TK税務&法務事務所の事務所通信
柏木孝夫税理士・行政書士事務所
事務所通信

第226号 証券アナリスト 国際証券投資

(国際証券投資の基礎理論)

国際証券投資においては、トップダウン方式とボトムアップ方式があるが、どのような場合にどちらの方式が有効か。トップダウン方式とは、国別のアロケーションを決めてから銘柄を選択する方式であり、ボトムアップ方式とは、国に関係なく銘柄選択を行って国別アロケーションはその結果として決まる方式である。

 

 

国際株式市場が分断され統合されていない場合は、それぞれの銘柄はその属する国特有のファクター評価されることになるから、トップダウン方式が適している。

これに対して、各国の市場が統合されている場合は、各国の銘柄は国際的に共通なファクターに従って評価されるから、各国間で銘柄を比較するというボトムアップ方式が有効になる。

 

 

自国バイアスとはなにか。各国の代表的なポートフォリオの運用においては、自国の証券が占める割合が大きい。この現象を自国バイアスという。

 

 

インプライド法とはなにか。配当割引モデル等の株式価値評価モデルを前提として、現在の株価と将来の業績予想等から計算された理論株価が一致する割引率を推計し、そこから無リスク利子率を差し引いて株式リスク・プレミアムを推計する方法をいう。

したがって、リスク・プレミアムが上昇するということは、すなわち割引率が上昇することであるから、株価が引き下げられる要因となる。さらに、各国株式の収益率の相関係数が高まると、対世界市場ポートフォリオの相関係数は高くなり、世界市場ポートフォリオの標準偏差は上昇する。

また、各国株式の世界市場ポートフォリオに対するベータが同程度であれば、各国株式の収益率の標準偏差は縮小している考えることができる。

 

 

 

(米国株ポートフォリオ運用と為替リスクのヘッジ)

金利パリティが成立している場合を前提にすると、先渡レート/スポットレート=(1+円金利)/(1+ドル金利)

つまり、先渡レートの方が小さいと円安になると予想されており、円金利はドル金利よりも小さいこととなる。ドル保有による高い利息と元本の目減りが円保有による低い利息と元本据置に見合うため。ここで、元本に先物ドル売り予約により為替リスクのヘッジをし、将来予測として米国株ポートフォリオの時価が上昇した場合の為替ヘッジ後の円建てリターンはいくらか。

つまり、元本はヘッジしているが、米国株の時価上昇分にはヘッジしていないってこと。元本ドル×スポットレート×(1+ヘッジ後リターン)=元本ドル×スポットレート×(スポットレート-直先スプレッド)+元本増加ドル×将来予測円レート

 

 

仮に、米国株ポートフォリオの中に日本企業と競合する企業が含まれている場合、ドル安となると、ポートフォリオのドル建てリターンが上昇することとなる。つまり、ドルベースのポートフォリオリターンと為替のリターンが逆相関することとなる。そうすると、日本の投資家は、ポートフォリオ価値の為替リスクをヘッジするためにヘッジ比率をどのようにするのか。

結論として、逆相関の場合は、無相関のときに比べて、ポートフォリオ全体のリスクが小さくなるため、ヘッジ比率が小さくなる。

 

 

今、ドル建てリターンと直物レートの変化率の相関をPとすると、ドル建てリターンと直物レートの変化率の回帰係数Bは、共分散/直物レートの変化率の分散となるため、回帰係数B=(相関係数×ドル建てリターンの標準偏差)/直物レートの変化率の標準偏差となる。

そうすると、為替レートの変化によるポートフォリオの価値の変化は、回帰係数に見合うこととなり、相関係数がマイナスの場合には、それだけヘッジされていることとなる。そうすると、相関係数とマイナス1との差の数字に元本の金額を乗じた額だけ先物の売りを立てればポートフォリオを完全ヘッジ(ニュートラル)することができる。

 

 

 

(グローバル株式ポートフォリオと多国籍企業)

多国籍企業の株式の収益率について回帰分析を行った結果、ドメスティック企業と比較して各地域(アジア、米国、欧州)株式インデックスに対する回帰係数どのようなちがいがあるか。

 

