が減少すれば、為替は弱くなる可能性がある。

 

そのほか、累積経常収支は減少、インフレ率が上昇、貨幣供給が拡大すれば、アメリカの経済状況が良くなり、為替は弱くなる可能性がある。

 

財政政策によって失業率は低く抑えられているように見える。これは、短期的には、公共投資等の政府支出によって失業率は低く抑えられているものの、長期的には産業の構造調整が遅れ、成長性の高い分野に経済的な資源が向かわないために、発展が阻害されている。失業者が十分に吸収されないから、失業率が高止まりしたままとなる。

 

  

(財政赤字と金利水準)

長期金利と財政赤字の関係

ケインズ経済学では、国債発行による財政赤字の増加は国民所得を増加させる。そして、国民所得の増加は取引需要を活発化させ、資金需要が逼迫し、金利が上昇すると考える。

マンデル・フレミングモデルでは、変動為替相場制のもとでは、金利の上昇により国際資本が流入し、金利は国際的に決定される相場水準から乖離しないと考える。実際には、各国間で金利差が生じている。

 

マンデル・フレミングモデルが成り立つとした場合、現在のわが国の金利水準は日銀の金融緩和策を受けて低い水準にあることから、資本が国外に流出し、為替レートは円安となる。その結果、純輸出が増加し国際収支上の経常収支黒字は増加する。また、財政赤字が拡大した場合には、将来の増税に備えて貯蓄を増加させるという考えがある。(リカードの中立命題)

 

つまり、財政赤字による資金需要増を外国からの資本流入や家計部門の貯蓄増によって完全に調達することは難しいと考えられるので、財政赤字拡大により、金利は上昇すると考えられる。

 

財政収支が悪化し、国債が増発されて、国債の需給が緩和状態になった場合には、国債価格は低下するので、長期金利は上昇する。さらに、国債の発行残高が増加し続けた場合、国債購入者が、政府への信認を低下させ、返済や利払いが不可能になるリスクが高いと考えると、このリスクを引き受けることに対する、リスクプレミアムを要求する。この結果、財政赤字増加によるリスクが長期金利を上昇させる。

 

しかしながら、わが国は国債残高の増大にかかわらず、金利が上昇しないのは、国債市場における国債の需給が現在のところ緩んでいないので、国債価格は低下していない。また、国債購入者は、国債の増発によって政府の信認が低下し、返済や利払いが不可能になるリスクを認識していない。

 

リカードの中立命題は、公債返済のために増税が、次世代において行われる場合であっても消費者の消費行動が利他的である場合には、増税が同世代で行われる場合と同様に成立する。わが国では、家計部門の個人金融資産が多額にあり、金融機関経由で国債を購入することで政府の資金需要を賄っているため、国債の金利は上昇しない。

 

物価連動債の発行は、政府の財政規律を高めることとなる。これは、政府にはインフレを起こして実質債務の縮減をするというインセンティブが働くが、物価連動債の場合には、インフレを起こせば償還コストの増大を招くこととなる。

 

 

 

(消費の低迷について)

消費が低迷する理由は、所得が伸びないことと、将来の仕事や所得に不安を持っていることである。ケインズの絶対所得仮説は、当期の所得にのみ依存するものとする考えである。上記以外にも、ライフサイクル仮説(恒常所得仮説)がある。これは、将来にわたる所得の流列を見積もり、そこから毎期の恒常的な所得を算出し、それに基づいて消費を決定するとするものである。

 

つまり、将来の所得に対する不安があれば恒常所得が下方に修正され、消費が減少する。そして、ライフサイクル仮説(恒常所得仮説)が成立する条件は、流動性制約が存在しないことである。最近の金融機関の貸出金の減少から流動性制約が高まっており、ライフサイクル仮説(恒常所得仮説)が成立する条件は満たされていない。

 

 

減税について、絶対所得仮説では消費の増加に貢献するものの、ライフサイクル仮説(恒常所得仮説)では、恒常所得が増加しないため、消費は拡大しない。また、アメリカにおける消費関数には、所得以外に資産の価格(株価)を説明変数に含める議論が多い。また、住宅ローンを抱えた世帯については、デフレ傾向が続く中で、住宅ローンの実質額が大きくなっている。

 

財政赤字の拡大による公債残高の拡大は、将来の公債の返済に増税されると考えると、それに備えて貯蓄を増加させ、消費を抑えることとなる。その結果、公債発行による財政支出拡大と消費の減少が相殺され、財政政策の効果が減少する。(リカードの中立命題)