ドメスティック企業は、それぞれの地域の回帰係数が1に近くそれ以外はゼロとなる。さらに多国籍企業の場合は、すべての地域の回帰係数が同じになる傾向がある。

また、多国籍企業の場合、回帰分析の結果の切片については、理論的には売上高による多国籍度と他株式市場における感応度は1対1の関係にあることから、ゼロと考えられる。しかしながら、株式市場の予期しない変動や企業業績が世界の景気等の影響を受ける場合には、必ずしも連動しないことや、株式の対グローバル市場感応度がプラスになることがある。

 

 

t値=(実際値―期待値)/標準誤差 この値が両側優位水準5%である-2から+2までの値であるときは、仮説を棄却できない。(普通のこと)

また、回帰直線の傾きが大きい場合は、株価形成が海外での企業業績に連動しており、小さい場合は、自国での活動に依存していることを示している。

多国籍企業がポートフォリオに多く含まれる場合、グローバル株式投資のトップダウン・アプローチには、国別アロケーションの考え方が曖昧になり、カントリー・リスク・エクスポージャーを適切に管理できなくなるという問題点がある。そのため、業種やセクターをリスク・ファクターとして捉えるボトムアップ・アプローチが考えられる。

 

 

 

(国際分散投資と為替理論)

外国通貨ベースのリターンを先物の為替予約によるリターンと円ベースでの期待収益率及び標準偏差の関係は、円ベースでの期待収益率=外国通貨ベースのリターン+為替予約によるリターン

ここで、為替予約によるリターン=円ベース短期金利-外国通貨ベース短期金利であるから、円ベースでの期待収益率=円ベース短期金利+(外国通貨ベースのリターン-外国通貨ベース短期金利)となる。

 

 

標準偏差は、結局、円ベースでの標準偏差と外国通貨ベースの標準偏差は同じになる。分散投資を行ってポートフォリオに組み入れられる証券の数を増加させていくと、各証券固有のリスク(ローカル要因)は次第に消滅し、最終的には銘柄間の共分散のみが残ることとなる。これがグルーバル要因である。

ローカル要因=固有の分散/全体の分散

グローバル要因=1-ローカル要因

 

 

ソブリン・リスクとは、とくに外国政府や政府系機関がかかえる対外債務に対する元利金の支払いの不履行(デフォルト)に限定する場合に使われる。格付機関による国の格付(ソブリン格付)がその代表であり、指標としては、デット・サービス・レシオ(デット・サービス/輸出額)債務・GDP比率(経常赤字/GDP)、債務/輸出比率がある。

 

 

為替レート(短期)は、資本移動に伴う需給関係で決まる。デット・サービスの金額が大きくなったり、経常収支の赤字が資本収支を上回るとこの分外貨準備が減少するため、通貨が弱くなる。

為替レート(長期)は、購買力平価に従うとされる。インフレ率が高いと通貨は弱くなる。

購買力平価とは、物価で測った貨幣の価値であり、物価が上昇すると貨幣の購買力は低下し、物価が下がると貨幣の購買力は上昇することを示している。

 

 

 

(分散投資の運用評価と為替ヘッジ)

国際分散投資の評価

資産運用会社の為替リターンがインデックスよりも悪い場合は、明らかに為替管理が不得手であると考えられる。逆に現地通貨ベースの収益率がインデックスよりも上回っていると外国証券投資が得意であると考えられる。

 

 

ここで、外国証券投資が得意で為替管理が不得手の資産運用会社と逆に外国証券投資が不得手で、為替管理が得意な資産運用会社があれば、これを組み合わせて、外国証券投資が得意な資産運用会社には国別の証券運用を任せ、為替管理が得意な資産運用会社には通貨リスクを管理させる。これによって、両者の強みを生かし弱点がカバーできる。

 

 

また、外国証券投資が得意な資産運用会社には、カバーなしでインデックスファンドを運用させ、為替管理が得意な資産運用会社には為替のみ管理させる。この運用で外国証券投資が得意な資産運用会社の国別銘柄選択能力を活かしながら、為替管理が得意な資産運用会社の弱点をカバーできる。

 

 

 