公債発行と増税による公債の償還が、同一世代内で行われる場合は、両者に相違はないが、世代間を超えて行われる場合、利己的動機にもとづく消費行動では、リカードの中立命題は成立しない。

(設備投資とトービンのq並びに資本係数)

企業活動の目的が企業価値の最大化であるとすると、新たな投資の価値は、新たな設備投資による企業価値の増加と設備投資のコストの比較である。

株式市場で企業価値が正当に評価されている場合、企業の資本の再取得価値に対する比率(トービンのq)と設備投資の間に一定の関係がある。

ROE=株主資本利益率=税引き後当期利益/自己資本、そうすると、利益の増加率に伴いエクイティ・ファイナンスによる自己資本の増加があると、ROEは増加しない。

マクロ的にみると、資本収益率は、資本の平均生産性と資本分配率に分解できる。

わが国は、資本係数(資本ストック/算出量)が高く、特に非製造業における伸び率が高い。これは、欧米に比べて非製造業の資本装備率が極めて低いことから積極的に資本蓄積を進めてきたことが背景にある。

資本係数とは、ある生産関数のもとで、1単位当たりの生産物を生産するために必要な資本ストックの量である。

マクロ的には、資本ストックの量/GDPである。

わが国のROEが低い水準にとどまっているのは、マクロの資本係数が高いからである。

そのため、今後ROEの上昇のためには、マクロの資本係数を低下させるため、過剰設備の廃棄・償却をする必要がある。そうすれば、企業にとって新規の設備投資がしやすくなると考えられる。

トービンのqとは、資本1単位当たりの企業の価値をいう。これが1より大きい時投資が行われる。

企業が合理的である限りトービンのqは1を下回らない。1以下に場合は企業の価値が市場で適切に評価されていないことを意味する。

バブル崩壊以前のトービンのqと設備投資との関係は、有意であった。t値からも判断できる。

メインバンクでは格付けが採用され、企業の格付けが低いとその銀行における貸し渋りが生ずる。そうすると、企業にとって設備投資にかかる資金の制約となる。

(デフレの影響)

企業活動に対して

1 過剰債務を抱えた企業にとって、実質債務負担を増加させるので、新規の設備投資を抑制する

2 物価が下落一方で、名目金利や名目賃金が下がらない場合には、実質金利や実質賃金が上昇するため、収益を圧迫し、投資を抑制する。

家計に対して

1 ローン返済家計の消費の減少

2 物価下落が継続するという見通しから、経済の先行きの不透明感を高め、消費の買い控えを生む。

国に対して

デフレは、名目での債務残高の増加以上に実質の債務負担を増加させ、今後の財政再建の道のりを厳しいものとする。

マクロ供給サイドからの良いデフレ

生産性アップ・流通の効率化・原材料費の低下により総供給曲線が右下方にシフトする。物価の下落は推進する。

マクロ需要サイドからの悪いデフレ

需要が弱いことからマクロの総需要曲線は左下方にシフトすることによる物価の下落は、総需要が拡大することによって解決されなければならない。

(景気と経済政策)

マンデル・フレミング・モデルに基づくと、財政の拡大と金融緩和のポリシーミックスによって景気が拡大することが示されるが、この際に景気拡大の要因は、財政支出が拡大することによる。一方で、財政拡大の財源問題に関連して、財政赤字の拡大や国債残高の累積が、家計主体に将来不安をもたらし消費が減少すれば、財政政策の効果は減殺される。その結果、景気の拡大が生じないことになる。

結局は、民間消費が増加しなければならないってことやね。

名目金利がゼロ以下に下がらないが、期待物価上昇率がマイナスになれば実質金利が高くなり、設備投資の阻害要因となる。それによって、投資需要が生じていないことから景気拡大に貢献しない。

結局は、実質金利が高いってことやね。

フィリップス曲線を前提にすると、労働市場の失業率と物価上昇率は負の相関を有することが指摘できる。こうしたことを前提にすると、わが国労働市場で失業率が高いことと、物価水準が低いことは整合的であり、それは景気が悪い(受給ギャップが大きい)ことから生じている。政策的には、景気拡大のために有効需要を創出することが必要である。

わが国の財政赤字が拡大すれば、国債価格が下落して、長期金利は上昇する。国債の元利払に対する不安からリスクプレミアムが上昇するためである。

また、為替レートは財政赤字の持続可能性の懸念に基づいて円安になると予想される。

国の財政に関して、国債の発行収入を除いた歳入から、過去の借金の元利払いを除いた歳出を差し引いた収支であるプライマリーバランスを黒字化するということで、財政運営が健全であるということを意味する。プライマリーバランスが黒字化すれば、国内金利水準は全般的に低くなる。