米国株に投資する場合、米国のマーケット・リスクと為替リスクをヘッジするための戦略はなにか。

 

マーケット・リスクをヘッジするには、先物の売却またはプット・オプションを買えばよい。また、為替リスクをヘッジするには、ドルを売り先物予約、通貨先物の売り、またはドル・プット・オプションを買えばよい。

しかしながら、

1 取引期間に合致したオプションがあるとは限らない。

2 オプションのデルタは変化するため、完全にはヘッジできない。

3 オプション取引には、オプション・プレミアムがコストとして発生する。

4 先物の取引単位がヘッジ必要額と一致しない。

5 現物資産の価格変動にヘッジが機動的に対応できない。

6 先物価格のミスプライスによって、ヘッジが有効に働かない場合がある。

 

 

 

(マクロ経済と国際証券投資)

為替オープンの金利パリティが成立している場合、為替の変化率と金利差は近似されていく。パリティ関係とは、購買力平価であり、2つの国のインフレ率に格差が生じた場合、両国通貨での購買力に格差が生じないように為替レートが調整されるという考え方です。

 

通貨アノマリーが生じている場合には、為替の直先スプレッドは金利パリティが示唆するところより縮小すると考えられる。すなわち、高金利通貨は過小評価されることから、米ドル(高金利通貨)を先渡で買い、満期時にスポットでドル売り・円買いを行えば利益を上げることができる。

 

 

 

今、FRBが財務省証券の買いオペを行うと予想しているとき、金利水準及びイールドカーブはどのように変化すると考えられるか。

 

買いオペにより、長期金利が低下する結果、イールドカーブはフラット化する。さらに、買いオペが景気に与える影響が有効であるとすると、長期的には景気が上昇してすべての金利が上昇すると予測し、金利上昇前に長期金利の調達が増加し、さらに流動性プレミアムの分だけ長期金利が上昇し、イールドカーブがスティープニング化(傾きが急になる)する。

 

 

金利などの経済変数が為替レートに与える影響を調べるために回帰式を使って推定した。米ドルの円建て為替レートの数字が上昇するということは、円安になっているということなので、日本の物価と米国の物価の差がプラスなら円安になることだから、日米の物価指数の差における係数の符号はプラスになる。また、日本の金利と米国の金利の差がプラスなら円高になることだから、日本の実質金利と米国の実質金利の差における係数の符号はマイナスとなる。

 

 

FRBが財務省証券の買いオペを行うと、為替の当面の変化として、米国の金融緩和により金利が低下するため、為替レートはドル安・円高になるものの、その後の変化として米国の景気回復により金利が上昇するため(短期的な効果)、為替レートはドル高・円安に向かう。したがって、この対応としては、当面の変化として長期金利の低下が予想されるため、長期債投資を増加させ、円高が予想されるため、これをヘッジするために為替先物予約を行うこととする。または、米国長期債の先物を買うこととする。

 

 

なお、ドルを調達して米国長期債を購入し、投資予定資金を円のリスク・フリーレートで運用することは、ヘッジ付米国債券投資と同じものである。

しかしながら、長期的な投資としては、景気拡大に伴い長期金利が上昇すると予想されるため、長期債のポジションを減らし、円安予想から為替をオープンにする必要がある。

 

 

 

 

(国際証券投資とアセット・アロケーション)

確定拠出年金プランのファンドのポートフォリオの中に外国株を組み入れることに対して、外国株は投資には、株価変動リスクに加えて為替変動リスクがあるため、為替レートの変化による通貨リターンの期待収益率はゼロとなり、リスクだけが加わることになるという意見がある。これについて為替変動要因が加わることにより、かえって分散投資の効果を高める場合もあるという意見もあるので検証してみる。

外国株の期待収益率Rsを9%、リスクをσsを20%、

為替レートの収益率rxを0%、リスクをσxを10%、

 

 

円ベースで為替ヘッジなし外国株投資のリスクをσuがσsの20%を下回るのは、ドルベースでの外国株の収益率と為替レートの収益率との相関係数ρがいくらのときか。

 

σu=√σs2+σx2+2ρ・σs・σx<σsのときであるから、数字を代入すると、

ρ=▲0.25となり、この場合に、円ベース為替ヘッジなしの外国株投資のリスクがドル・ベースのリスクよりも低くなる。つまり、少し逆相関の関係である。

 

 

次に、為替レートを予測するのはプロでも至難の業なのに、ましてや、素人の従業員に為替取引のタイミング判断を求めるのは無理であるという意見がある。

 

これに対して、確定拠出年金では毎月の掛け金で投資していくため、長期的にはドルコスト平均法により為替変動のタイミング・リスクは分散されること。また、為替変動リスクによって分散投資の効果が高まる可能性がある。

 

 

さらに、経済のグローバル化により、先進国の株式市場の期待収益率はある一定水準に収束すると想定されるので、外国株を組み入れる積極的な意義がないという意見がある。

これに対しては、仮に期待収益率がほぼ同じ水準であったとしても、各国市場の間では景気循環の違いなどにより、相関係数が1より低いので、自国市場のみに投資するよりも、外国株を組み入れて分散投資を行う方がリスクを低減できる。また、税制の違いなど、各国の資本制度の違いによって、国際金融市場は分断されている。

 

 

 

高金利通貨で運用しても低金利通貨で運用しても、自国通貨ベースでの期待収益率は等しくなるという考えはなぜか。

 

これは、ヘッジなし金利パリティの考え方である。各国の短期金利がリスクフリーならば、自国通貨で運用しても、他国通貨で運用しても、自国通貨建てで計算すれば、結局は、期待収益率が同じとなるように為替スポットレート及び両国の短期金利が決まっているはずであるとする考え方である。

しかしながら、このようなことにならない現象が観察されることがある。これは、高金利通貨での運用が、自国通貨建てでみても高い収益が上がるという傾向がある。これをフォワード・ディスカウント・バイアスという。

 

このような時には、フォワード・レートがプレミアム状態となっている通貨(低金利国の通貨)フォワードで売り、フォワード・レートがディスカウントになっている通貨(高金利国の通貨)フォワードで買うことによって、フォワードのミスプライシングを利用した収益が得られる。つまり、低金利国の通貨に対してはヘッジ比率を大きくし、高金利国の通貨に対してはヘッジ比率を少なくすることで、通貨変動から超過リターンを得られることになる。

 

また、通貨の期待収益率にはなんらかのリスクプレミアムが含まれており、高金利通貨は低金利通貨よりもリスクプレミアムが大きい。たとえば、高金利通貨国は高インフレ国であることが多いが、インフレ率の高さはインフレそのものの不確実性を伴いやすい。こうした場合、高金利通貨の実現収益率は低金利通貨のそれに比べて大きくなる。

 

 

 

アセット・アロケーションの決定に際して、確定給付型年金と確定拠出型年金との間における違いはなにか。そうすると、確定拠出型年金ではどのようなアセット・アロケーションが望ましいか。

 

確定給付型では年金負債を考慮した基金のリスク許容度をもとに1つの政策的アロケーションが決定される。これに対して確定拠出型ではそれぞれの加入者の退職時までの年減が異なり、またリスク許容度も違うため、アセット・アロケーションは個人ごとに異なってくる。一般的には、若年者層は年限が長くリスク許容度が高いため、株式や外国証券を多く組み入れることができ、将来のインフレに対する実質購買力維持の観点からも望ましい。しかし高齢者層になるに従い、退職時の資産価値変動を少なくするため、安全資産の比率を高めていくことが望ましい。

 

 

主要諸国の年金資金が株式の国際分散投資を行う際に、インデックス型(パッシブ型)の運用スタイルを採用する傾向がある。その背景となる要因はなにか。また、ベンチマークとしてMSCI指数が採用される要因はなにか。

インデックス型が採用される要因

1 運用コストの削減

2 資金配分の容易性

3 顧客に対する説明責任制

4 市場平均リターンと運用パフォーマンスの乖離が少ない

ことがあげられる。また、ベンチマークとしてMSCI指数が採用される要因として、

1 インデックスの歴史のふるさと信頼性

2 市場・セクター・銘柄などカバレッジの広さ

3 市場実態を反映したタイムリーな見直し作業

があげられる。

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