(経済成長と展望)

2000年代に入って、経済成長率に対して労働投入がマイナスの寄与になっている。これは、労働時間の短縮や構造的な失業率の上昇による潜在的な就業者数の減少といった要因等のか、少子化の影響により、生産年齢人口の伸びが鈍化・減少していることの影響である。

潜在成長率を規定する要因としては、労働投入、資本ストック、全要素生産性の伸びの3つがある。

わが国の潜在的成長率が近年低下してきたのは、新しい環境に対応した経済システムへの転換が遅れたことによって、資本ストックや全要素生産性の伸びが鈍化したことによる部分もあり、そのために、今後、構造改革を通じた経済の活性化により日本経済が持続的な成長経路に乗り、その結果、資本ストック、全要素生産性の伸びが高まれば、潜在成長率は向上する。

人口減少とGDPについて、一国の経済厚生の水準は、GDPそのものではなくて、一人当たりGDPの大きさによって表される。一人当たりGDPの大きさが拡大すれば問題とはならないとする考えがある。

人口減少や少子高齢化による労働投入の減少を止めるための方策としては、女性及び高齢者の就業を促進するか外国人・移民労働者を活用することが考えられる。

高齢化による貯蓄率の低下について、ライフサイクル仮説によると、高齢化により貯蓄の減少よりも貯蓄の取り崩しの増加の結果貯蓄率が低下する。

また、ダイナスティ仮説によると、高齢化が進行しても、子孫に財産を残すという動機のもと、貯蓄は維持されるので貯蓄率は大きく低下しない。

(経済構造変化)

労働人口が減少すると潜在成長率は低下するが、これを上昇させるためには、資本の生産性を上昇させる必要がある。資本の生産性の上昇は技術進歩によって可能となる。

コブダグラス型生産関数Y=AKαL1-αを想定する。α=0.6とし、平均成長率が8%であるとき、技術進歩ΔA/A、資本ストック増加率ΔK/K、労働力増加率ΔL/Lについて、

労働力増加率2%、資本ストック増加率9%とすると、それぞれの寄与率はいくらか。

ΔY/Y=ΔA/A+αΔK/K+(1-α)ΔL/Lなので、

労働力の寄与率:2%×(1-0.6)=0.8%

資本ストックの寄与率:9%×0.6=5.4%

技術進歩の寄与率:8%-0.8%-5.4%=1.8%

貯蓄率の低下は、国内資金を減少させるので、金利の上昇要因となり、金利が上昇することで資本蓄積の速度が低下すると予想される。

労働力人口の減少が、人口減少を上回る場合、供給力の低下が需要の減少を上回る可能性が高い。その結果、需給ギャップにより物価が上昇する。そうすると、物価上昇を抑制するため、日銀は金融引き締め政策を実施する。その結果、LM曲線が左にシフトし、金利が上昇するとともに、GDPは減少する。

(年金制度とマクロ経済)

年金の積立方式とは、青年期に毎年ある額を積み立てて、年金の基金として市場で運用し、将来老年期になってから、運用収益とともに年金基金を老後の生活に使うものである。

賦課方式とは、ある期に青年期の世代が負担する年金の額を、その期の老年期の世代にそのまま回して、老年世代の年金給付に当てる方式である。

積立方式では、ある世代の中で早く死ぬ人と長生きする人との間で助け合いが行われ、年金の収支は世代ごとに行われることになるので、世代間での所得の移転は生じない。

賦課方式は、年金基金の積立は行われずに、世代間での所得の移転が行われる。すなわち、世代間の再配分効果があるか否かが両方式を特徴付ける相違である。

家計の消費行動について、積立方式は、年金支給の原資を積立金の形で有していることから、年金支給に関する確実性を有しているのに比べ、賦課方式は、その期の年金拠出をその期の年金給付に充てるため、少子高齢化が進展する現状では、年金拠出の減少から年金給付の減少をもたらすと予想されれば、各世代とも将来に向けての貯蓄の積み増しをすると考えられ、その結果、家計の消費が減少することとなる。

今後の年金コストの増大により、家計においては、可処分所得の減少をもたらすことから、消費が減少する。企業においては、コスト増が新規の設備投資に抑制的にはたらくことが考えられるほか、年金コストは広い意味での労働コストであることから、リストラの一層の進展と、その結果として失業率の上昇をもたらす。

 

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